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コンサルティングケース
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TCGのクライアントが持続的成長に向け実践している取り組みをご紹介します。
コンサルティングケース 2024.08.29

全員活躍&収益向上を実現する協同流ビジョンの描き方 協同

お話を伺った人


株式会社協同
代表取締役社長 西川 源徳 氏

 

ポイント


1 全社員参加型のプロジェクトでビジョンを策定
2 説明会、VISION BOOKなどを通じて社内理解を促す
3 収益、意識が改善し、目標数値を前倒しで達成

 

 

 

 

ウェアの価値・性能を高めるパートナー

 

――学生服のワッペンや織ネーム、スーツやシャツの裏地タグ、ジーンズの皮パッチなど、アパレル副資材のトータルメーカーで業界トップシェアの協同様。緻密な織りと立体感の刺繍で仕上げる美しさと耐久性を兼ね備える、独自の商品開発力と徹底した品質管理の「SoBaNi」ブランドは、高い信頼と実績を築いています。

西川社長はかねてより「人を大切にする」経営を継続されてきましたが、2018年から収益性改善、全社員の活躍を目指す「ビジョン策定・推進」5カ年プロジェクトを始動し、タナベコンサルティングが支援しました。

 

西川社長:当社は、アパレル業界で「付属屋」と呼ばれる縫製副資材メーカーで、商品企画・デザイン・プランニング・製造卸を一貫して手がけています。中学校・高校制服のワッペンやボタン、バッジやセーラーラインなど、学校制服メーカーのお客様が売上高の50%を占めます。

 

創業者である父から2009年に事業承継しましたが、当時は2期連続赤字で3期目も赤字かもしれない、という状況でした。課題は利益率が低いこと。もう一つ、いいお客様と安定的に取引があるという過去の成功体験から、社員に危機感がないことです。先代が売上以外の数字はオープンにしてこなかったこともあり、幹部や社員は「売上があればそれでいい」と、利益や他の数字に関心がありませんでした。

 

――社員の意識を高め、収益性改善、事業・組織レベルの向上を図るため、コンサルタントを交えて中期ビジョンの策定・推進に取り組むことになりました。

 

西川社長:社員は現状のままでいいと考え、変えないといけないと思う社長の私も、どう変えたらいいかわからない。社内はそんな状態でしたし、外部環境も今後、少子化で学生服の需要は減少し続けます。このままではダメだ、目指す姿を明確につくりたいと、取引銀行の紹介をきっかけに、初めてコンサルティング支援を受けました。

当初は業務改善のためのコンサルのつもりで複数社から提案を受けており、そのうちの1社と契約するつもりでした。その際、タナベコンサルティングの方から話を聞き、業務改善の前にビジョンを掲げる大切さを学びました。

 

現状の課題を見える化し、ありたい未来像のビジョンと、経営計画の事業・収益・組織戦略コンセプトを策定すること。さらに、その実現プロセスとして、社内プロジェクト参画型の課題解決アクションと経営システムを確立すること。持続的成長に向け、2本立てでプロジェクトを推進することになりました。

 


学生服等の副資材を展開する協同。高い品質と実績があり、顧客の信頼は厚い

 

 

シンプルなメッセージで分かりやすいビジョンを発信

 

――ビジョンプロジェクトは西川社長をリーダーに、9人のメンバーで構成しました。

 

西川社長:社長の私と、営業・商品管理・経営管理・財務の各担当部長の経営幹部4人、それに社員代表の4人です。PJメンバーとコンサルタントが一緒になって全拠点を回り、全社員と対話してくれました。

 

定性的な事業戦略として「ブランド価値創造企業」、定量的な収益構造として「売上高20億円、経営上利益率8%」をビジョンに定めました。重視したのは「わかりやすさ」です。

 

わかりやすくなければ、社員一人ひとりに浸透しません。「ブランド価値創造」とは、お客様のアパレルメーカーとエンドユーザの消費者、それぞれのブランド価値を高めるために、言われた通りにやるだけなく積極的に提案していくということ。その変化は、自社の経営・収益力を高めることにもつながります。

 

戦略コンセプトの基軸は「既存事業4カテゴリー×4戦略」です。大黒柱の「スクール」と「カジュアル」「ユニフォーム」「商社」、顧客別の4つの事業カテゴリーに対して、取り扱い商材の拡充、印字による物流の付加価値強化、顧客のデザイン機能支援など4つの戦略を掛け合わせることで、売上高2億円アップを目指しました。「4×4」は、顧客特性で絞り込む「ニーズ特化型カテゴリー別戦略」です。

 

この戦略コンセプトの策定にあたり、タナベコンサルティングの担当者にかなり相談させていただきました。いつでも真摯にご対応いただき、本当に当社のことを考えてくださっているのだな、と感じました。

 

――社員への浸透を図るために工夫されたことについてお聞かせください。

 

西川社長:社員にわかりやすく伝えるために「VISION BOOK」を配布し、ビジョン発表会も開催しました。全拠点でコンサルタントと一緒に、全社員に直接、PJの推進がなぜ必要なのか、どんな自社像を目指すのか、を説明しました。

 

VISION BOOKには、経営理念、方針、行動指針もあわせて策定し、掲載しています。その際、タナベコンサルティングには当社の考えと近い企業を紹介いただき、アドバイスを頂くこともできて、大変ありがたかったです。

 

ビジネスモデルの優位性や市場の成長性、お客様の変化、事業・収益・組織・経営構造の現状分析と課題も、オープンにしました。そのうえで、IT技術・社会の進歩、少子高齢化や物流コスト・人件費の高騰など、すべてが変わりゆく中、現状維持のままでは生き残れないこと。社会的に責任ある企業として永続しながら、給与や自己成長、職場の環境を改善し「社員が幸せになるいい会社」になることを理解してもらいました。

 

 



策定したビジョンを社員にわかりやすく伝えるために「VISION BOOK」を配布。
全拠点を回り、全社員に説明したという

 

 

ビジョン策定・実行のプロセスで全社員を巻き込む

 

――ビジョンを実行するためのプロセスについて教えてください。

 

西川社長:策定したビジョン・経営計画を実現する具体策を実行するため、テーマ別に様々なPJが始動しました。

 

チーム解決型でより大きなシナジーを発揮し、成果を高めるため、1期目は「付加価値強化」「生産性向上」「デザイン事業の外販化」など8つの重点テーマを決めてチーム別に編成し、準社員(パート)まで全員がプロジェクトに携わるようにしました。

 

部門や役職に関わらず議論し合い、チームで支え合ってゴールを目指す。まずは会社全体でプロジェクトを進める風土を創り出し、2期目以降はテーマを絞って成果にもこだわる手法で進めていきました。

 

――進捗管理も徹底されていました。

 

西川社長:各チーム(テーマ)の進捗状況を毎月、「○」(できている)「×」(できていない)形式で確認し、次月までに何をするかも明確化しました。

 

2ヵ月連続で「×」になると、やろうとしてもできないことをテーマに掲げているのか、それともやっていないのかを判断し、継続的に成果目標や具体策を見直しました。それまでの当社は、目標の立て方も評価もあいまいでした。進捗や評価、確認ができないと、良いか悪いかもわからず判断のしようもなかったですから、大きな変化でしたね。

 

印象深いのは「成功するためにやることと、失敗を防ぐためにすることは違う」とのアドバイスです。ビジョンや経営計画は成功するために目標やテーマを掲げますが、失敗するとしたら何か、それを防ぐには何が必要かも明確にすることが、いまの当社には大事なポイントだと言われて、視野が広がって視座も高まりました。

 

 

業績・コスト意識を高め、全社員が活躍する「みんなの会社」に

 

――中期ビジョン推進による成果についてお聞かせください。

 

西川社長:着実なプロジェクト推進で2023年9月期、売上高は約22億円、経常利益率8.5%を成し遂げました。

 

PJキックオフ時、売上高16億円、経常利益率4.4%からの大きな成長です。スクール事業は1着の制服の付属アイテムを増やす提案が実り、物流管理も追加注文の送料自社負担を改善するだけで利益率が1%向上しました。

 

また、プロジェクト発足時32%だった限界利益は今期38%前後の着地見込であり、想定以上の改善につながっています。

 

成果はそれだけではなく、利益や在庫、原価などの「業績意識」が高まりました。幹部の会話に「将来」「今後」という未来志向の言葉が増え、社員も数字を読み取りムダをなくす意識が向上し、利益が生まれやすい体質に変わりました。やればやるほど成果もモチベーションも上がるので、社内全体の風土が明るくなり、やりがいを実感できる環境になっています。

 

私自身も変わりました。「みなさんのおかげで…」と繰り返すようになり、従来以上に人を大切にする経営になっています。新たに「協同憲章」も定め、経営・業績・組織づくり、日々の仕事の考え方、行動指針などをわかりやすく明文化しました。

 

 


瀬戸内海の見える屋上スペース。働きやすい環境整備や福利厚生にも力を入れている

 

 

――コンサルティング支援への評価や期待を教えてください。

 

西川社長:担当コンサルタントは、社長である私と、現場の社員、それぞれの声を代弁して、互いに届け合う架け橋になってくれました。どんどん影響力と親近感が高まって、次々にいろんな声が集まるようになりました。

 

プロジェクトは人材育成の良い機会にもなりました。目標を達成した時は、すぐに連絡して感謝の想いを伝えました。一体感と熱意あるサポートを、これからも期待しています。

 

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

 

西川社長:お客様の感動、仲間の感謝、お客様と仲間の信頼のそばに、という「3つのSoBaNi」を揺るぎない指針に、地域貢献も含めいろんな意味で「みんなの会社」にしていきたいですね。いまは1社で売上高20億円超ですが、売上高2億円の会社を10つくってグループで20億円、でもいいんです。みんなで会社をつくり、みんなが幸せになる、みんなの会社。そんな「SoBaNi」グループになって、ブランド価値を高め続けるプロ集団を目指していきます。

 

――タナベコンサルティングはこれからも、協同様の持続的な成長と幸せづくりを力強く支援してまいります。本日はありがとうございました。

 

 


「3つのSoBaNi」を揺るぎない指針に、みんなが幸せになる「みんなの会社」を目指す

 

 

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社協同
    • URL:https://www.kwl.co.jp/
    • 所在地:〒711-0906 岡山県倉敷市児島下の町9丁目12番コ2号
    • 設立:1964年
    • 従業員数:99名(正社員50名、2022年9月末時点)
    • 代表者:代表取締役社長 西川 源徳 氏

※掲載している内容は2024年8月当時のものです。