メインビジュアルの画像
モデル企業

モデル企業

【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.09.01

ブランディングを通して漢方をより身近な存在へ

クラシエ薬品

漢方に親しみの薄い消費者にも受け入れられやすいPRビジュアルで訴求
パッケージを一新し、親しみやすく。「何に効くか」を大きく表示しているのも大きな特徴の「漢方セラピー」

漢方に親しみの薄い消費者にも受け入れられやすいPRビジュアルで訴求(上)
パッケージを一新し、親しみやすく。「何に効くか」を大きく表示しているのも大きな特徴の「漢方セラピー」(下)

 

 

国内における一般用漢方薬市場において、トップを走ってきたクラシエ薬品。2021年に漢方事業ブランド「クラシエの漢方」を大幅にリニューアルし、一人一人の体質や暮らしに寄り添う存在へブランド価値を高めている。

 

 

漢方薬市場をけん引するリーディングカンパニー

 

漢方薬市場が拡大を続けている。国内における一般用漢方薬の市場規模は、2019年の587億円から2023年には708億円へと拡大。医療用漢方薬についても2018年の1518億円から2022年には1812億円へ成長し、一般用、医療用ともに約20%という高い伸び率となっている(クラシエ薬品調べ)。

 

背景として挙げられるのは、健康志向の高まりや超高齢化、自然由来の食品や医薬品への関心の広がりなどである。さらに、漢方薬の改良やメディアへの露出など情報量の増加によって、ともすれば「難しい」「飲みにくい」「何となく怪しい」と敬遠されがちだったイメージが変わりつつあることが、市場の急速な拡大を後押ししている。

 

そうした流れに大きく貢献しているのが、半世紀にわたって漢方薬事業を展開しているクラシエ薬品だ。「葛根湯」や「コッコアポ」といったロングセラー商品を持ち、国内における一般用漢方薬市場では常にトップシェアを走ってきた。

 

また、医療用についても国内シェア2位と、名実ともに国内漢方薬市場をけん引する存在だ。

 

これまでも、飲みにくさを軽減する錠剤タイプや、1日3回が基本とされた服用回数を業界で初めて1日2回にする「KB2スティック」を開発するなど、同社は独自技術を生かして画期的な漢方薬を世に送り出してきた。こうした商品開発とともに、漢方人口の増加に向けて同社が注力してきたのがブランディングである。

 

 

親しみやすいブランディングで漢方の新規需要を開拓

 

例えば、商品パッケージを参照いただきたい(26ページ)。漢方薬は従来、漢方薬名が大きく表記されていたデザインが主流だったが、効き目のある症状を全面に打ち出した商品ブランド「漢方セラピー」シリーズを2006年に発売。「のどのつかえ感、不安神経症に」「むくみ、飲みすぎによる二日酔いに」といったように、どんな症状に効くのかを分かりやすくパッケージに明記した。

 

漢方初心者にとって選びやすいデザインも相まって、漢方セラピーは発売以来、右肩上がりで市場規模を拡大。2017年に30億円だったシリーズ売上高は、2022年に66億円と5年間で2倍以上の急成長を遂げている。

 

数々の商品ブランドを確立してきたクラシエ薬品だが、さらなるブランド価値の向上を目指して2021年に着手したのが、漢方事業ブランド「クラシエの漢方」のリニューアルだ。その意図について、企画部主任の井内舞氏は次のように話す。

 

「漢方薬市場が伸びている中、クラシエの漢方薬をさらに伸ばしていきたいと思っています。一般用漢方薬の『葛根湯』は知名度が高く多くの方に知っていただいていますが、当社は医療用漢方薬でも国内シェア2位の実績があります。一般用と医療用の両方を取り扱いながら、お客さまの健康に広く貢献していることを、しっかりと伝えていきたいという思いがありました」

 

その実現に向けて、新たに打ち出したのが「日本を生きるあなたへ。」というブランドスローガンだ。日本の文化・生活習慣の中で暮らす患者や顧客を真摯に見つめながら伴走し、支えていきたいという思いを込めた。また、同時にブランドロゴを一新。医療用分野と一般用分野の両方で高いシェアを持っているからこそ、より多くの人に使ってもらい、その一人一人の体質や暮らしに寄り添うことができる。医療用と一般用の連携を強化することで、クラシエの漢方として全方位で健康価値を提供していく姿勢を打ち出しているのだ。

 

そうした姿勢がはっきりと表れているのが、コーポレートブランドであるクラシエの漢方のウェブサイトである。これまで同社では、各商品ブランドや分野ごとに漢方に関するコンテンツを発信していたが、リニューアルを機に、クラシエの漢方の傘下に各種コンテンツを納める構成としたことで、同サイトから漢方に関するあらゆる情報にアクセスできる環境を整備。併せて、一般消費者向けの情報だけでなく企業・医療関係者向けの情報もひも付けることで、医療用分野でも多様な製品を展開していることが伝わりやすくなった。

 

商品ブランドとコーポレートブランドをひも付けていく。そこに至った経緯を、マーケティング部課長の砂橋久瑠実氏は次のように話す。

 

「リニューアル以前は、コーポレートブランドの認知がかなり希薄でした。例えば、漢方セラピーという商品名は知られているのに、それがクラシエの商品であるとひも付いていなかったり、『Kampoful Life(カンポフルライフ)』という漢方に関する情報が豊富なオウンドメディアがあるものの、どこが運営しているのか知られていなかったり。一方で、クラシエという社名は、『いち髪』や『ねるねるねるね』といった商品を通して暮らしの中に浸透している状態でした。

 

そこで2021年に、あらためて漢方薬事業から生まれている価値をクラシエと関連付け、さらに、これまで蓄積されてきた漢方薬事業のブランド資産を個々の製品ブランドと結び付けて、ブランド価値を循環させていこうと取り組みました」