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研究リポート
DX戦略推進研究会
本研究会では、データ活用による付加価値の向上と人材育成の推進の要諦を学びます。
研究リポート 2023.04.05

自らの頭で考え自走化する社員を生み出すデータ活用術:ワークマン

【第6回の趣旨】
当研究会は、デジタル戦略のケーススタディー・ワークショップを通じてデジタル戦略のロードマップを描くことを目的としている。今回は、自社のビジネスモデルのイノベーション実現に向けた取り組みを2社・1校より学んだ。
開催日時:2022年12月08日(東京開催)

 

 

株式会社ワークマン
役員待遇 営業企画部 兼 広報部 部長 林 知幸 氏

 

はじめに

 

DXが重要であることは理解しているものの、初期費用や、専門人材不足などの問題があり、一歩を踏み出せない企業は少なくない。

 

ワークマンも、トップダウンの社風、そのために生まれる“指示待ち社員”の増加など、DXとは正反対の企業体質であった。

 

その同社が、社員一人一人のポテンシャルを生かして、若い社員が自由に意見できるオープンな組織へと変革を遂げ、データをフル活用するDXを短期間で達成した。

 

同社の成功要因、実際の現場で起こった問題や課題、対策について、具体的な事例を交えながらポイントをひも解いていく。

 


 

まなびのポイント 1:組織改革から着手

 

将来的な労働者減少、ネット起業の台頭など多くの脅威がある中、ワークマンではトップダウンの社風の影響により、“上からの指示待ち社員”が増加していた。

 

そこで同社は、2012年より「若い社員が意見できるオープンでフラットな組織」への変革を推進。まずは、古いマインドに縛られないために、経営陣が先頭に立ち全社員のエクセルスキルの習得を啓蒙、数値やデータを基にコミュニケーションする風土づくりに着手した。

 

数字という明確な根拠を基にコミュニケーションを行うことで、若手社員でも意見できる機会が増え、企画が通るようになったという。

 

 
数値やデータ活用から進めて組織や社風変革につなげる
 
 

まなびのポイント 2:データ経営を定着させる3つのポイント

 

1つ目は、「社長が本気で取り組む」である。研修講師は社内から選出し、経営陣も若手社員に交じって勉強会に参加した。

 

2つ目は、「全ての社員の評価方法を変える」である。業績だけではなく、プロセスも重視することで、社員の意識や態度、行動を変化させた。

 

3つ目は、「会社は環境を用意し、その後は社員の自主性に任せる」である。会社は社員にやらせるのではなく、やる気のある人が自主的にデータを活用できるような環境を整備。

 

また、講習会やテストなど発表の場を設けて、データ分析に対する取り組みを加速させた。

 

 
社員の自主性に任せると同時に、企業は必要な環境や制度を全て整備
 
 

まなびのポイント 3:データ分析によるマーケティング活動の進化

 

マーケティングに関する各指標を分析したところ、InstagramからのCVR※1が通常の2倍と、CMや雑誌よりも第三者の投稿による効果が高いことが分かった。

 

同社は、マーケティングの4P(商品・価格・流通・販促)のうち、特に流通を重視している。デジタル化が進む中、顧客との接点が一番重要だと考えているためだ。

 

また、アンバサダーマーケティング※2にも注力。現在では有名となった「ワークマン女子」シリーズも、アンバサダーマーケティングとデータ分析から生まれている。

 
※1 コンバージョンレート:ウェブサイト訪問者のうち、購入や問い合わせなどに至った件数の割合
※2 製品・サービスに関心を持つ顧客をアンバサダーと定義し、ともに商品開発、PRなどを行うマーケティング手法
 

 
アンバサダーマーケティングにより数々のヒット商品を生み出している