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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2022.12.26

年間150名を超える新卒社員一人ひとりに実践するコミュニケーション戦略~今の時代に必要な「血が通うコミュニケーションデザイン」とは~:株式会社丸和運輸機関

【第1回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを変革する経営資源」と捉え、顧客の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。当研究会では、デザインの力を経営に活用する「高収益デザイン経営モデル」実践企業を視察し、経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験。その本質に迫っていく。第1回は、日本デザイン振興会と産業技術総合研究所の講義でデザインとは何かを学び、デザイン経営の実践企業である丸和運輸機関を視察した。
開催日時:2022年10月24日、25日(東京開催)

 

丸和運輸機関
人事採用部 部長 岩田 祐之介 氏

 

はじめに

サードパーティー・ロジスティクス事業を中心に、個配事業や鉄道コンテナ事業、文書保管事業など幅広い事業領域を全国170拠点以上でグループ展開する丸和運輸機関。2014年の東証2部上場以来、連結売上高の成長率は毎年10%を超えており、2040年に売上高1兆円を目指している。また、事業拡大に併せて新卒採用を強化し、2011年に70名だった新卒採用者は2021年に454名まで増加した(10年間で384名増)。

 

こうした成長の源泉にあるのは、経営理念に基づいた企業文化だ。研究会参加者は、この企業文化をどのように社員の体験価値に変え、採用活動・人材育成を行ったのか、同社の人事採用部部長・岩田祐之介氏の講話から学んだ。

 



新卒採用サイト掲載の売上高の推移。アニメーションを用い、右肩上がりであることを分かりやすく示している
https://recruit.momotaro.co.jp/#numeral

まなびのポイント1:採用時から企業文化の理解を促進

 

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年初旬、同社はいち早く採用活動のデジタル化とコミュニケーションデザインに取り組んだ。例えば、オンデマンド動画による会社説明会を開催し、24時間365日視聴できる環境と、視聴後に選考試験を予約できる仕組みを整備。結果として2021年度新卒者のエントリー数は前年度比142.8%増を実現した。また、選考と内定の各フェーズでもオンデマンド動画(「職種別インタビュー」「内定者オリエンテーション・専務講話」)を活用。情報量が多い動画の視聴により企業文化の理解を促進し、内定者と良好な関係を構築した。また、若手社員から役員まで各層の人材を動画に登場させることで、理解が深まることを狙った。


会社説明会のオンデマンド動画。視聴後、希望者は選考試験を予約できる

まなびのポイント2:新入社員とのコミュニケーションデザイン

 

新入社員には、配属先の先輩社員に加えて育成担当者が付く。さらに、人事採用部が月1回・半年間の新入社員アンケートを実施。回答内容によって対面・電話・LINEなどでの面談を実施し、新入社員の不安・不満と向き合っている。

 

また、育成担当者と教育部の間に、育成計画書や教育専用ツールによるコミュニケーションフローを確立。配属先の部署と人事・教育関連部門が複層的につながるコミュニケーションデザインにより、新入社員の定着化・早期活躍を実現している。


丸和運輸機関の採用活動における「体験価値変容」の方程式
出所:タナベコンサルティング作成

まなびのポイント3:体験価値向上のデザインが応募者増と入社後の定着につながる

 

採用ターゲットを「顧客」と捉えると、応募者の体験価値が「CX(顧客体験価値)」、内定~入社後の体験価値が「EX(従業員体験価値)」に当てはまり、これらの向上が採用応募数の向上と定着につながった。

 

また、採用活動には、採用に対する社長の熱い思いやメッセージが必須であるため、オンデマンド動画やオウンドメディア、LINEによる内定者コミュニケーションなど、デジタルを活用したコミュニケーション手段でも、熱量を落とさないまま伝える工夫をしている。