オールインワン化粧品のトップランナー
福岡県福岡市に本社を置く新日本製薬は、通信販売(以降、通販)を主軸に化粧品などを扱うスキンケア事業と健康食品・医薬品などを扱うヘルスケア事業を展開する東証プライム上場企業だ。株式を上場した2019年からの業績は、コロナ禍を経ながらも右肩上がりを続け、2024年9月期は売上高400億4300万円(前期比6.3%増)、営業利益41億7600万円(前期比11.3%増)に至った。
同社の主力はスキンケアブランド『パーフェクトワン』で、オールインワン美容液ジェルシリーズは国内売り上げ8年連続ナンバーワン(富士経済「化粧品マーケティング要覧2017〜2024」)を達成し、ギネス世界記録TMでも「売り上げ世界一」(TFCO調べ「最大の顔用保湿ジェルブランド」)に認定された。
同社の前身は、1992年設立の新日本リビングという生活用品を扱う通販会社である。同社を急成長に導いたのは、代表取締役社長CEOの後藤孝洋氏だ。
後藤氏が新日本リビングに転職したのは1995年。当時は健康食品の通販をスタートさせたばかりだった。同社は販売実績を順調に増やし、既製品の販売から自社企画製品の販売へとシフト。2000年には基礎化粧品の販売をスタートさせた。そして2002年に社名を新日本製薬へ変更。2005年には後藤氏が社長に就任した。
同社は、顧客からの意見や要望、「こんな商品があったらうれしい」といった声を大切にしながら商品企画を行っている。寄せられた声を基に、「シンプルであること」と「コラーゲン」を追求。多様化する女性の生き方に寄り添うスキンケアブランドとして2006年にパーフェクトワンのオールインワン美容液ジェルシリーズをリリースした。
同ブランドは、1つのアイテムで効率的にスキンケアができる。この認識がユーザーに浸透し、2025年1月には累計販売実績8500万個を突破。リピート率が高く、2022年に実施したアンケート調査※では98.3%が「使い続けたい」と回答し、オールインワン市場のトップシェア堅持につながっている。
さらに2021年には20〜30歳代のミレニアル世代をターゲットにした「パーフェクトワン フォーカス」シリーズもラインナップした。これは、「世界中から厳選した植物成分であなたの美しさを花開かせる」をキャッチフレーズに、毛穴の悩みにフォーカスしたグローバルコスメブランドで、ミレニアル世代に特化したマーケティングやプロモーションを実施。通販はもとよりドラッグストアや海外市場への展開も積極的に推し進め、2024年9月期の売り上げは前期比2.7%増となった。
また、ヘルスケア事業では、健康維持や体重減少などをサポートする機能性食品を扱う「Fun and Health(ファン・アンド・ヘルス)」ブランドが順調に成長し、2024年9月期の売り上げは前期比35%増となった。
パーパス実現を目指す 「人財育成」と中期経営計画
進境著しい新日本製薬の新たな道しるべとなるのが、「美と健康の『新しい』で、笑顔あふれる毎日をつくる。」というパーパスだ。このパーパスは創業30周年を迎えた2022年に経営陣と社員が策定作業に取り組み、翌23年1月に制定されたもの。同時にパーパス浸透プロジェクトを立ち上げ、全社員への浸透に力を入れている。
具体的な活動方針としては、ゴールは「社員がパーパスを意識した行動を自発的に実践している状態」として、「認知」「理解」「共感」「コミットメント」「自発的な行動」といったフェーズを踏みながらパーパスの浸透を図っていく。現在はパーパスがこれからの自社の軸になることを全社員に「理解」してもらう段階と捉え、掲示物やボールペン、付せん、PCの壁紙などにパーパスを表示したり、各部署から社員を集めてパーパスについてのグループワークを行ったりしている。
また、パーパス制定を機に理想の「人財像」を見直し、「パーパスの実現のため、経営理念を体現し、行動指針を実践する人」とした。さらに、このような人財像を具現化するための新たな「人財育成方針」を策定。それに基づいた人財育成施策や人事制度の整備を推進している。さらに人財育成方針に基づいた社内環境整備方針も策定し、より良い職場の環境づくりにも取り組んでいる。
新日本製薬の今後の成長軌道を示す中期経営計画が「Growth Next2027」である。2027年までの3年間を長期ビジョン実現に向けた基盤固めの期間として、全社戦略である「トレンド×VOC(Voice Of Customer:顧客の声)×独自価値」を実現する商品開発の推進を加速するという。重点活動は次の4点だ。
1点目は、パーフェクトワンのターゲット拡大によるミドル世代獲得である。パーフェクトワンを全世代向けの一気通貫したブランドへと成長させ、ケア領域をスキンケアからオーラルケアやボディーケアへと拡充。「トータルビューティーブランド」への進化を図る。また、同社のバリューに掲げた「感動創出」へ向けて通販・EC・卸売りのオムニチャネル化を推進し、顧客一人一人のニーズに合わせたコミュニケーションの下、ブランドとして統一感のあるシームレスな購買体験を実現していく。
2点目は、DB(データベース)マーケティングの強化によって新規事業・新商品を生み出し、LTV(顧客生涯価値)を最大化すること。自社の強みであるDBマーケティングをフルに活用し、顧客にフィット感のある新規事業と新商品開発を強化することで新たな顧客との出会いを増やし、美と健康の分野における全方位へ挑戦して、顧客満足度とQOL(生活の質)の最大化に貢献する。
3点目は、米国を中心としたグローバル成長戦略の展開である。米国を起点とした新規市場の拡大と、グローバルでのパーフェクトワンのブランド力強化を図る。同時にアジアでのECモールや越境ECの実現可能性を探っていく。
4点目は、新商品・新サービス強化による事業成長の加速だ。人的リソースとITへの投資強化によって、顧客の世代やライフステージに合わせた新商品・新サービスを開発できる仕組みを構築し、開発スピードやヒット率を向上させるメソッドの推進加速に努めていく。
このように、パーパスに基づいた総合的な戦略を展開することによって持続可能な成長と企業価値の最大化を推し進め、2027年9月期には、連結で売上高520億円、営業利益60億円、営業利益率11.5%の実現を目指すという。
創業から30年以上にわたり「美と健康」という普遍的なテーマに挑み続け、国内外での事業拡大や新たな価値創造に挑むことで新たなステージへと進化を遂げようとしている新日本製薬。同社の顧客の声を起点とした商品開発と革新的なマーケティング戦略から、学ぶことは多い。
※ 新日本製薬「2022年SPナイトクリームアンケート」(2O22年10月実施、n=299)
新日本製薬(株)
- 所在地 : 福岡市中央区大手門1-4-7
- 設立 : 1992年
- 代表者 : 代表取締役社長CEO 後藤 孝洋
- 売上高 : 400億4300万円(連結、2024年9月期)
- 従業員数 : 515名(連結、2024年12月現在)