建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を創出し、経営改革・業務革新のヒントを提供する。
第3回は、建設業における「DX推進」「人材育成強化」「研究開発・先端技術の導入展開」について、先駆的な取り組みを行っている南海辰村建設、清弘エンジニアリングの2社に講演いただいた。
開催日時:2023年2月21日、22日(大阪開催)
代表取締役 井畑 忠 氏
はじめに
清弘エンジニアリングは配管・ダクト・空調・電気など、プラント関連設備の設計・製作・施工・メンテナンス及びコンサルティングサービスを行う企業。1970年の設立であり、京都に本社を置く。
「省エネ・環境負荷軽減への取り組みを重視し、水・熱・空気を操る高度な技術力をもって、より良い地球環境を次代に残すこと」を目指し、大手製造メーカーの設備工事に特化した、総合エンジニアリング企業の元請として事業を展開する。
着実に業容を拡大し、直近期は売上高45億円を計上。また、中国での新会社設立・人材会社設立・M&A実施により、グループ企業数9社・グループ連結売上75億円を達成。現在も成長を続けており、今後はホールディングス会社の設立も決定している。
まなびのポイント1:特化型戦略による高収益モデルを確立
同社は大手製造メーカーの設備工事に特化しながら、化学・食品・半導体・自動車などできるだけ多業種との取引をすることで、景気の波に影響を受けにくい状況を作り出している。
また、サブコンの下請はせず、小型・中型設備工事を元請として直接取引することで、スピードと誠意のある対応を実現して顧客満足度を高めている。その実績を提案型で水平展開することで、「粗利率30%以上・営業利益率10%以上」を20年間継続している。
体制としては立上げ時から少数精鋭型をベースにしながら、会社としては複数の専門部会(安全・品質・積算原価・テクニカル・予算管理・人材開発・事務方戦略)を設立し、技術承継・ノウハウ承継をしながら、ボトムアップ式で全員参加ができる仕組みを作っている。
まなびのポイント2:「攻めのM&A戦略」で成長
同社ではM&Aを「最も責任のある社長の仕事」と捉え、2012年から取り組みを開始。2015年に初めて締結した。勉強会などの参加、社長直系のM&A専任チームの設立、税理士・弁護士・社労士・司法書士などの専門家との連携などを実施しながら、現在までに7社のM&Aを実施している。
単純な規模拡大を目的にはせず、自社とのシナジー効果を生み出せるかに重点を置いてデューデリジェンスし、優良企業に選んでもらえることをポイントにしている。
またM&A後には、旧経営陣や社員との関係性を作るための社長自身による毎月訪問や、自社内育成人材またはヘッドハンティング人材の自社からの送り出し、2~3年の時間を掛けた社風・経営方針・経営理念のベクトル合わせなど、その会社をより良くしていくことに力を注いでいる。
まなびのポイント3:成長のための人材戦略
人件費や教育費などをコストではなく投資と捉える「人的資本経営」を実践し、社員満足度最高企業を目指している。2015年にはグループ内に優秀な人材を採用することを目的として会社を設立し、現在はそのノウハウを生かした人材紹介・人材派遣をすることで約10億円の収益事業に成長している。
またミニ経営者育成の社長塾も開催しており、社長自らが教育に関わることで、行動力・変化順応・向上心・思考力・人間力・数字に強い人材を継続的に育成している。
「社員は会社の財産・エンジンであり、会社の未来を決める鍵」という考えのもとに、人材投資を継続している。