ライフスタイルビジネス研究会では、「CX(顧客体験価値)を追求し、真のライフスタイルカンパニーへ進化しよう」をコンセプトとして掲げている。第3回は、顧客体験価値の創造に向けたバリューチェーンの構築を実践している3社をゲスト講師としてお招きし、講演いただいた。また、企業視察として松栄堂が運営する「薫習館」を見学した。
開催日時:2023年01月19日(大阪・京都開催)
代表取締役社長 畑 正高 氏
はじめに
松栄堂は、1705年頃に創業以来、日本の香文化の担い手として独自の香づくりに取り組んでいる。2018年には、香りの体験型施設「薫習館」を開設。また、暮らしの中の香りにまつわるエッセイコンテンスト「香・大賞」も開催し、消費者が香りに出会う機会を創出している。
日本文化を感じることができる香りを体験価値として顧客に提供する同社。今回は、その価値を高め続けるためのバリューチェーンの仕組みや構築のポイントについて、代表取締役社長である畑正高氏から学んだ。
京都本店・薫習館(京都府京都市)
まなびのポイント 1:香りを通じた体験価値の提供
同社は、お香の製造販売を手掛けるだけではなく、香りを通じた体験価値を提供している。
例えば、2018年にオープンした「京都本店・薫習館」(京都府京都市)では、「日本の香り文化の情報発信拠点」というコンセプトのもと、さまざまなお香を展示。1階に設置された天井から吊り下がる箱は「かおりBOX」と呼ばれ、消費者に今までにない香りとの出会いを提供している。香りを軸とした顧客接点をつくることで、顧客の体験価値を高めている。
薫習館に設置されている「かおりBOX」。白い箱に頭を入れて、設定した香りを楽しむことができる
まなびのポイント 2:のれんを守り、広げる「香りのあるライフスタイル価値」の提供
同社は、創業300年という歴史・のれんを守りながらも、「香りのあるライフスタイル価値」を新たに提供している。
その1つが、インセンス(お香)ブランド「Lisn(リスン)」である。従来の伝統的なお香だけではなく、よりカジュアルなライフスタイルにも合うプロダクトとしてプロデュースしている。また、和雑貨を楽しむブランド「香音(かのん)」など、さまざまなライフスタイルに合わせたプロダクトを開発し、体験価値提供の範囲を拡大している。
インセンスブランド「Lisn(リスン)」
まなびのポイント 3:文化活動による未来の市場創造
同社は、「10年先のお客様はどこにいるのか」を企業繫栄における1つのテーマとして捉えている。実現に向けた取り組みとして、さまざまな文化活動による未来の市場創造がある。
例えば、各直営店舗では「お香とお茶の会」を開催し、香りと日本文化を国内外の消費者に伝えている。また、将来の顧客となり得る若年層に対しても、学校などで出張公演を行うことで、日本文化やお香への関心を高めている。
お香とお茶の会