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DX戦略の壁

デジタルによる業務効率化は達成したものの、商品・サービスの価値創造に生かしきれていない。そんな課題を持つ企業は、データ(もしくは情報資産)の一元化、分析および活用を戦略的に描くことで競争優位を生み出すことができる。付加価値を高める手段としてのDX戦略と、戦略策定において押さえるべき実践ポイントを提言する。
その他 2024.05.01

戦略的マーケティングDXで企業の付加価値を高める

リーディング・ソリューション

戦略的マーケティングDXで企業の付加価値を高める:リーディング・ソリューション

 

 

コロナ禍を機に一挙に普及が進んだBtoBデジタルマーケティング。
しかし、明確な戦略と体制づくりが伴わないと継続的な成果は期待できない。
成功するデジタルマーケティングのポイントとは何かを、リーディング・ソリューション代表取締役・中田義将氏に聞いた。

 

デジタルマーケティングの力で「新規開拓」を加速

 

ここ数年、BtoBにおいても多くの企業で導入されるようになったデジタルマーケティング。短期間で浸透した背景には2つの環境変化がある。1つはコロナ禍でリアルな接触ができず、買い手企業の情報収集のオンライン化が一気に加速した点。もう1つは、社会に出た時にITが一般化していたミレニアム世代が社内で決裁権を持ち始めており、インターネットでの情報収集が好まれる点だ。

 

昨今は状況がさらに進み、問い合わせやダウンロード数ではなく、いくらの売り上げにつながったかという「投資対効果」が成果として求められるように変容してきている。

 

デジタルマーケティングの取り組みが成果を生み出し、成功する企業とそうでない企業の差はどこにあるのだろうか。2004年にリーディング・ソリューションを設立し、上場企業を中心にデジタルマーケティング支援を多数実施してきた代表取締役の中田義将氏は、「自社の強みや商品の特徴に合致した施策が打てていれば、新規開拓は加速する」と言う。

 

特に成果の出やすいケースの1つが、営業力が強い企業のデジタルマーケティング活用である。

 

ウェブサイトに来訪した見込み客のうち、個人情報入力などを通じCV(コンバージョン)を獲得できる割合は1%前後でしかない。つまり、99%は問い合わせなどをせずウェブサイトから離脱しており、それらのアクセス情報はマーケティングに活用されることはない。

 

そこで同社では、IPアドレスからウェブサイトへの来訪企業や閲覧履歴を特定。その中から自社や自社商品に興味のある企業に絞り、電話やDMなどでプッシュアプローチを行う。匿名見込み客を可視化することで、リーチする母数を増やすことが可能になる。

 

強い営業力と同様、デジタルマーケティングと相性の良いのが成長期商材である(【図表1】)。成長期商材は世の中に浸透しきっていない商品・サービスのため、情報収集のためにインターネットが活用されることが多い。そのため、検索ボリュームも多くなる。

 

【図表1】ライフサイクルとデジタルマーケティング
【図表1】ライフサイクルとデジタルマーケティング
出所 : タナベコンサルティング主催「DXフォーラム2024」(2024年1月)講演資料より作成

 

また、成長期は自ら情報収集し、判断する「アーリーアダプター(早期採用者)」の動きが活発である。そこで重要になるのが、見込み客へのリーチだ。

 

この段階では検索ユーザーへのリーチをいかに高め、自社や自社商品を知ってもらうか、または学習ニーズに応える情報発信ができるかどうかがポイントになる。

 

「成長期は『キーワード戦略』が重要になります。さまざまな検索をしながら情報収集する見込み客の検索行動中に、何度もウェブサイトが表示され、来訪してもらえるようにすることで、見込み客の信頼を獲得します。そのためには、自社保有コンテンツからではなく、検索キーワードからウェブサイトを作ることがポイントになります」

 

一方、成熟市場商材のデジタルマーケティングでは、成長期と比較すると買い手の情報感度が低く、慎重な行動を取る傾向のある層がマジョリティーとなる。成熟市場の買い手は、社内説明が必要だったり、責任のある立場にいる人が多かったりすることが背景にある。

 

有効な手段は「実績」や「事例」を訴求することで信頼を勝ち取ること。加えて「業種別」「課題別」といったように、発信情報を細分化することで購入を促す仕掛けがポイントとなっている。

 

高額商材のデジタルマーケティングも、買い手が極めて慎重な行動を取るのが特徴だ。どれだけウェブサイトやコンテンツを作り込んでも、広告や検索で知った初見の会社に問い合わせて、すぐに購入することはほとんどない。

 

あらかじめ何らかの関係がある、もともと知っているなどの「認知」が非常に重要である。それとともに、「専門性」「知見」が問われるため、顧客接点の量を確保し、「信頼できる」「よく知っている」相手に位置付けられることが欠かせない。