徹底した制度活用と発信による企業理念の“日常化”と“自分事化”:株式会社ファンケル
当研究会では、最先端の教育制度や人材育成の仕組みを持つさまざまな企業の視察を通じて、人材の育成・活躍・定着を成功させるヒントを提供している。
今回は「理想的な組織文化(カルチャー)を醸成するための仕組み」をテーマに、2社のゲスト講師から企業理念・ビジョンの浸透手法と、それらを行動につなげる仕組みづくりのポイントを伺った。
開催日時:2023年01月31日(東京開催)
ファンケル大学 学長 田中 淑子 氏
はじめに
ファンケルグループは、創業理念に「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」、経営理念に「もっと何かできるはず」を掲げ、主に化粧品・健康食品(サプリメントなど)の製造・販売を行う企業である。
同社には、ファンケルグループの社内人材教育の推進を担う「ファンケル大学(企業内大学)」があり、理念研修をはじめ、階層別や職種別の教育を行っている。
今回は、ファンケル大学の学長を務める田中淑子氏に、企業理念の理解、浸透や、理念がもたらす社内文化・風土の醸成、理念に基づいた行動推進に向けた仕組みづくりについてご講話いただいた。
まなびのポイント 1:企業理念がもたらす社内文化・風土の醸成
同社では、全社員がステークホルダーや経営(理念・思い)との距離が近く、自分事として捉えることができる仕組みが確立されている。ステークホルダーに関しては、顧客・取引先、投資家・株主を通じて、社会からの声や評価をダイレクトに感じることができる。
経営(理念・思い)に関しては、創業者である池森賢二氏の名前を用いた「池森カレンダー」や、創業からの歴史が詰まった「History Museum」をはじめ、PCの立ち上げ画面には経営理念が映し出されるなど、理念や思いに触れる機会が日常のいたるところに設けられている。
これらの仕組みによって、企業理念の啓蒙から結果(社会の声・評価)、自信・誇り、意識改革・率先垂範、文化・風土の醸成という好循環のサイクルを生み出している。
まなびのポイント 2:ファンケルの歴史を体験できるHistory Museum
今日のファンケルに至るまでの細かな歴史を体感できるHistory Museumでは、同社の創業の歴史から始まり、原点である「不の解消」や、当時の社長室を再現した「旧社長室」、美・健康領域におけるものづくりの歴史など、当時の現物を用いてリアルな歴史を体験できる。
新卒・中途社員にかかわらず、新しく入社する社員はHistoryMuseumを見学し、同社の創業の思いや歴史などをリアルに体験・理解する。
「History Museum」を見学する研究会の参加者
まなびのポイント 3:理念に基づいた行動に向けた仕組みづくり
「企業理念や思いを理解すること」と「それらを行動に移すること」は別物である。
同社は、理念を行動に移すための仕組みを確立している。理念と連動した企業の行動指針・目指す姿が明確化されており、その姿になるための教育制度・成長機会が設けられている。
例えば、理念と連動した評価項目や社内表彰制度、アイデアコンテストなど理念実践を評価・賞賛する機会が数多くある。教育や成長機会を通じた取り組みに対して、評価・賞賛を連続的に繰り返すことで、社員のさらなるチャレンジ意欲を掻き立てている。結果として、自律型人材の成長に貢献している。
「History Museum」内では当時の社長室を再現