物流業界は、業務が忙しいにもかかわらず営業利益率が2%未満の企業と、荷主と直接取引し、営業利益率5%以上を維持している企業の2つに二極化している。
そのような中、当研究会ではステークホルダーから“選ばれ続ける”物流会社になるためのヒントを紹介している。第2回では、福井県に本社を構える北陸トラック運送に訪問し、現場を視察後、講演を伺った。
開催日時:2022年12月08日、09日(東京開催)
水島 正芳 氏
はじめに
福井県に本社を構える北陸トラック運送は、長距離輸送(北陸発着)、店舗配送(コメリ・ゲンキー・GU・ユニクロ)などの倉庫保管、仕分け作業、ダンプでの土砂運搬から工場での製品加工まで幅広く事業を展開。2022年9月期には売上高73億円を誇る福井県No.1の物流会社である。
同社は、「できる できる 必ずできる」を信条とし、「お客様の商品がよりたくさん売れるためのお手伝いをする」ことを顧客価値として経営活動を行っている。
今回は、安全や環境に配慮した物流業界の実現と、積極的に社会貢献を行い地域から愛される企業になるための、①職場環境・離職率の改善、②グループ会社の取り組み、③「2024年問題」解決に向けた荷主との対話、この3つの施策について水島氏に伺った。
まなびのポイント 1:職場環境の整備で社員定着を目指す
水島氏は、良い会社を「3年定着率70%以上、利益率3%以上」と位置付け、社員の定着率向上を目指してさまざまな施策に取り組んでいる。
採用面接では、面接担当者を変えながら複数回実施することで、応募者のパーソナリティを把握。毎年新卒採用5名、50歳以上の社員の積極採用も促進し、全体で80名の採用に成功している。
入社後は新人研修カリキュラムの充実や、一人ひとりに教育担当者を配置して、仕事を確実に習得する仕組みを構築した。また、退職時にはアンケートを取り、直接社員の声を聴くことで現場の環境改善につなげている。
福井物流センターの様子。生協の商品仕分けセンターとして、社員、アルバイト、パート含め、1日平均50名が庫内作業員として働いている。生産性を高めるために自動化を推進し、「社員の働きやすい職場」を整備している
まなびのポイント 2:福井物流センターの自動化戦略
同社は、2018年に倉庫内自動化を推進するための物流拠点である福井物流センターを新設。福井物流センターは、個人向け配送である日曜雑貨商品の入荷、仕分け出荷作業、北陸3県(石川・富山・福井)・滋賀・京都エリアへの配送を担う物流センターである。
現在では3000SKU(ストックキーピングユニット:単品管理)を取り扱い、出荷頻度に応じてA・B・Cとランク分けを行う。ランクごとに自動化や作業員の配置・仕組み化を行うことで生産性を高めている。
福井物流センターの現場の様子
福井物流センターの現場の様子。梱包エリア(左)、ピッキング(右)
まなびのポイント 3:「2024年問題」解決に向けた荷主との対話
同社は「お客様の商品がよりたくさん売れるためのお手伝いをする」ことを顧客価値とし、「2024年問題※」に対して積極的に荷主と対話を行っている。
顧客と月1回の情報交換を行いコミュニケーションを円滑化。また、トラックの荷待ち待機問題・手摘み手卸しの解消から、共同配送による輸送コスト削減まで、サプライチェーン全体の最適化に向けて荷主とともに取り組んでいる。提案内容は、「コストが上がらないようにロジスティクスをいかに構築するか」を軸に検討している。
※ 働き方改革関連法により2024年4月1日から物流業界に生じる問題
北陸トラック運送が所有するトラック