リアルとデジタルの融合により、商品やサービス、人材・採用、そして企業価値ですら再定義が必要な時代が到来している。物理的価値や金銭的価値だけではステークホルダーから選ばれない時代でもあり、本質的欲求をもとにした体験価値のデザインが求められているのだ。
ナンバーワンブランド研究会では、コロナ禍で変わった価値観に対して、自社価値の再定義に取り組む企業を紹介。第4回では、特別ゲスト2社が実施しているインナー・アウターブランディングの中でも、課題解決に向けた取り組みと未来戦略についてご講演いただいた。
開催日時:2023年3月22、23日(東京開催)
管理本部 ダイバーシティ推進部長 黒嶋 敦子 氏
はじめに
熊谷組は、1898年に熊谷三太郎氏が福井市で建設業として創業。その後、1938年に株式会社熊谷組を設立した。高度経済成長期を迎える中、高速道路や水力発電所、ビル、高層マンションなどの大型建設プロジェクトに多数参加し、名声を高めていった。
現在は香港、台湾、ベトナムなど海外にも拠点を持ち、世界各地で建設プロジェクトを手掛けている。また近年は、高度技術を活用したインフラ整備や、地球環境に配慮した建設プロジェクトなど、社会的な責任を果たすプロジェクトに力を入れる。
さらに、「みんなイキイキ活躍プロジェクト」の発足を起点として、ダイバーシティの推進に力を入れ、建設業界のリーディングカンパニーとして建設業界を牽引している。
東京都新宿区にある熊谷組本社
まなびのポイント 1:社員体験価値
社内改革により多様な人財が能力を発揮できる「働きがいのある職場」の実現
同社は、女性の活躍促進に向けた取り組みに力を入れている。例えば、建設現場の仮設トイレを女性が安心して使用できるように整備。こうした女性が活躍できる職場環境づくりや女性のキャリアアップ支援など、女性の活躍を促進する取り組みを進めている。
また、女性活躍推進のみならず、従業員のワークライフバランスの実現や、男性の育児休暇取得を推進するための「男性育児休業取得者座談会」、社員の介護と仕事の両立をサポートする「介護説明会」開催など、意識改革を進めて職場風土の改善を図っている。
洗面所には植物を置くことで、清潔感を出す取り組みを実施
まなびのポイント 2:社会体験価値
「ESG・SDGs」の視点から新しいことに挑戦する人財の育成
海外での社会貢献活動として、同社はミャンマーで小中学校の校舎建設に取り組む「KUMAGAI STAR PROJECT」に取り組んでいる。「未来ある子供たちに学ぶ機会をつくり、それぞれの人生で輝く星になってほしい」という願いを込めたプロジェクト名である。
現在までに3校の学校に対して教室を整備しており、第一弾と第二弾はNGOと協働して実施。第三弾からはハード面(建設)は同社がマネジメントし、ソフト面(奨学金給付・図書寄付)はNGOを通して行う仕組みにステップアップ。建設後も関わりをもって活動している。
また、LGBTQ+への理解を深める取り組みとして、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権氏を招き、「LGBTQ+への理解」に関する講演会を開催。
さらに、本社ビルに「オールジェンダートイレ」を設置したり、「Diversity通信」を発刊し社内理解を深めるなど、ESGやSDGsへの取り組みに紐づいた社内改革を大々的に行っている。
KUMAGAI STAR PROJECTのスキーム図
まなびのポイント 3:DE&I推進における推進体制の整備
DE&I推進にあたり、同社は2016年にダイバーシティ推進室を設置。また、ダイバーシティ推進委員会を発足し、①推進体制の構築・企業姿勢の表明と展開、②職場環境の整備・人事制度の改善、③意識改革による職場風土の改善、④働き方改革による長時間労働の是正・業務効率化・標準化、⑥新しいことに挑んでいける人財育成、といったテーマを円滑に推進できる体制を構築。委員長を社長とし、トップダウンでダイバーシティが推進できる体制を整えている。
ダイバーシティ推進委員会の様子