戦略人事研究会では、「事業と連動した戦略人事を実践する」という企業側の視点と、「社員の活躍を最大化させる」という社員側の視点から、現代に不可欠な戦略人事と組織パフォーマンスを追求していく。
第1回は「組織パフォーマンスの最大化を実現させる人事施策」について、先駆的な取り組みをしている2社に講演いただいた。
開催日時:2022年11月24日(大阪開催)
人事総務部 人財開発グループ
シニアマネージャー 石原 健一朗 氏
はじめに
同社では、社員がダイナミックに働き、グループビジョンを実現する喜びを感じられる環境づくりに向けて「人事基本理念」を策定。自社の価値判断基準を明確にした上で、社員一人一人がそれぞれの個性や能力を最大限に発揮し、飽くなきチャンレンジを続けられるよう、さまざまな取組みを進めている。
講師の石原氏は前職から一貫して、人材開発、組織開発に従事してきた。2015年にダイドードリンコへ入社してからは、次世代リーダーの育成選抜プログラムを主軸に据えた教育体系の構築に従事し、人事企画、採用、人財開発、組織開発、制度構築、タレントマネジメントまで幅広く携わりながら、人事戦略の策定から実践までを手掛けている。本日の講演では、人的資本経営の文脈に沿いながら、同社の考え方と取り組みをご紹介いただいた。
まなびのポイント 1:経営戦略と人材戦略との連動
グループミッション2030「世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループ」に基づき、「国内飲料事業におけるイノベーション」をはじめとした経営戦略を策定。経営戦略を実現するための組織・人材戦略を構築し、組織・人材戦略に基づく施策を展開していく。また、企業規模が大きくなるほど、採用・配置・評価・育成・定着と担当部署が個別に施策を考えてしまいがちであるが、それらをバラバラに検討するのではなく、人材戦略として各施策を有機的に連動させていく必要がある。
ISO30414に沿った人的資本の開示に意識が置かれがちだが、自社の目指すべき姿(ビジョン)や、そこに至るまでのストーリー作りとして施策を検討することが重要である。
ダイドードリンコでは2016年に「人事基本理念」を策定、従業員がダイナミックに働き、ビジョンを実現する喜びを感じられるような環境づくりに努めている。
まなびのポイント 2:イノベーションの考え方/取組み事例
イノベーターに必要な要素は、次の3つ。「素直(従順とは異なる)」「真面目(本質や目的に対して真面目)」「誠実(言行一致、「真面目」とは異なる)」と定義し、イノベーションの担い手となる人物の基準を策定した上で、採用・育成・定着を図っていく。
また、イノベーションの創出を図るための施策の1つとして、副業制度を導入。社外人脈や多様な知見を蓄積することを狙いに、副業やボランティア活動として会社の外に出て行ってもらう。ただし、こうした「遠心力」を促すだけでは社員の離職にもつながってしまうため、エンゲージメントの向上など、組織としての「求心力」も同時に高めていく必要がある。
「遠心力」を促し、「求心力」を高めることで、イノベーションの創出
(課題解決)を図っていく
まなびのポイント 3:チャレンジする風土づくり ~施策の連関・一貫性~
ビジョンや目標において、多くの企業が「チャレンジ」という言葉を用いている昨今、他社との差別化として、自社のチャレンジ内容を言語化し、ダイドードリンコ“らしさ”を社内外に打ち出す。
また、チャレンジという文脈において、欲しい人材の定義を作成(例:リスクに対する志向性・コミュニケーション・粘り強さなど)。採用と育成を連関させている。面接では、人材定義の中でも個人の資質として変わりにくく、かつ育成困難な要素を確認するようにしている。次に育成施策として、次世代リーダー研修(DyDo Innovation Academy)を設置。成長戦略へチャレンジし、リーダーシップを発揮できる人材を増やしていく。
採用戦略と育成戦略と定着戦略の連動。各施策をバラバラに検討するのではなく、各領域が重なり合う部分を意識することで、人材戦略としての一貫性を持たせる