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【特集】

企業価値向上

人的資本など、非財務関連の情報を投資の指標に使う動きが広がっている。しかし、それだけで企業を評価することは難しく、強い財務基盤が必要であることに変わりはない。最適な意思決定と実行の仕組みを構築し、財務・非財務の両面で自社の企業価値を高めるメソッドを提言する。
2023.05.01

「社会の持続的成長」「企業価値向上」を見据えたサステナビリティ経営を実践:KDDI

「KDDI VISION 2030」実現の加速に向け、2022年10月にオウンドメディア「KDDIトビラ」を開設し、KDDIの取り組みを発信している

 

 

サステナビリティ経営を推進するKDDIでは、2022年4月にサステナビリティ経営推進本部を新設。通信を中心にさまざまな事業領域を拡大し、社会課題解決が収益機会につながるビジネスモデルの創造に取り組んでいる。

 

 

グループ全体で取り組むサステナビリティ経営

 

コロナ禍の外出自粛で在宅勤務が求められた2020年以降、あらゆる領域で急速にデジタルシフトが進んだ。DXによる新たなビジネスが続々と展開され、Beyond5G※1や次世代技術の研究も加速。人々のワークスタイルや価値観が多様化する中、世界の投資家・投資機関が重視しているのが企業のサステナビリティだ。めまぐるしい事業環境の変化にもしなやかに適応していけるポテンシャルを、財務・非財務の両面から見定めようとしている。

 

そうした要請に応えて、KDDIは2020年5月に「KDDI Sustainable Action」を策定。5GやIoTを活用して命・暮らし・心をつなぎ、「つながる安心」を広げていくための事業変革にかじを切った。激甚化する自然災害や、深刻化する人口減少などに対し、通信事業会社としてどう社会的責任を果たしていけるのか。ステークホルダーとともに検討を重ねている。

 

同社の執行役員常務CFOコーポレート統括本部長の最勝寺奈苗氏は、次のように語る。

 

「2011年の東日本大震災の際には『電話で会話できて初めて安心した』という多くの体験を聞き、人と人をつなぐことの意義を深く実感しました。当時に比べると、現在は固定電話の利用者や公衆電話の台数が大幅に減少し、人々の通信手段はモバイルに集中しています。

 

その一方、ネットワーク・端末・コンテンツで差別化を図っていた3Gの時代は終わり、多種多様な企業といかに連携できるかが問われる 5G・6Gの時代へと移行しつつある今、通信事業で培ってきた『つなぐチカラ』を進化させ、通信を溶け込ませながら、それ以外の事業領域でもイノベーティブな成長を遂げていくことが何より重要だと考えています」

 

目指すべき変革の方向性を明確に示したものが、2022年5月に発表した「KDDI VISION 2030」と「中期経営戦略(2022-2024年度)」(【図表1】)だ。
【図表1】中期経営戦略の全体像

出所:KDDI提供資料

 

中期経営戦略では、KDDIグループの強みである5G通信を核に、5つの注力領域の事業拡大を図る「サテライトグロース戦略」と、経営基盤強化の両軸を掲げ、さまざまな事業領域のグループ会社と連携して、複雑な環境の変化にもしなやかに対応できるレジリエントな未来社会の実現を目指している。

 

これまでと大きく違うのは、「長期志向」と「社会価値」の観点を組み入れたサステナビリティ経営(次頁【図表2】)を根幹に据えたことだ。企業と社会の持続的成長を両立させるサイクルの実現を目指している。
【図表2】KDDIのサステナビリティ経営

出所:KDDIコーポレートサイト

 

重要なポイントは「自社の強みを生かし、最も社会に貢献できることは何か」を考えることである。今回の中期経営戦略においては、マテリアリティ(重要課題)を「通信を核としたイノベーションの推進」「安心安全で豊かな社会の実現」「カーボンニュートラルの実現」「ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化」「人財ファースト企業への変革」「ステークホルダーのエンゲージメント向上」の6つに絞り込んだ。

 

※1 5Gの次世代の移動通信システム

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