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地域プロデュース

高齢化や人口減少といった地域の課題を克服するには、地域産業に関わるさまざまなプレーヤーが連携し、ビジネスを創り、事業価値を高めて、地域経済を活性化させる必要がある。自律的で持続可能な地域社会の実現に向け、人と事業をつなぎ、育て、地域の未来を協創する取り組みを紹介する。
2024.02.01

経営視点で、農業法人の抱える多様な課題をサポート:宮城県


「デリシャストマト」の生産、加工品の生産や販売を手掛けるデリシャスファームは、今回の支援事業における個別支援先のうちの1社。カフェ事業のオペレーション改善、クラウドファンディング、自社ECサイトを活用した新商品の販売などを実施し、事業成長につなげている

6次産業化を進め、息の長い「なりわい」の創出を目指す

 

—— 宮城県では、2021年度より「みやぎ6次産業化推進プラン」を策定し、生産から加工や販売まで手掛ける農林水産業の6次化に取り組まれています。宮城県は6次産業化・地産地消法に基づいて農林水産大臣が認定する「総合化事業計画」の認定件数が82件で全国10位、東北地方では1位ですが、目標値などは設定されていますか。

 

八木 宮城県は「みやぎ食と農の県民条例基本計画」に基づき、食に関するさまざまな計画や目標を立てています。6次産業化の規模や付加価値をどう計るかは難しいところですが、1つの指標としているのが、国で調査している6次産業化総合調査の農業生産関連事業の年間販売額です。2025年度までに340億円まで伸ばすという目標を立て、それに向けさまざまな支援を実施しています。

 

—— 宮城県は水産物や畜産物、コメなどの農産品に恵まれており、「食材の宝庫」と言っても過言ではありません。そうした中で6次産業化を推進される背景についてお聞かせください。

 

八木 6次産業化の支援については、かなり長期にわたって取り組んできました。そもそも、農家が農産物をつくって販売するだけではなかなか所得が上がりません。その打開策の1つが6次産業化です。宮城県は農家の所得を少しでも上げるため、さまざまな支援を行っています。

 

—— 6次産業化の現状や支援内容についてお聞かせください。

 

八木 「6次産業化」と一言で言っても、事業者によって規模やステージは多様です。そもそも6次産業化には狭義と広義の定義があり、もともとは農家が生産から加工、販売まで一体で手掛けるものをそう呼んでいました。

 

しかし、最近は国もより広く捉えるようになっており、いわゆる農商工連携で、商工業者と連携して商品開発したり、既存のECサイトを活用して販売したりするケースも含まれるようになっています。そうした中、宮城県では、商品開発のサポートや食品衛生法対応への支援、あるいは今回(2022年11月~2023年3月)タナベコンサルティングに支援いただいたような経営改善、商品開発や販路開拓など、さまざまな課題に合わせた事業を展開しています。

 

 

参加者が自らの経営課題と向き合い、経営視点を養う機会に

 

—— タナベコンサルティングは、宮城県農政部と一緒に2022年度「みやぎ6次産業化リノベーション支援事業」を実施しました。すでに6次産業化に取り組んでいる4事業者を対象に販売強化を目指す支援事業でしたが、商品開発や販売促進に関する課題はどこにあったのでしょうか。

 

八木 新たな視点で売れる商品を開発したり、販路を開拓したりしていく機会をつくりたいと考え、この支援事業を企画しました。農家さんはこれまで、農作物をつくって売ることに専念してきました。毎日、おいしいもの、良いものをつくろうと真摯に取り組まれる半面、消費者や売り先を見据えた商品開発に関しては、工夫や改良の余地がありました。

 

具体的には、商品開発や販売促進をする際、「売れ筋の商品は何か」「世の中に何が必要とされているか」といったマーケットインの発想が必要です。しかし、これまで農家はそうしたノウハウを持ち合わせておらず、プロダクトアウト的な商品開発に偏っていることが課題だと感じていました。

 

—— 売れる商品を作る上で、ニーズとのマッチングは非常に重要なポイントです。今回、候補企業の中からタナベコンサルティングをパートナーとしてお選びいただいた理由をお聞かせください。

 

八木 みやぎ6次産業化リノベーション支援事業は、2021年度の事業スタート時にコロナ禍となっており、厚生労働省が公表した「新しい生活様式」に対応する商品開発やECサイトを使った販路拡大といった事業者の課題解決を目的としていました。実際、県内の事業者も、2020年以降はお客さまの減少をはじめ、少なからずコロナ禍の影響を受けました。

 

選定に関しては、事業目的や期間、概要などを提示した上で事業運営を希望する企業に企画提案していただくプロポーザル方式を採用し、提案された研修や支援の内容、これまでの事業実績などを総合的に審査した結果、タナベコンサルティングが選定されました。

※ 2023年4月現在

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