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【特集】

シン・ローカライゼーション

人口減少や少子高齢化、過疎化、産業空洞化などさまざまな社会課題に直面する日本の地方。各地域に特有の課題に寄り添い、地域資源を組み合わせたバリューチェーンを構築することで新しい付加価値を提供する取り組みに迫る。
2023.03.01

食品ロスを削減する地域連携:コークッキング

コークッキング・東松山市・東武鉄道・JA埼玉中央・大東文化大学・大塚応援カンパニーの6者が連携し、継続的な食品ロス削減を目指す地域連携事業「TABETEレスキュー直売所」

 

 

深刻な食品ロスに悩む生産者のため、コークッキングは提携する地域の全ステークホルダーが利益を享受できるサプライチェーンを構築。継続的な食品ロス削減に成功している「TABETEレスキュー直売所」の、“奉仕”に依存しない産官学連携に迫った。

 

 

全ステークホルダーにとって持続可能か

 

「誰もが『人間らしく創造的な暮らし』を実現できる社会の実現に貢献します。」をミッションに掲げるコークッキングは、フードシェアリングサービス事業「TABETE(タベテ)」を柱に、作り手と食べ手をつなぐプラットフォームを運営。食の購買・消費行動を「人間らしさ、自分らしさの体現」の1つと捉え、納得感を得られる買い方・食べ方を提案している。

 

同社が今、大きな社会課題と捉えているのが、生産者と消費者の距離が離れ過ぎているということ。サプライチェーンの延伸により、食の作り手に対する敬意が薄れてしまいがちな現状を憂慮し、作り手と食べ手を新しい形でつなぐ事業に取り組んでいる。

 

2021年8月から本格始動した「TABETEレスキュー直売所」は、JA(農業協同組合)埼玉中央管内の直売所(埼玉県東松山市)で野菜が大量に売れ残り、回収や廃棄にかかる費用を生産者が背負っている現状を改善していくために開発された地域連携事業だ。コークッキング・東松山市・東武鉄道・JA埼玉中央・大東文化大学・大塚応援カンパニーの6者が連携し、それぞれのリソースを活用して新しいサプライチェーンを構築。東松山市のJA直売所で発生する農産物の食品ロスを継続的に解消できる仕組みづくりを実現した。

 

その仕組みは、次の通りである。

 

❶JA直売所で売れ残った朝採れの農産物を、コークッキングが当日中にJAから買い取る(週3日)

 

❷JAが規定の手数料を収受し、残りを生産者が受け取る

 

❸コークッキングが東武鉄道に運賃を支払い、大東文化大学の有給インターン生が森林公園駅から池袋駅まで輸送する

 

❹池袋駅構内のTABETEレスキュー直売所で、インターン生がJA直売所と同じ価格で販売する

 

❺コークッキングが東武鉄道に構内のスペース利用料を支払う

 

❻TABETEレスキュー直売所で売れ残った農産物は、慈善事業として「OOC子ども食堂」(池袋駅より徒歩約20分)を営む大塚応援カンパニーが無料で引き取り、一人親家庭に無料で提供している食事と弁当の材料として使い切る

 

このスキーム(【図表】)により、東松山市内5カ所のJA直売所と200名を超える生産者の利益率は飛躍的に向上。東武鉄道は有料手回り品料金制度のPR拡大とともに構内への広告出稿や出店が増え、大塚応援カンパニーには個人からの寄付以外にも食材を継続的に無料調達できるチャネルが生まれた。

 

 

【図表】 TABETEレスキュー直売所のスキーム

出所:コークッキング提供資料よりタナベコンサルティング作成

 

 

大東文化大学は常時15~20名のインターン生に店舗運営経験を含む学びの場を提供。本格運用を始めて約1年半が経過した2023年1月現在、コークッキングも安定して利益を計上できている。

 

 

 

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