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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2023.03.16

ユートピアファーム宮古島のビジネスモデル~農業を通じ、お客様と感動を共有する~:農業生産法人 有限会社大嶺ファーム

【第3回の趣旨】
アグリサポート研究会(第7期)は、「アグリ業界の持続的成長と課題解決へ向けた生きた事例を学ぶ」がコンセプトである。当研究会では、アグリ関連分野の成長企業を経営の視点から研究し、成功のポイントを学ぶ。

 

第3回は、農業環境が非常に厳しい沖縄・宮古島の2社に講演いただき、視察も行った。宮古島の農業環境が厳しい要因の1つ目は「土壌」。石灰岩中心で土層が浅く、干害を受けやすい。2つ目は「水」。土壌の透水性が高く用水が安定しない。

 

この環境下で、「観光農園ユートピアファーム宮古島」として観光に可能性を見いだす大嶺ファームと、体験型農業で価値創造を行うオルタナティブファーム宮古の2社から、独自のビジネスモデルと成長のポイントについて学んだ。
開催日時:2023年1月26日、27日(沖縄開催)

 

 

有限会社大嶺ファーム
代表取締役 上地 登 氏

 

 

はじめに

 

2000年に設立した大嶺ファームは、2001年に観光農園「ユートピアファーム宮古島」をオープン。マンゴー、パインアップル、ドラゴンフルーツなどのトロピカルフルーツと、ハイビスカスやブーゲンビリアなどの熱帯花木を栽培・直売する人気の観光スポットだ。

 

2011年に6次産業化認定企業となり、2022年11月には代表取締役の上地登氏が、農業・商業・工業の道一筋に精励し模範となる技術を有する人に授与される「黄綬褒章」(農業部門)を受賞した。併設のフルーツパーラーでは、宮古島産フルーツを使用したこだわりスイーツを提供。「農業の持つ限りない可能性へ挑戦し続ける」という思いで、マンゴーソフトクリームや完熟バナナケーキなどの商品のオンライン販売も手掛けている。

 

ユートピアファーム宮古島のマンゴー園

 


 

 

まなびのポイント 1:農業への情熱でビジネスを成長させる

 

上地氏は幼いころ、「農業では飯は食えない」と父親から聞かされてきた。それでも農業への夢を諦めきれずに農林高校・園芸専門学校へ進学。卒業後、1977年に宮古島でスイカ農業を始めた。規模を拡大し、メディアの取材も受けるなど順風満帆で有頂天になっていた。

 

ところが台風でスイカが全滅し、大きな損失を出してしまった。金融機関からお金を借りていたため辞めるに辞められず困っていると、農業に反対していた親や兄弟が応援に駆け付けてくれた。「人は傲慢になってはいけない、謙虚さが大切である」と学んだ上地氏が、あらためて小さな農業から再出発しようと考えていたとき、マンゴーのおいしさに衝撃を受けてマンゴー農園を始めた。マンゴー作りにも苦難があった。phが高く養分吸収が悪い土壌を根気よく改良し、1992年に初めてマンゴーを収穫できた。

 


ユートピアファーム宮古島のフラワー園

 

 

まなびのポイント 2:続けるからこそ本物になる

 

おいしいマンゴーが収穫できたが、当時まだ知名度が低く売れなかった。地元のスーパーマーケットで安く販売してもらっていたところ、おいしいと評価してくれた顧客が直接買いに来た。その時、上地氏は観光客への直販モデルを思い付いた。「農業と観光を融合させたい」との思いで、観光客の認知度を高めるため、慣れないスーツを着て東京や旅行代理店へ営業に行き、2001年に観光農園のオープンにこぎつけた。

 

だが、顧客が増え始めた2003年、電柱が折れるほど強烈な台風に見舞われ、マンゴーハウスが倒壊。倒産を覚悟したが、3人の子どもに励まされて絶対に観光農園を成功させると決意した。何度も困難を乗り越え、続けるからこそ本物になる。本物は続く。

 


ユートピアファーム宮古島を視察

 

 

まなびのポイント 3:自社の強み×○○=新たなビジネスモデルの創造

 

1.マンゴー×ソフトクリーム
上地氏は、自社の「強み」が明確になれば、商品やエリアと掛け算の発想でビジネスを創出していけると考えた。そして取り組んだのが、「マンゴー×ソフトクリーム」だった。常夏のイメージがある観光地で食べてもらいやすいソフトクリームという商品開発によって、自社の強みであるマンゴーのおいしさを伝え、今では看板商品となっている。

 

2.アグリビジネス×観光産業
年間40万人近い観光客が訪れる宮古島でマンゴーや熱帯花木の栽培をしていることを生かし、アグリビジネス×観光産業で新たな需要を創造できないかと考えた上地氏は、マンゴー園やフラワー園の見学ツアーを展開。南国フルーツや熱帯の花々があふれる空間は、結婚式の記念写真の撮影場所としても利用されるなど、「非日常空間」という体験価値を提供している。

 


手作りワッフルコーンに、宮古島産フルーツをトッピングしたソフトクリーム。
1番人気のマンゴー味のほか、バナナ味やパッションフルーツ味も展開