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研究リポート
ビジネスモデルイノベーション研究会
秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート 2023.01.17

全国商店街30選(中小企業庁)企業・奥原商事に学ぶ、デポアイランドの地域一体型ビジネスモデル 奥原商事

【第5回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における知の探索をテーマに、さまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問する。
そのビジネスモデルを構築している経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、現地視察によりビジネスの現場に触れることによって、イノベーションを「体感」する機会を提供している。
今回はアジア有数のリゾート地である沖縄に訪問し、コロナ禍経済の中、ビジネスモデルを進化させることによって、数多くのファンを獲得し続けている2社の講義と視察から成功の秘訣を学んだ。
開催日時:2022年10月26日、27日(沖縄開催)

 

株式会社奥原商事
代表取締役社長 奥原 悟 氏
取締役 比嘉 朝旬 氏

 

はじめに

沖縄県中部地区の観光名所であるアメリカンビレッジ。奥原商事は、その中でも海外の街並みを彷彿とさせる観光エリア「デポアイランド」を展開し、雑貨の輸入販売や外食店、ディベロッパー、ホテルなどを運営する企業である。

 

アメリカンビレッジの来訪客は、コロナ禍で減少したものの、コロナ前までは年間400万人超。沖縄本島においては美ら海水族館や古宇利島などと並び、3本の指に入る集客力を誇る。
1974年に7坪の店を創業し、1998年に現地区へ出店。それから20数年で沖縄における一大観光地に成長した。同社が運営するエリアの特徴は「他にはない独自性」「幅広い顧客層への訴求」「共創力」といえるだろう。3つのキーワードから、同ブランドのビジネスモデルの秘密を探る。

 


 

まなびのポイント 1:日本でもなく沖縄でもない国際色豊かな独自性を演出

 

デポアイランドには、異国情緒あふれる西欧風の独特な建物が建ち並ぶ。当初、北谷町が打ち出したアメリカンビレッジの開発コンセプトは、「近くて安くて楽しめる若者の町」。

 

しかし、それだと近くのショッピングセンターと同一化してしまうため、現在は“日常空間と非日常空間の融合”という考えへシフト。日本でもなく沖縄でもない、海外の街のような独特な風景作りをモットーとし、県内の若者からシニア、県外日本人観光客、地元に住むアメリカ人を中心とした外国人など幅広い層へ訴求している。

 

街づくりに欠かせないテナントの誘致については、独自性を保つために全国チェーン店でないことが基準となる。また、まちづくりを進めるメンバーで構成する「デポアイランド通り会」の考えや基準によりテナント開発を進めている。

 

海外の街並みを思わせる観光エリア「デポアイランド」
海外の街並みを思わせる観光エリア「デポアイランド」

 

まなびのポイント 2:「地域全体の活性化」が業績につながる

 

奥原商事では「地域をいかに活性化させるか」に主眼を置き成長戦略が組まれている。商店街組織であるデポアイランド通り会の考えも、「地域を発展させれば、それぞれ店舗の売り上げは伸びる」という共通認識で推進されている。

 

つまり、「施設整備の推進→街の活性化→商店街の利用増→店舗の売上が伸びる→利益を設備投資へ回す」という好循環をいかにつくりだすかを念頭に置き、経営を行っているわけだ。

 

市や町との連携時は交渉が難航することもあるが、粘り強い姿勢で説得し、さらなる観光客増につなげた事例も多数ある。例えば、「遊び心が必要」との考えから曲がった遊歩道を海岸線に整備し、大人向けのカフェを揃えることで若者~40代の集客増につなげたのはその一例。イベントに関しても、市民・町民の利益、集客、地域おこしの場の提供という、互いのWin-Winの関係性をうまく形成している。

 

「地域を発展させれば、それぞれの店舗の売り上げが伸びる」という共通認識のもとで事業を推進
「地域を発展させれば、それぞれの店舗の売り上げが伸びる」という共通認識のもとで事業を推進

 

まなびのポイント 3:地域との共創力

 

デポアイランドの町づくりには、ディベロッパーである奥原商事のアイデアと、地元経営者らで構成するデポアイランド通り会との連携力が欠かせない。例えば未来投資の戦略ディスカッションは日々行われるが、そのメンバーは地元の建設会社や広告・デザイン会社、物販関係の各経営者。彼らが一体となり、地域一体となってコンセプトに合った未来の街づくりの構想が議論されている。

 

時には海外まで全員で足を運び、現地で情報収集しアイデアや感性を共有しながら新しい文化を作り出すという。コロナ禍において観光客が激減した時も、経営を止めず、海岸線の新しい遊歩道の工事を進めていたことからも、互いに未来像を描く共創力が見える。

 

 コロナ禍でも経営を止めず、海岸線の新しい遊歩道を整備。 関係者同士の共創力・連携力はデポアイランドの大きな強みとなっている
コロナ禍でも経営を止めず、海岸線の新しい遊歩道を整備。
関係者同士の共創力・連携力はデポアイランドの大きな強みとなっている