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研究リポート
SDGs・ESG経営研究会
2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート 2023.01.23

ゼロボードと考える脱炭素経営:株式会社ゼロボード

【第2回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては「サステナブル」というキーワードが非常に重要になる。当研究会は、「社会と企業のサステナビリティを実現し未来を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。第2回では、株式会社大川印刷に訪問・視察し、株式会社ゼロボードより脱炭素経営に関する講義を受け、SDGsへの取り組み方を学んだ。
開催日時:2022年12月6日、7日(東京開催)

 

 

株式会社ゼロボード
ビジネス本部長 坂本 洋一 氏

 

はじめに

2021年8月設立のゼロボードは、社会がゼロエミッション(CO2排出ゼロ)を達成するためのダッシュボードとなるべく、ソリューションを展開している。同社のGHG(温室効果ガス)排出量算定・可視化クラウドサービス「zeroboard(ゼロボード)」は、サプライチェーン全体のGHG排出量の算出から削減実績の管理、サステナビリティ情報の報告などのアウトプットまで、企業の脱炭素経営を支援。金融機関や自治体など70社以上との連携によって顧客価値を向上させ、製造業・卸売業など約2000社がすでに同サービスを導入している。同社は、3カ月のアクセラレータープログラムの成果を発表する「Winter/Spring 2022 Summit」の「Expo Winner(最高賞)」など数多くの受賞・選出実績を持つほか、経済産業省「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会」の委員も務める“脱炭素のプロ”である。

 


 

まなびのポイント 1:脱炭素に向けた国際社会の動きと経営環境

 

気候変動による自然環境の変化は、大雨の深刻化が水害リスクに、熱波・高温が熱中症などの健康被害に、干ばつが水・食糧不足に、といったように「人類の脅威となる問題」へつながっている。そのため気候変動を抑えることを目的に、世界各国で脱炭素を宣言する動きが進み、金融市場や顧客も企業に環境配慮を求めるようになった。企業にとって「脱炭素経営に取り組まないこと」は、すでに経営リスクである。また、脱炭素経営は、①競争力の強化、②ブランディング、➂エネルギーコストの低減、④社員のモチベーションアップ・人材獲得といったメリットにつながるため、大きなトレンドにもなっている。


GHG排出量算定・可視化クラウドサービス「zeroboard」。サプライヤーからの一次データの取得、納品先へのデータ連携機能を有し、ネットワーク効果の高いエコシステムの構築を推進している

まなびのポイント 2:GHGプロトコルとサプライチェーン排出量

 

GHG排出量の算出・報告は、国際基準である「GHGプロトコル」に基づいて行われ、自社の直接排出・間接排出を計上する範囲(Scope1・2)と、自社の商品・サービスに関連した他社の排出を計上する範囲(Scope3)に分類される。企業がScope3も含めて算定対象とした場合、自社努力だけでは削減が難しいため、「企業間で協調した削減」もしくは「排出量の少ない企業から購入」といった動きが生じる。こういったScope3対応への動きは、米のAppleや独のBASFといった世界的な企業だけでなく、トヨタ自動車やファーストリテーリングなど日本企業においても主流となっている。


GHGプロトコルにおけるサプライチェーン排出量の3区分(Scope1・2・3)
出所:ゼロボード提供資料

まなびのポイント 3:サプライチェーン排出量を可視化する「CFP」

 

自社製品に関するCO2排出量の算定は、二次データ(既存データ)ではなく、一次データ(実測値)に基づく算定に変わると予想される。しかし、一次データの活用は、正確な排出量が算定できる一方で、算定に際して企業に大きな負担がかかるため、算定方法や開示ルールに関しては引き続き検討が必要とされている。また、CFP(カーボンフットプリント:原材料調達から生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルまで、製品ライフサイクルを通じた温室効果ガスの排出量をCO2に換算して表示する仕組み)が求められることが多くなっており、日本においても経産省・環境省がカーボンフットプリントの算定ルール化事業を進めている。今後は、サプライチェーンに関するより高度な知見が必要となるだろう。


排出原単位(活動量当たりのCO2排出量)の一次データ利用が求められる
出所:ゼロボード提供資料