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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2023.03.29

70年愛されるブランドを創る、デザイン経営モデル:ファミリア

【第3回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを変革する経営資源」と捉え、顧客の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。当研究会では、デザインの力を経営に活用する「高収益デザイン経営モデル」実践企業を視察し、経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験。その本質に迫っていく。ファミリアの講義で「70年間愛され続けるデザイン思考と企業経営の実践」、たねやグループの講義で「創業200年に向けたブランドづくりとデザイン経営」の秘訣について学び、デザイン経営の本質に迫った。
開催日時:2022年2月21日、22日(兵庫・滋賀開催)

 

 

株式会社ファミリア
代表取締役社長  岡崎 忠彦 氏

 

はじめに

日本におけるベビー・子ども服業界屈指のブランドであるファミリア。創業者の坂野惇子氏が、2016年のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」のヒロインのモデルだったことから、親近感を持っている消費者は少なくないだろう。創業以来、同社は常に革新的なものづくりに挑み、多くのファンに愛されブランドを育んで来た。
しかし、現社長の岡崎忠彦氏が就任した2011年頃は、東日本大震災の影響から経済環境が厳しく、会社存続の危機に陥っていた。そのような逆境において、岡崎氏のリーダーシップのもと、理念・ビジョン・組織・オフィス(本社移転)・社内コミュニケーションを同社はゼロから見直し再構築した。デザイナー出身である岡崎氏の経験・ノウハウを生かしたデザイン経営の背景やストーリーをご講演いただいた。

 


ファミリア神戸本店。妊婦から2歳を迎えるまでの1000日を大切にする「for the first 1000days」をエントランスで表現

 


 

まなびのポイント 1:新しい企業理念「子どもの可能性をクリエイトする」

 

岡崎氏は社長就任後、企業理念「子どもの可能性をクリエイトする」を新しく策定した。この理念を根幹として「次の未来をどう創るか」「次世代の子どもたちに何を残せるのか」、そして「未来のクリエイターを創る」という視点でデザイン経営を推進。

 

同社は、ただ単に商品を製作・提供するだけではなく「モノ」「コト」「マナビ」を体験できる場を作り、子どもたちの可能性を広げるコンテンツを提供し続けている。プロダクト・イベント・サービス・食・教育・アートなどをテーマとして、ファミリアそのものがコンテンツメディアになる事を目指している。

 


「モノ」「コト」「マナビ」の体感を通して、子どもたちの可能性を広げる様々な取り組み・コンテンツを提供

 

 

まなびのポイント 2:「環境づくり」にこだわり、イノベーションを起こす

 

デザイン経営を推進する中で、こだわったことの1つは社内の「環境づくり」だ。2016年に本社を移転し、オフィスを刷新。「オフィスは商売道具」という考えのもと、オフィス環境の1つ1つを細部に至るまで丁寧に作り上げた。スタッフ同士がさまざまなモノ・コトを共有し合い、さらにほかのスタッフを巻き込んでいく。そんなスタッフのコミュニケーションが活性化するような環境になることを目的に、アート(美術品)の配置やオフィスツールにこだわったほか、個室の撤廃やコピー機を1カ所へ集約するなどして、オープンなイノベーション環境を整備した。

 

2016年6月にオープンした体感型ショップ「ファミリア代官山店」。
ファミリアのコンセプトを店舗にて体現している

 

 

まなびのポイント 3:ファミリアの価値創造「ビジュアルプラットフォーム」

 

同社のオリジナリティーあふれる取り組みの1つとして「ビジュアルプラットフォーム」が挙げられる。クリエイター約70名をはじめ本社スタッフ全員が参加し、半年間のコンテンツ展開のベースになるイメージをビジュアル化し、共有するものだ。

 

約20年の歳月をかけて確立させたビジュアルプラットフォームは、子ども服・飲食・提供するカリキュラムなど、さまざまなファミリアのコンテンツの道しるべとなる。本社スタッフ全員が参加することで、スタッフ自身が体現者として「子どもの可能性をクリエイトする」という理念に沿ったコンテンツを制作できるのである。

 

全スタッフで作る「ビジュアルプラットフォーム」