物流業界は、業務が忙しいにもかかわらず営業利益率が2%未満の企業と、荷主と直接取引し、営業利益率5%以上を維持している企業の2つに二極化している。そのような中、当研究会ではステークホルダーから“選ばれ続ける”物流会社になるためのヒントを紹介している。
部長 南雲 秀明 氏
はじめに
2022年に株式会社日立物流として「DX銘柄2022」(経済産業省・東京証券取引所・情報処理推進機構)にも選定されたロジスティードは、国内外の3PL事業などを手掛ける、売上高7436億円、社員数2万人超(共に2022年3月期)の総合物流企業だ。近年は倉庫・輸送領域のDXに力を入れ、バース予約管理システム、WMS(倉庫管理システム)を自社グループで開発・運用している。
また、グループ内だけでなく社外の協創パートナーも含めたクロスファンクションで脱炭素に注力しており、取り組みの1つとして物流センターに太陽光パネルを設置。年間56トンのCO2(二酸化炭素)の排出削減を見込むなど、創エネによるカーボンニュートラルを推進中である。
さらに、リチウムイオンバッテリー搭載のフォークリフト導入による庫内フォーク作業の省エネ化、人感センサーを活用した照明の自動ON/OFFによる倉庫内節電の取り組みなども進めている。
まなびのポイント1:輸送事業をアップデートするプラットフォーム「SSCV」を開発
同社の国内輸送事業は約300万運行/年あり、うち90%を1400社の協力会社とともに行っている。「2024年問題を解決するためには、ロジスティードだけでDXを進めても意味がない」との課題意識から、同社は協力会社も使えるプラットフォームとして、安全・体調管理・運行管理・技能指導・効率化を実現するトータルソリューション「SSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)」を開発。
特に安全については、ドライバーの健康と安全を同時に見守り、事故を未然に防ぐことを目的としており、高揚感や使命感などで疲労感がマスキングされてしまう状態によって生じる、「実際の“疲労”」と「人が感じる“疲労感”」のズレ→「疲労からくる体調の変化=漫然状態」の回避を目指している。また、「ヒヤリハット」と「疲労状態」の情報を可視化して事故が起こりやすい状況になると警告するほか、交通法令違反などを自動で録画・切り出しする仕組みもあり、ドライバーの安全運転を定量評価することにも活用している。
「SSCV-Safety」では、事故リスクを事前に予測し、ドライバーに警告できる
出所:ロジスティード講演資料
まなびのポイント2:顧客のニーズに応える「+α」の物流体制
「『精密機械(PC・サーバーなど)の運搬・保管』という顧客の要望に応えるには、単に物流機能を担うだけで良いのだろうか?」「ニーズに100%応えられているのだろうか?」という疑問から、同社の「物流+α(アルファ)」のサービスは始まった。
グループ会社のロジスティード南関東では、PCやサーバーのセットアップ、修理、回収サービスのほか、キッティング(ソフトやアプリのインストール、システム設定など)や、現地でのセットアップ、動作確認といったエンジニア作業も行っている。包括的にアウトソーシングできる機能・サービスを持っているからこそ、顧客の事業拡大に寄与し、長年にわたる信頼を築くことができている。
まなびのポイント3:ノウハウを生かした物流管理
資材管理だけでも膨大な業務量となり、搬出などに課題を抱えている企業は多い。そこで同社は、顧客の事業効率化に向け、資材や製品の在庫管理を請け負っている。最新のデジタルツールを活用し、受発注や在庫状況などを可視化することで、高効率・高生産性の物流管理施設を実現しているのだ。顧客の経営課題を解決する支援事業として、物流業としての長年のノウハウを生かした管理体制を敷いている。
また、同社は物流の現場で培ったWMSのノウハウをパッケージ化し、外販。多くの荷主企業や物流の現場に導入され、そのデータがさらなるシステム改良に生かされている。
信頼を運ぶロジスティードのトラック