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研究リポート
SDGs・ESG経営研究会
2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート 2022.10.31

ガンバ大阪×地域自治体×地域企業でのパートナーシップによるSDGs推進:株式会社ガンバ大阪

【第1回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては「サステナブル」というキーワードが非常に重要になる。当研究会は、「社会と企業のサステナビリティを実現し未来を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。第1回では、株式会社ガンバ大阪と凸版印刷株式会社の2社を訪問・視察し、SDGsへの取り組み方を学んだ。
開催日時:2022年9月28日、29日(大阪開催)

 
 

 

株式会社ガンバ大阪
管理部 経営企画課長
竹井 学 氏

 
 

はじめに

株式会社ガンバ大阪は、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟し、吹田市をはじめ大阪の北摂地域をホームタウンとするプロサッカークラブ「ガンバ大阪」の運営会社。「GAMBA」はイタリア語で「脚」を意味する。

 

プロのサッカーチームとしては、Jリーグだけでなく世界を舞台に戦えるクラブチームを、運営面では、ホームタウンの住民が世界に誇れるようなプロフェッショナルクラブになることを目指している。1991年のクラブ設立当初から地域密着型イベントや社会貢献活動を積極的に行ってきたが、最近はSDGs活動を通じて産学官連携のハブとなり、環境問題への取り組みを促進するプラットフォーマーとしての役割も果たしている。

 


 

 

観客と環境に配慮して設計されたガンバ大阪のホームスタジアム(パナソニックスタジアム)

 

 

 

まなびのポイント 1:SDGsは経営課題そのものであり、社会貢献ではない

 

SDGsの17の目標達成に向け環境配慮型ビジネスは急成長しており、どの企業にとっても経営課題の1つになってきている。企業がSDGs活動を推進する上で重要なのは、「SDGsは社会貢献ではなく経営課題である」と正しく理解することだ。ただ、SDGsは1社単独では解決できない複雑な課題であるため、ステークホルダーとの連携が必要不可欠となる。

 

長年CSRに取り組んできたガンバ大阪は、SDGsに取り組む際に必要な要素は「パートナーシップ」と「人的資本経営」だと考えており、地域・企業・行政と密に連携して、人と人のつながりで推進していくスタイルを大切にしている。

 

 

ガンバ大阪のロゴ(左)
ガンバ大阪のSDGsプロジェクトテーマのロゴ(右)

 

 

まなびのポイント 2:スポーツをSDGsのプラットフォームにする

 

ガンバ大阪は、3つのセクター(ビジネス・非営利組織・地域)をスポーツでつないでSDGs推進を行う「スポーツ共創イノベーション」のプラットフォーム構築を目指している。ポイントは、企業・地域・ガンバ大阪の各課題を共創で解決するアプローチを採ることだ。

 

例えば、シェアサイクリングの利用促進は、3つの課題を同時に解決する取り組みである。

 

①ガンバ大阪:スタジアムまで徒歩で移動するしかない顧客(観客)の不満
②地域:脱炭素に向けた取り組みの推進
③企業:シェアサイクリングビジネスの拡大

 

この連携により、ガンバ大阪はSDGs活動の推進と顧客満足度の向上を両立させている。

 

 

大阪府×OpenStreet(株)×ガンバ大阪で実現したシェアサイクル

 

 

まなびのポイント 3:SDGs活動をCX(顧客体験価値)向上につなげる

 

ガンバ大阪は企業として成長するため、観客動員数を増やす取り組み(スタジアムに足を運び続ける顧客の維持・創造)を重視している。そのため、スポーツの感動を提供するだけでなく、スタジアムでのさまざまな取り組みをLTV(生涯顧客価値)向上につなげる必要がある。そこで、毎試合発生するプラスチック廃棄物をポリエステル繊維へリサイクルして製作した「ビッグユニフォーム」の制作や、再生可能な生分解性材料をベースにした飲料カップを提供・回収してスタジアム内で土に還す試験運用など、スタジアムというリアルの場を活用して社会課題と向き合い考える時間を創出。CX向上のみならず、地域のSDGsへの意識の醸成にも貢献している。

 

 

帝人フロンティア(株)×ガンバ大阪で制作した「ビッグユニフォーム」。

スタジアム内で回収したプラスチック廃棄物をリサイクルして作った