視察企業 4 STEFANO BEMER
“革の魔術師”が生み出した紳士靴
“革の魔術師”とも称され、伝統的な技術をベースに流行をリードしている高級紳士靴ブランド、STEFANO BEMER。オーダーメードで顧客と話し合いながら、ベストな製品を作り上げる。フィレンツェの職人による技巧、長年にわたるナレッジが詰まった製品は、顧客の心をつかみ、競争の激しいヨーロッパの紳士靴業界において短期間でトップブランドに上り詰めた。
顧客のニーズに応じたカスタマイズを重視し、独自のフィット感とイタリアンテーストを追求することで、顧客のロイヤルティーを高めている。オーダーメードの「ビスポークシューズ」を核として、パターン型・セミオーダー型をシリーズ展開することで、より多くの顧客に製品を提供し、ブランドの成長と持続可能な経営を実現している。
視察企業 5 Luigi Bevilacqua
ベネチア中心部に残る最後の織物工場
Luigi Bevilacquaは、古代の城や貴族の家、教会の壁を飾る織物の名職人だった創業者の名にちなんで命名された。同社はベネチアの伝統的な織物技術を駆使し、顧客のニーズに応じた特注品を丁寧な職人のハンドメードにより提供。手作業による唯一無二の製品は高い付加価値を持っており、高価格帯での販売を可能にしている。機械の台数が限られる中、わずか5名のスタッフが、各自、専門的な技術を有し、職人としての誇りを持って仕事に従事する。
名門宮殿の修復プロジェクトに関与して歴史的な織物や装飾を再生したり、地域の文化遺産を保護して過去の美を現代に伝えたりするなど、歴史的・文化的に重要な役割を果たす。
視察企業 6 Ferragamo Museum
世界中で愛されるラグジュアリーブランド
フィレンツェを本拠地とする高級ファッションブランド創業者、サルヴァトーレ・フェラガモは、靴職人としての卓越した技術と革新的なデザインで知られる。ハリウッドで活躍する数々の名優の靴を手掛けたことから、「スターの靴職人」とも呼ばれる。
彼はイタリアの優れた素材と職人技に魅了され、ルネッサンスの芸術伝統を靴作りに取り入れた。紀元前のデザインや解剖学の知識を活用し、コルクや麻、キャンディーの包み紙など、独自のアイデアを取り入れた革新的なスタイルを確立。1960年にサルヴァトーレ氏が亡くなった後もフェラガモ一族が経営を引き継ぎ、靴だけでなく、バッグやアクセサリー、衣類など幅広い商品を展開する。
〈講演〉 日伊文化コーディネーター 中橋 恵 氏
イタリアの都市住宅・地方創生
通訳・コーディネート業務や、地域再生に関する調査・執筆を行う中橋 恵氏にご講演いただいた。
イタリアは少子高齢化や都市部への人口集中など、日本と同じ課題を抱えながらも、経済成長が見込まれる。主な要因は製品輸出と観光、住宅・不動産にあり、不動産分野へは政府が投資している。
経済成長の過程で、大都市には人口集中による負担がかかっているため、エリア開発や都市菜園の導入が進められているという。
また、イタリアの住宅開発には多文化共生の視点が求められており、ソーシャルハブの設立や地域特性を生かした観光地の開発が推進されている。例えばミラノの街は、ローマ時代から続く歴史的な建物が並ぶエリアと、再開発されたモダンな高層ビルや商業施設が建つエリアが混在することが特徴的だ。オリンピックなどのイベントで使用した建物やモニュメントも、再開発の際に取り壊さない工夫をし、実施されたことが記憶に残る “ミラノらしい”街づくりにつながっている。
執筆者
村上 幸一
タナベコンサルティング 取締役
執筆者
植杉 友哉
タナベコンサルティング ストラテジー &ドメインチーフコンサルタント