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モデル企業

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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.09.02

「日本一予約が取れない工場見学」で組織づくり×ファンづくり

島田電機製作所

「全員広報」で経営マインドを醸成

 

オープンマインドな同社の姿勢を社内外に発信しているのが、企画部総務グループ(兼)経営企画ブランディング主任の小倉心愛こころ氏だ。

 

もともとはホテル業界への就職を目指していて、製造業も広報職もまったく視野に入っていなかったという小倉氏だが、コロナ禍でホテル業界の採用が止まっていた時期に、紹介会社から島田電機製作所を勧められた。

 

「見たことも聞いたこともなかったので、どちらかと言えばマイナスイメージを抱いたまま会社説明会に足を運びました。でも、島田が私たちを学生としてではなく1人の人間として見てくれていることがしっかりと伝わってきたのです。今取り組んでいること、成し遂げたいこと、その理由などを明確に語られていて、『この人と働きたい!』と強く思いました」(小倉氏)

 

当初は営業職を志望していたが、配属先は企画部。インナーブランディングの一環として2020年に設置した「1000のボタン」が話題を呼んでおり、当時はすでにさまざまなメディアの取材が入っていた。右も左も分からない中、取材の受け答えをすることになった小倉氏は次のように語る。

 

「勉強が苦手なので、広報について特別に学ぶことはしていませんでした(笑)。実際にやってみて感じたことを大切に、出てきた疑問や改善点を一つずつクリアしていく。その繰り返しです」

 

これまで300近くのメディアからの取材対応を行ってきた同社だが、特に心掛けていたのは、「メディアには全面的に協力すること」だという。

 

「世の中の関心事に最も高いアンテナを張っているのがメディアの方々だと思います。取材テーマは主に『組織づくり』『工場見学』が多いので、当社の企業姿勢が伝わるように、クレド(行動指針)やブランドブック、プロブックなど、さまざまな資料を準備しています」(小倉氏)

 

「ブランドとは“自分たちらしさ”にほかなりません。どのような会社に見られたいのか。自分たちの姿勢を、自分たちの言葉で語ることが大切だと考えています。その起点はやはり経営者の価値観です。経営者と広報の距離が近くなければ、熱量を持って企業姿勢を伝えていくことはできないでしょう。当社の場合、ブランディング業務は社長直下です」(島田氏)

 

2022年8月、同社は「日本一予約が取れない工場見学」と紹介されるまでになった1000のボタンを大規模リニューアル。そのころから「全員広報」の体制を採り、全部署からの有志が交代で工場見学者のアテンダーを務めるようになった。

 

「北海道から沖縄県まで全国から来訪されます。広報を経験すると、世の中に目が開かれ、会社に起きている全てのことが『自分事』になる。目の前の納期や課題に追われているだけでは分からなかった、多くのことが見えてきます」(島田氏)

 

現在は全社員の約6割がアテンダーとして活動しているという。

 

 

広報活動は世の中のバロメーター

 

2024年7月、見学施設をさらにアップデートし、「押す」をテーマにした遊び空間「OSEBA(オセバ)」をオープン。大人気の「1000のボタン」に加えて、30秒早押しに挑戦する「333ハートビートボタン」など、子どもも大人も楽しめる遊びの空間を本社内に整備した。来場者を歓迎する島田電機製作所のものづくり・組織づくりの発信は大好評を博し、オンラインでの事前予約枠は即完売。9月までの3カ月間、すでに4000人以上の予約で埋まっているという。

 

小倉氏は、「当社では社員のみんなが広報活動をサポートしてくれます。来客前に気付いた人がエアコンや照明を付けておいてくれたり、機械を動かしてくれたり、全ての来場者をおもてなしする心にあふれていて、本当にありがたいです」と喜びを語る。

 

「中小企業だからこそできる広報活動があると思います。売上高や従業員数などの伸び率だけが評価の指標ではありません。企業姿勢を軸に、日本の中小企業がもっと多様に発信したら、ポジティブな変化を起こせるのではないでしょうか」(島田氏)

 

一新されたコーポレートサイトに仕掛けられた「ハートビートボタン」を押すと、画面は社員の言葉で埋め尽くされる。「全員主役経営」「ユニークでマニアック」「働くとは人を喜ばせること」「ニュースの多い会社でありたい」「ボタンを押せば何かが変わる」。創業100周年に向けて、同社で働く“島田人”のハートビートは、さらなる高まりを響かせている。

 


島田電機製作所 企画部 総務グループ(兼) 経営企画 ブランディング主任 小倉 心愛氏(左)。代表取締役社長 島田 正孝氏(右)。「押す」をテーマにした遊び空間「OSEBA(オセバ)」で撮影

 



「ハートビートボタン」。
島田製作所のホームページに設置されてあり、押すことでさまざまな仕掛けを見ることができる

 

 

(株)島田電機製作所

  • 所在地 : 東京都八王子市大和田町3-11-1
  • 創業 : 1933年
  • 代表者 : 代表取締役社長 島田 正孝
  • 売上高 : 13億3000万円(2024年7月期)
  • 従業員数 : 55名