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コラム
海外リポート
タナベコンサルティンググループ主催の海外企業視察リポートです。
コラム 2025.01.06

多文化・多民族のシンガポール。アジアビジネスの基点として躍進 川名 勇摩

シンガポールの消費者は購買力が高く、
品質・信頼性を重視する傾向

 

前述の通り、シンガポールは1人当たりのGDPが世界第5位と高く、購買力のある消費者の多い市場である。都市国家としての特性から、消費者は新しいトレンドや高品質な製品に敏感であり、特にライフスタイルやテクノロジー関連の商品に対する需要が高い。シンガポールの消費者はブランド志向が強く、品質や信頼性を重視する傾向がある。これにより、日本製品、特に日本食ブームに見られるような、高品質で信頼性のある商品は、現地市場で高い評価を受けている。

 

また、シンガポールは多文化・多民族社会であり、中華系、マレー系、インド・タミル系など多様な民族が共存しており、総人口約603万人(2024年6月時点)に占める外国人(永住者除く)の割合が3割を超える※2

 

この多様性は、消費者の嗜好しこうにも反映されており、多様な市場ニーズに応える製品やサービスの開発が求められる。特に、健康志向や環境意識の高まりにより、オーガニック製品やエコフレンドリーな商品に対する需要が増加しており、日本企業は、これらのトレンドを捉えたマーケティング・ブランディング戦略、商品展開を行うことにより、シンガポール市場での競争力を高めることができる。これまで、東南アジア市場参入の腕試しとして同国で商品展開を行う風潮も存在していたが、事前の消費者インサイト分析や、その先の周辺国におけるターゲティング(ペルソナ)の設計が、同エリアにおけるマーケティング戦略を最適化させる需要なポイントとなる。

 

※2 日本貿易振興機構ビジネス短信「シンガポールの人口が過去最多、600万人の大台に」(2024年10月1日)

 

 

日本食ブームで食品の成功事例多数
アジア戦略の基点に最適

 

シンガポールでは、長く日本食ブームが続いており、日本のラーメンチェーンや寿司店を代表とする日本食レストランが、現地の消費者に高く評価され、どこのショッピングモールにも必ずと言って良いほど日本食レストランが存在する。多文化社会のシンガポールには、異なる食文化を受け入れる土壌があり、日本の食材や料理が現地の食文化に溶け込んでいるといっても過言ではない。

 

具体的な成功事例としては、シンガポールで11店舗を展開するディスカウントストアチェーンであるドン・キホーテ(海外ではDON DON DONKI)が日本の食材や日用品を日本と変わらない価格で提供することで、現地の消費者から高い人気を博している。販売されているほとんどの商品が日本からの直輸入であり、特にシャインマスカットやモモなどの高品質な果物が店舗入り口に陳列されており、好調な売り上げをけん引する主力商品となっている。

 

シンガポール政府の厳しい食品安全基準をクリアすることで、日本食品は高品質で安全な選択肢として認識されている。これにより、日本食品はシンガポール市場での地位を確立し、さらなる成長の機会を得ている。日本企業は、シンガポール市場での成功を足掛かりに、ブランド価値を高め、他のアジア市場への展開を図ることが容易となる。

 

これらのポイントを踏まえ、日本企業がシンガポールでのビジネス展開を考える際には、現地の経済状況や消費者ニーズを理解し、適切な戦略を立てることが重要となる。同国の地理的優位性や購買力の高さを生かし、アジア全体へのビジネス展開を視野に入れることで、さらなる成長を実現する近道となる。

 

執筆者 川名 勇摩かわな ゆうま タナベコンサルティング グローバル チーフ
執筆者
川名 勇摩かわな ゆうま
タナベコンサルティング グローバル チーフ