使い方は現地の人に自由に考えてもらえばいいのです
相手が見いだす価値を受け入れられる発想の柔軟さが大事です
海外へ進出するには、独資やローカルパートナーとの合資などの選択肢がある。エコリングが選んだのは独資だった。
「エコやSDGsなど社会問題に対する私たちの思いなど、一見して利益につながらない部分も含めてパートナーが理解し、共有してもらえるか。それが難しいなら単独で事業を進めた方が良いですし、日本からサポートする仕組みがあるので、あえて必要としませんでした。
また、進出後に現地に定着し持続的な成長軌道を描くには、日本人をビジネスの相手にしないことです。ローカルの商売人から、いかにより多くのお金と信頼を得るか。BtoBなら、情報やノウハウを共有しファイナンスを支援しながら、相手方のビジネスを育てることが大事です。それが、根付くということですし、マーケットの拡大にもなるわけですから」(桑田氏)
バンコクで2011年に大洪水が起きた際には、店も商品も流された現地の取引先企業へ、コンテナに入った商品を丸ごと安値で提供。「もう1回、商売を頑張ろう!」と勇気付けた。自社だけがもうかるのではなく、自他共栄で一緒に「適正な価値を見いだす」ことが成功の秘訣だ。
さらに、同社は海外戦略の可能性を確かなものにする「価値」を取り扱っていると桑田氏は語る。
「アジア全域、いや世界中で『used in Japan』に大きな価値が付きます。日本人は気付いていないかもしれませんが、日本人の国民性が変わらない限り、間違いなくこの価値はこれからも持続していくでしょう」
日本で流通している製品は、品質を確保するために行政機関などが規格を定めて、規格に適合しているか検査をしている、いわば「選ばれた物」。そのため、「日本人が認めたused」が、古物リサイクル・古物リユースで揺るぎない価値となり、需要が高いのだという。
今後は、同社が運営するネットオークション「EcoRing the Auction」を世界中の古物商を結び付けるプラットフォームにし、リユース商品を物流させ不用品をなくしたいと笑顔で語る桑田氏。すでにアジア圏だけでなく、米国やUSドル・ユーロ経済圏の主要な古物商が参加しており、2030年までの実現を目指している。
そんな「世界リユース物流プラットフォーム」が誕生すれば、ブランド品や貴金属の世界相場において、一部の古物商の恣意的な価値観が通用しなくなる。また、絶えず商品が動くため在庫が滞留せず、資金に乏しい古物商にもチャンスが生まれる。そして、「適正な価値」を求めるビジネスの輪が、より広がっていくことになる。
「エコリングのオークションプラットフォームに、世界中の古物商がジョイントし、つながって、不用品のないエコな暮らしや社会になる。そんな仕組みと物の流れを構築することが、成し遂げたい未来です」(桑田氏)
PROFILE
- (株)エコリング
- 所在地:兵庫県姫路市飾磨区恵美酒213 錦ビル3F
- 創業:2001年
- 代表者:代表取締役 桑田 一成
- 売上高:188億1400万(2021年12月期)
- 従業員数:396名(2022年1月現在)