組織に眠る人材情報をオープンにし、経営や現場と共有することで、組織の潜在能力を最大化する――。約10年にわたりタレントマネジメントシステムの仕組みを提供してきたカオナビに、人的資本経営推進のポイントを聞いた。
2012年にタレントマネジメントシステム事業を開始したカオナビ。その名が示す通り、社員の顔や名前、経験、評価、スキルや資格などの人事情報を一元管理して共有・可視化できるシステムを提供している。(【図表】)
【図表】「カオナビ」サービスのシステム
8年連続でシェアナンバーワン※1を誇る同社は、創業者である柳橋仁機氏が、「アナログな人事マネジメントから脱却し、情報を活用してこそ人事の活性化につながる」との思いで2008年に設立。「働き方改革」の波及、さらに近年のリスキリングやDXのニーズの高まりが追い風となり、現在約3000社※2が導入している。導入企業は大手から中小企業まで幅広く、その数は創業以来、右肩上がりだ。
カオナビでは、「人材情報の一元化・見える化」「人事業務の効率化」「経営の意思決定支援」「評価運用の効率化」「採用のミスマッチ・ハイパフォーマー分析」「人材配置・要員シミュレーション」「スキル管理・人材育成」「モチベーション分析・離職分析」「ES調査・エンゲージメント向上」という9つの領域の人材情報の管理をサポートする。
「人材に関する情報をダッシュボード上で集計し、グラフや表など一目で把握できる形式で表現しています。タレントマネジメントは企業により重視するポイントが異なるので、項目の変更や追加などが容易にできるよう、直感的で分かりやすいインターフェイスを採用しています。例えば、項目追加はドラッグ&ドロップで簡単に完了。こうした操作性やカスタマイズ性の高さが、多くの企業・ユーザーから評価されています」。そう語るのはカオナビのアカウント本部営業戦略部部長の髙岡森生氏だ。
実際、「社員情報を一元管理でき、業務スピードが向上した」など、業務効率化の効果を実感するユーザーは多い。また、人員配置などでも社員の得意分野や希望を生かすことができ、組織活性化や社員のモチベーション向上に効果があったとの声も多数ある。かつて、人事情報はその秘匿性の高さから、データや内容は共有されず、人事部しか閲覧できないものだった。それを「必要な人が、必要な情報を見ることができる」状態にしたことで、人事情報を経営に生かす「戦略人事」を可能にしたのである。
非財務情報の重要性が高まり、企業には人的資本経営や人的資本の情報開示が今まで以上に求められている。特に2023年3月期決算以降、有価証券報告書を発行する約4000社の大手企業において、人的資本情報の開示が義務化されたのは周知の通りだ。
こうした人的資本に関する情報開示に、カオナビのタレントマネジメントシステムが貢献できる部分は大きい。カオナビでは開示すべき情報を3段階に分類している。
第1ステップが、従業員の状況や多様性の3指標などの必須項目だ。
第2ステップは、ダイバーシティー(性別・年齢構成・国籍構成・障がい者比率)、働く環境(離職率・年間平均有給取得日数)、エンゲージメント(サーベイの結果)といった一般項目に関する指標である。
さらに第3ステップとして、スキル・経験(資格取得状況・外国語習得状況・副業比率)、組織文化(独立・起業比率、再入社者数、職種変更を伴う異動経験率など)といった独自項目を想定している。
カオナビでは2023年夏、こうした人的資本の情報開示に必要な項目をまとめて1つの画面に表示し、見える化できる、人的資本に対応したパッケージをリリース予定だ。
「カオナビ」内の情報から人材情報を見える化・集計し、さらに「カオナビ」にない情報もアップロードして集約できる仕様で、社内外への情報開示が簡単に行える。開示情報をモニタリングするダッシュボード機能により、社外・経営層といった関係者へ共有することで、タイムリーな意思決定が可能になる。内閣官房の非財務情報可視化研究会が「人的資本可視化指針」で提唱する7分野19項目や、ISO30414(人的資本の情報開示のガイドライン)の11領域58項目にも対応した内容という。
「『人事データが散在していて、組織状況の把握に時間がかかる』『外部への開示を想定していなかったため、データ加工の負担が大きい』など、2023年度からの情報開示に伴う企業の悩みに対し、「カオナビ」が貢献できることは多くあります。
人的資本経営が企業の競争力強化になるのは間違いありません。大切なのは、初年度から将来を見据え、どこまで開示していくのかというロードマップを作成しておくこと。情報開示の際には社内データを取得しなければなりませんから、その準備期間もスケジュールに組み込んで対応することが必要です。
また、人的資本の情報開示には、人事部門だけでなく、有価証券報告書を扱うIR部門、社外への情報発信を担う広報部門など、複数の部門間連携が必須になります。人材に関わるプロジェクトですから、やはり人事部門がイニシアティブを取り、推進していくことが適切だと思います」と、執行役員CPO(最高プロダクト責任者)の平松達矢氏は語る。
※1…ITR「ITR Market View:人材管理市場2023」人材管理市場:ベンダー別売上金額シェア(2015~2022年度予測)、SaaS型人材管理市場:ベンダー別売上金額推移およびシェア(2015~2022年度予測)
※2…2023年3月末時点