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研究リポート
ビジネスモデルイノベーション研究会
秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート 2023.03.24

縮小するこどもマーケットで成長発展するオンリーワンブランディング戦略:株式会社ジャクエツ

【第6回の趣旨】
ビジネモデルイノベーション研究会では、両利きの経営における「知の探索」をテーマにさまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察・訪問する。経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、イノベーションが息づくビジネスの現場に触れる機会を提供している。
第6回は、福井県において、100年以上の歴史を有する老舗企業でありながら、常にビジネスモデルを進化させることによって、成長発展し続けている2社の企業の講義と視察からイノベーションとチャレンジの秘訣を学んだ。
開催日時:2022年12月21日、22日(福井開催)

 

株式会社 ジャクエツ
代表取締役CEO 徳本 達郎 氏

 

はじめに

少子化で縮小するマーケット環境において、成長発展を続ける業界のリーディングカンパニーであるジャクエツ。「未来は、あそびの中に。」というスローガンのもと、常に高い価値を提供し、色紙一枚の製造から商業空間のプロデュースまで「あそび環境」に関わる全てをワンストップで手掛ける。保育の視点でのコンサルティングや企画開発、「あそび」を軸にした社会の課題解決を実現。未来価値経営を目指して価格・品質だけでなく価値にこだわり、教育施設から商業空間まで「可能性を広げるあそび」という新たな価値を提供し続ける同社の、オンリーワンブランディングを実現するビジネスモデル変革をひも解く。

 


 

まなびのポイント 1:創業100年、最良な“あそび環境”を追及し続けるビジネスモデルの変革と挑戦

 

1916年に幼稚園の運営から始まったジャクエツは幼稚園で使用する教材を自社で作ったことをきっかけに成長してきた。高品質で安全安心な商品を求められた時代には商品群を増やし、オリジナル商品を限定したターゲット顧客に展開。その後、バリューチェーンの統合により企画開発からアフターメンテナンスまでワンストップで提供し収益性を高めていく。現在はターゲット市場のドメインを「こども」から「あそび」へとシフトすることで、高付加価値経営へと進化している。「変化こそ唯一の永遠なり」「変わりながら変わらない価値をつくっていく」という考えに基づき、ビジネスモデルを変化させ続けているのである。


ジャクエツが考える「あそびによる未来価値創造ループ」
「あそびの研究」と「あそびの環境づくり」を追及している

まなびのポイント 2:教育×デザインのオープンイノベーションでオンリーワン製品をブランディング

 

「あそび」とは、単に友達とゲームで遊んだり会話したりといった行為ではなく、自由な発想で何かを創造したいという人間の根源的な本能を充足させる行為だとジャクエツは定義している。こどもたちに「あそび」を体験してもらいたい、そのために一流の創造力を持ったクリエイターやデザイナー、建築家、研究者と共創コミュニティー「PLAY DESIGN LAB」を立ち上げ、多様な分野の専門家とともにこどもの遊びの研究・開発を行っている。同社の提供する体験価値は、時を越えて世代から世代へ受け継がれるだろう。

 

そこに、ブランド力の強さがある。


「PLAY DESIGN LAB」から生まれた「MEBIUS」。表側がいつの間にか裏側になるという不思議な形状は子どもたちの想像力を掻き立てる

まなびのポイント 3:企画開発から生産、アフターメンテナンスまで一気通貫をかなえる敷地10,000坪の自社生産工場

 

2019年に完成した延床面積16,000㎡の新工場棟では、大型遊具の溶接・塗装から「じゆうが帳」の裁断や製本まで、大小さまざまな製品が生産されている。新たなあそびが生み出される刺激的な空間にするため、同社のものづくりを世界に発信するプラットフォーム「INUHARIKO LAB」の外壁には、コンセプチュアル・アーティストのローレンス・ウィナー氏による『あそびをコンセプトにしたオリジナルアート』が描かれているほか、同社の新しいロゴを手掛けたグラフィックデザイナー佐藤卓氏によるサインデザインがあしらわれている。


「INUHARIKO LAB」と自社工場は、熟練した技術と先進的な機能を結集したプラットフォーム