三井情報 取締役 副社長執行役員 蒲原 務氏(左)、人事総務統括本部 グループ人材開発部 キャリア推進室 室長 山田 美夏氏(右)
三井情報は、1967年に三井物産の情報システム部門が独立し、三井情報開発が生まれたことに端を発する企業である。ICT技術の進化や時代のニーズに対応しながら7社が順次合併し、2007年に三井情報としてスタートを切った。
規模や事業領域の異なる会社が統合を繰り返した結果、今では2600名以上の従業員を有する規模へ拡大。事業もITマネジメントサービス・コンサルティング、システムインテグレーション、ITインフラ構築、クラウドソリューション、情報通信機器、エレクトロニクス関連製品・装置の提供など多岐にわたる。
「合併した各社は事業領域だけでなく社風も異なります。
ルーツの異なる企業を統合し、一体感のある風土を醸成するため、最初に取り組んだのは全社員が参加するワークショップの開催です。毎年テーマを設け、全社を挙げて取り組んできました」
企業風土改革の背景をそう説明するのは、取締役副社長執行役員の蒲原務氏である。部署や立場の異なるメンバーを混合したグループによるワークショップ形式は2018年から開始し、初年度は自社キャッチコピーを決定。年間50回に及ぶワークショップから「ナレッジでつなぐ、未来をつくる」が選定された。この言葉は現在、同社のパーパスとなり、ビジョン、バリューとともに経営理念として同社の方向性を示している。
翌2019年には、「三井情報の役職員の価値観を創出する」をテーマに開催。ワークショップを通じて「期待を超える価値創出に挑む」「どうすればできるのかを考えて行動する」「自ら率先して変化を起こす」という3つの価値観を制定し、これらを明示した価値観カードを全社員に配布するなど、経営理念への共感を促す活動を推進していった。
同社の改革は、経営企画と人事が一体となることで成果を創出している特徴がある。全社員参加型ワークショップを通じた風土醸成や自社の目指すべき方向の策定は、経営企画が主体となり取り組んだものだ。これと同時に実施したのが、人事主体で取り組んだ「働きやすさ」「働きがい」の醸成だった。
「働きやすさ」の促進の目的は、多様な人材が活躍できる「場」づくりである。そこで、働く場所としてのオフィスの改善、社員の健康管理を戦略的に行う健康経営の実践、福利厚生の拡充、柔軟なワークスタイルの確立などに取り組んでいった。
「働きやすいオフィス創出や各種支援制度、福利厚生の充実への取り組みは、目に見えやすいのが特徴。経営サイドの働き方改革に対する意思を伝える意味もあり、これらの改善から取り掛かりました」(蒲原氏)
その一環として2020年1月、東京の東中野オフィスに「MKI LOUNGE」を開設した。同スペースは対面のコミュニケーション、部門や会社の壁を越えたオープン・コラボレーションが生まれやすい設計で、業務の特性に応じて使い分けられる複数の空間で構成される。
もともと社員食堂だったスペースを、自宅やカフェのようにくつろぐことのできる空間へ一新。終業後にアルコールやソフトドリンクを自由に飲める社内カフェ&バー「TSUDOI-CAFE」も備えており、部門の枠を超えてタテ・ヨコ・ナナメの関係を築く場として活用されている。
オフィスの整備とともに、働きやすい制度の導入にも早い段階から取り組んできた。
「社員が人生を健康で楽しく過ごせるようライフ&ワークバランスを意識し、時間外勤務の削減に取り組んできました。また、社員がより高いパフォーマンスを発揮できるよう、テレワークやサテライトオフィスを導入しています。
早くから制度を整えていたため、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年もスムーズにテレワークを行うことができました。コロナ禍が収束した現在も社員の約4割がリモート勤務しています。
このほか、フレックスタイム勤務制度や短時間勤務、社外副業制度や、仕事と育児・介護との両立を図れる支援制度の導入・整備に取り組んできました」
「働きやすさ」促進のための具体的な施策についてそう説明するのは、人事総務統括本部グループ人材開発部キャリア推進室室長の山田美夏氏である。
オープン・コラボレーションな環境を目指した空間「MKI LOUNGE」として2020年1月、東中野オフィス9階をリニューアルオープン。人が自然と集うことで、対面コミュニケーションの活性化や組織の一体感の醸成につなげている