広島県は、成長が早く、木材としての質も良いコウヨウザン(広葉杉)の普及に取り組んでいる。
植栽は人力での作業がほとんどであり、作業の効率化に向けドローンを使った苗木運搬の実証や普及に取り組むなど、DXの活用を積極的に推進している。
研修でのグループディスカッション
写真提供:広島県
—— 開始から4年目になる2023年度には、ビジョン・戦略の実践を重視して「人材の採用・育成、DX活用」中心のカリキュラムにブラッシュアップしました。
小谷 経営戦略を絵に描いた餅にしないために、個別の課題を掘り下げ、より実践的に解決につなげていく内容へアップデートしてはどうかと、タナベコンサルティングから提案をいただきました。実践には人材が不可欠ですし、その確保(採用)と育成が経営力の高い林業経営体の実現につながります。
酒井 新カリキュラムは、実務レベルのことが分かりやすいと好評です。例えば採用では、ハローワークへの求人票の書き方のコツや表現テクニックを具体的に指導いただきました。その通りに求人票をつくって人材確保に取り組んだ林業経営体から「とても役立って、ありがたい研修」との声が届いています。
小谷 DXについても、新たに研修テーマへ取り入れました。時流や外部環境の変化にアジャストできるか、対応力を高めることも、持続的な林業経営には必要ですから。
林業の現場では、ドローンを活用した森林情報の把握など「スマート林業」が進んでいます。さらに、 RPA (デスクワークの自動化技術)などの先端技術を知り、苦手意識を取り去ることから始めて、他業界の先進事例も学びながら、経営全体で DX を推進し、課題解決に役立てていけるようになることが目標です。
酒井 林業に限らず、多くの産業で人材の確保が厳しさを増す中で、現場作業だけでなく経営的な視点からもICT 化を進めることが重要になっていきます。人でなければできないことに人材を投入すること。DX をどのように活用すれば利益につながるかを考えること。そうした意識を高めてもらうことから始めています。
—— 林業経営体と業界全体の成長の支援へ、さらなる展望をお聞かせください。
酒井 持続的な林業経営や森林資源の循環利用について、中長期的な視点に立って考え、理解を深めて、当たり前の共通語にしていく。そして、確実に実践することで、経営も業界も発展し元気になっていく。そんな姿が広島県の林業のスタンダードになることを理想としています。
現にその理想への兆しを感じています。私は人材育成関係の研修講師も務めていますが、「次世代林業経営者研修」を受講した林業経営体の若手社員から「私も経営のことを学びたい」と相談を受けました。持続的な林業経営や森林資源の循環利用の重要さが、若い世代にも少しずつ浸透していると分かって本当にうれしかったです。
広島県 農林水産局 林業課 林業経営・技術担当監 小谷 美紀氏(左) 参事 酒井 将秀氏(右)
PROFILE
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