コンテナ船や航空貨物に次ぐ「第三の輸送」へのモーダルシフトの担い手として成長を遂げる、関光ロジNEXT。
新日本海フェリー・阪九フェリー・関釜フェリーなどで構成するSHKライングループの中核企業は、思いを込めた未来ビジョンの実現に向け、全社員参加型のブランディングを推進している。
社名変更を機にブランディングを強化
韓国・釜山や中国・蘇州へ直行便が就航し、北米やアフリカとも国際航路を結ぶ国内最大級の拠点港湾・下関港。国際フェリーターミナルの向かいに本社ビルを構えるのが、2025年9月1日、77周年の創業記念日に社名変更を果たした、関光ロジNEXTだ。
「祖業は船を持つ船主であり、内航海運事業でした。現在はSHKグループとして国内・国際フェリーを運航していますが、当社は船主ではなくなりフォワーダー事業※がメインです。船がないのに関光汽船という名前で、社業と社名のミスマッチングを何とかしたい、との思いを抱いてきました。採用面接などの場でも、学生の方から『船に乗ることはありますか?』とたびたび質問され、その都度説明してきました」
社名変更の経緯についてそう語るのは、代表取締役社長の入谷一成氏である。「業績は順調ですが、100年企業、さらに200年企業になっていくために、事業や仕事の全てをゼロから見直すことが基本スタンスです。長らく『関光汽船』の社名が定着していた当社にとって、社名変更は大きな決断でしたが、77周年という縁起の良い節目に変更を果たし、それとともに1年かけて全社員参加型でのブランディングを進めてきました」(入谷氏)
※国内・国際物流の貨物輸送を請け負うアウトソーシングサービス。複数の運送業者と提携し荷主の商品を最適な輸送手段で運ぶ一貫サービスが強み
社員の参画意識を育むインナーブランディング
ブランディングプロジェクト(PJ)は2024年、企業理念とMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の言語化から始動した。
経営企画を事務局に、理念とミッション・ビジョンを経営幹部で策定。一方、バリューについては全社員が参画し、部署別チームでブレーンストーミングを重ねて、ミッション・ビジョンにふさわしい4つの行動指針を導き出した。
「理念には、創業者が社是に掲げた『熱情』『誠實』『和合』という言葉を選び、創業の原点に立ち戻る意味を込めています。また、世の中は変化し続けるからこそ、新たな未来へ挑み続けるという意図で『挑戦』も付け加えました」(入谷氏)
ミッションとビジョンでは「シンカ」(進化・深化・新化)を追求するロジスティクスパートナーの姿を明文化し、タグラインには「セカイをシンカする」を採用した。
「バリューの策定は全社員参加型にし、社員をチームに分け、そこで意見を出し合ってもらいました。面白いことに、社員がまとめ上げた『挑戦者マインド』『感動提供』『チームシナジー』『自律と貢献』という4つのバリューは、経営理念と通じるものになっており、一人一人が経営理念やミッション・ビジョンの実現に真剣に向き合い、理解や共感が深まったのだと感じました。
こうした成果は全社員参加型のプロセスを経たからこそ得られたものであり、全員で取り組めたことが何よりの成果です」(入谷氏)
また、社内で議論を重ねて生まれた新社名「関光ロジNEXT」は、創業からのアイデンティティーである「関光」、社業の「ロジスティクス」、New(新たな)・Evolution(シンカ)・X(未知なる)・Transport(輸送)を意味する「NEXT」を組み合わせた造語であり、未来に向けた挑戦の象徴を示す社名である。
関光ロジNEXTの新ロゴ
MVV策定に伴い人事評価制度を刷新
「お客さまや地域の方々から長らく『関光(カンコウ)さん』と呼ばれてきた愛着のある名前に対し、社員からも『関光の名前を残してほしい』という声が多かったため、あえて残しました。当社の原点であり、長距離フェリーのパイオニアとして培ってきた実績と信頼を基盤に、変わりゆく社会のニーズに応えながらより一層進化したい、と考えています」(入谷氏)
全社員参加型のブランディングPJの胎動は2017年、入谷氏の社長就任直後にさかのぼる。
入谷氏は社長就任後、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動を皮切りに、業務改善、人事制度・等級制度の改定などマネジメント体制を7年かけて整備、刷新してきた。重視したのは、社員を巻き込み、主体的な意識・行動を促すこと。こうした積み重ねによる社員の意識変革があったからこそ、今回のブランディングPJが成功したと言える。
入谷氏は、自らの考え方のベースに「愛社精神」「エンゲージメント」があると語る。
「楽しく働いて『この会社、このチームにいて良かった』という満足・充実が得られる、本当の意味での愛社精神やエンゲージメントを、社員一人一人に高めていってほしいですね。企業価値の最大の財産である『人』が育ち、ハッピーになってもらうことを重視しています。
就任当初から『想像力と創造力のある自律型の人材を目指そう』と繰り返し伝えてきましたが、変革や挑戦をいとわず、モチベーションがおのずと湧く組織文化をつくろうと、段階的に改善を進めてきました。
もちろん、社名を変えたからといって社員の意識や行動がすぐに変わるわけではありません。自分たちが参加して進めたからこそ納得でき、推進力が生まれます。PJを通じ、社員の参画意識・行動が年々高まり、若手社員も含め、主体的に成長しているという手応えがあります」(入谷氏)
同社はインナーブランディングのさらなる浸透へ向けて、理念やMVVをまとめた「ブランドブック」を作成し、全社員に配布した。また、MVV策定に伴い、人事評価制度を刷新し、バリューを体現するために求められる行動を、等級別に明文化。新しいチャレンジを積極的に評価する方針も示した。
「人事・評価制度は常に見直し、変えていくもの。社員には『1つでいいから新しいことに挑戦してほしい』と伝えています。変化を起こすための失敗はあってもいい。今の『当たり前』から抜け出し、効率や効果を高める新しい行動は評価する。自分で考える力を持ち、行動することが何より大切です。社員の起案・企画でさまざまな業務改善が進んだ結果、残業時間が減り、直近年度は全社員5連休取得を実現しています。今後もさらに、働きやすさや待遇の良さとともに、働きがいも高められるよう取り組んでいきます」(入谷氏)
ブランディングPJは今、インナーからアウターのフェーズへと歩みを進めている。
「インナーブランディングで整理・分析した自社の価値観や強み・魅力を、お客さまへいかに伝えていくか。アウターブランディングについては一定規模の予算で、継続的かつ計画的に実施し、成果につなげていきます」(入谷氏)
MVVブックを全社員に配布し、手元に置いていつでも見返せるようにしているという。ユニフォームも新社名・新ロゴ入りに刷新したほか、ふせんやバッグハンガーなども制作し、ブランディングを推進
関光ロジNEXT 代表取締役社長 入谷 一成氏
「新しいチャレンジ」を重ね、100年企業へ
ターゲットは、2つある。顧客向けには、ウェブマーケティングの充実だ。かつて顧客は、世界中のコンテナ船の運航ダイヤを掲載する業界誌を見て、いつ、どこに荷物を運ぶかを決めた。だが今、問い合わせはウェブサイト経由が多数を占める。同社は2019年にコーポレートサイトをリニューアルし、SEO対策により検索順位を高めてきたが、今後はさらなる充実を目指す。
もう1つは、リクルーティング対策である。地域の優良企業ではあるが、今後はアウターブランディングにより知名度を高め、人材確保のための接点を創り出すのが狙いだ。
「55年の実績がある関釜フェリーを、メーカーなど荷主の物流担当者が知らないケースもあり、まだ知名度が足りていないと感じています」(入谷氏)
翻ればそれは、ブランディングによる顧客開拓や商圏拡大のチャンスがあることを物語っている。海陸一貫輸送やトラックごと運搬するRORO船など「海より速く、空より安く」の第三の輸送モーダルはニッチマーケットだが、メジャーなコンテナ船や、飛行機から移る荷物は増えている。確かなニーズがあり、それに着実に貢献している証しだ。
「PJでは、取引先の顧客、SHKライングループ企業、社員にそれぞれブランディングサーベイを実施し、自社像を見える化したところ、診断結果は『非常に真面目で、信頼でき、仕事は正確でまったく問題がない』『大人しくてチャレンジングな姿勢がなく、非常に保守的である』というものでした。これらは当社だけでなく、多くの日本企業にも共通する姿だと思います。特に地方のオーナー企業は、高度成長期にトップダウンで成功してきた歴史もあり、上位下達の文化が定着しているのではないでしょうか。
ですがこれからは、ダイバーシティーの時代。十人十色の価値観を生かしてこそ、より良いものが生まれ、真のブランディングが進むと考えています」(入谷氏)
タグライン「セカイへシンカする」は、100年企業からさらにその先へ、多様なシンカ(真価)を発揮し続ける姿も示している。
関光ロジNEXT(株)
- 所在地 : 山口県下関市竹崎町4-6-8
- 設立 : 1948年
- 代表者 : 代表取締役社長 入谷 一成
- 売上高 : 139億円(2025年3月期)
- 従業員数 : 200名(2025年3月現在)