多様性を認める以外に選択肢はない
「日本の少子化・人手不足は抜き差しならないレベルに到達し、多くの企業が追い詰められています。いやが応でも、若者とシニア世代の関係、家族の関係、都市と地方、教育、働き方など、あらゆるものがダイナミックに変わっていくでしょう」と、藤野氏は展望を語る。
そのような中、藤野氏はジェンダーギャップ指数が依然として最低レベルの日本をアップデートしていく試みの1つとして、女性の県外転出が超過している富山県に拠点を構え、地域の人と交流を深めながら、多様な働き方を可能とする多拠点生活や、オーダーメイドの社会システムを構築していくためのプロジェクトを推進している。
「2人目の出産を断念した理由として、『パートナーが育児に参加してくれない』と答える女性は少なくありません。しかし企業側は、男性の育児参加が増えるほど、さらに人手不足に陥ってしまうというジレンマも抱えている。この課題を根本的に解決していくためにも、テクノロジーの社会実装が不可欠なのです」(藤野氏)
しかし、ベテラン層がテクノロジーの活用に後ろ向きであれば、未来志向の若手社員を採用しても定着せずに離職してしまう。人事面ではバリュー評価でしっかりと差を付けることが重要で、それでもなお意識改革が進まない場合にはリストラも一手だという。採用面は、年収を理由にエントリーする人ではなく、「事業そのものが好きな人をどのように集められるかがポイントだ」と藤野氏は語る。
藤野氏は、未来志向の若者に支持される成長企業を、「Well-being(ウェルビーイング)を考える企業」と定義する。ウェルビーイングの探求に当たっては、伝統的な宗教観を超えて「人間の尊厳」を明文化したEU基本権憲章※4が多くの示唆に富んでいる。
「ウェルビーイングの出発点は個人です。一人一人の基本的人権が尊重されることを大前提として、家族・社会・国家がある。『基本的人権とは何か』『福祉とは何か』などの重要なテーマについても企業や行政がさまざまな観点から議論を深め、アップデートする時代を迎えているのではないでしょうか」(藤野氏)
一人一人の人生に寄り添い、社会全体に豊かさを還元していく。そのような志を貫ける公明正大な企業を応援することで「ファイナンシャル・インクルージョン(全ての人が金融の恩恵を受けられる社会)」を実現したいと藤野氏は未来を語る。
※1 オープンAIが開発した人工知能チャットボット(自動会話プログラム)
※2 知的・技術的な仕事や、事務・販売系の業務を行う従業員の総称
※3 ディスクロージャー(情報開示)の中でも、セキュリティーに関する考え方の1つで、「ぜい弱性のある全ての情報は一般に公表されていなければならない」という考え方
※4 2000年に公布された、欧州連合(EU)の市民や域内に居住する人々の政治・経済・社会的権利を定める文書
PROFILE
- レオス・キャピタルワークス(株)
- 所在地 : 東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内27F
- 設立 : 2003年
- 代表者 : 代表取締役会長兼社長 CEO&CIO 藤野 英人
- 売上高 : 96億6000万円(連結、2023年3月期)
- 従業員数 : 118名(2023年3月末時点)