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モデル企業

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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.08.01

「ビジョンとともに働く」企業文化

中川政七商店

ビジョン・ベクトル・スタンスの共感価値が問われる時代

 

ビジョンを実現しながら持続的な成長を遂げていくビジョンファースト経営の成功メソッドは、事業継承時にも大きなよりどころになった。

 

2018年には千石あや氏が、創業家以外で初めて代表取締役社長に就任。バトンを託す中川氏が決断したのも、受け継ぐ千石氏が覚悟を決めたのも、ビジョンが揺るがぬ指針となった。

 

伝統工芸産業の経営再生支援においても、ビジョンとともに変革することが成功への鍵となり、すでに十数社が再生を遂げている。創業100年を超える天然醸造しょう油メーカーでは、こうじのスペシャリストとして醸造文化を人々の生活に浸透させることを目指すビジョン策定と、こうじを基軸にしたブランディングを支援。全国的な「発酵食品ブーム」に流されることなく、ビジョンを体現する商品開発とブランド化で、その価値を消費者に届けることにより、さらなる100年の道づくりが始まっている。倒産寸前だった老舗窯元の陶磁器メーカーも、産地の名を冠したブランディング支援で、地域の知名度も高める優良企業へと劇的な再生を遂げた。

 

ブランディングで大切なのは、差別化と一定の方向性を持つことである。その整合性を保つことで飛躍を可能にするビジョンドリブンの成功事例は、具体的なエピソードとして中川政七商店の社員が納得と共感を高める力にもなっている。

 

求職者が急増し、優良企業から中川政七商店への転職希望者が相次ぐようになったことも成果の1つだ。採用では、経験やスキル以上に、「こころば」に共感できる人材を重視し、入社後も評価面談や社内公募制など新たな人事制度を導入。社員の誰もが「その気」になる仕組みづくりが、着実な人材の成長と全社のレベルアップにつながっている。

 

「コロナ禍を経た生活は、ライフスタイルに合う商品選びやコト消費の体験価値の時代から、その背景にある共感できる価値観や持続可能性を重視するライフスタンスの時代へと変わり始めている」と、中川氏は著書『奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり』(日経BP)の中で語っている。

 

企業にとって、ビジョンとベクトル、そしてスタンス(姿勢)がより厳しく顧客から問われるからこそ、それぞれを明確に示して行動を起こし、共感を高める価値を提供することが重要になり、企業の強みとなっていく。

 

中川政七商店は、一度途絶えると再現が難しく取り戻せない伝統工芸の産地や技術、職人を守り、次なる100年につなげる使命を目指すビジョンとして明確に掲げている。そして、その実現ベクトルを合わせ、ふさわしい行動スタンスを具体化することで、全社を挙げて共感価値を創り、高め続けている。

 

内なるビジョンの浸透と、伴走する行動、外なるビジョンを訴求し、共感が生まれるライフスタンスアクション。どちらも未来へと続く道づくりに不可欠である。

 

 

(株)中川政七商店

  • 所在地 : 奈良県奈良市東九条町1112-1
  • 創業 : 1716年
  • 代表者 : 代表取締役社長 千石 あや