NPSを活用し、CX向上を実現した企業事例を紹介する。
うどん専門飲食店を経営する丸亀製麺など、飲食店舗の開発と運営を手掛けるトリドールホールディングスは、2016年にEmotionTech CXを導入。NPSと購買データの関連性を知ることで分析の質が向上し、自社の強みが「手づくり」「出来立て」「美味しい」という商品力であることを可視化した。また、回答負荷を抑えたアンケートの設問設計で、回答率が20%向上したという。
カスタマージャーニーマップの活用で成果を出している企業もある。カスタマージャーニーマップとは、顧客のプロセスや行動だけでなく、思考や感情も併せて考えることで、最適なアプローチ手法を可視化するツールだ。
「EmotionTech CXでは、体験ごとのNPS影響度をマップ上で数値化します(【図表2】)。ロイヤルティーに与える影響が大きいにもかかわらず評価が低い項目を課題として設定し、その改善を通してクライアント企業の課題解決を目指します」(佐野氏)
【図表2】カスタマージャーニーマップを用いたNPS影響度の数値化(フィットネスジムの例)
例えば、フィットネスクラブを展開するティップネスでは、まず、ブランドやサービス全体に対する調査を実施。顧客体験価値を向上させるには、「施設の満足度」「プログラムの満足度」「スタッフの満足度」の3つが重要であることが分かった。次に、店舗ごとで顧客のニーズに違いがあることを可視化した。
結果として、「古いから改修する」という画一的な施策から、「この店舗は風呂周りを改修することで顧客ロイヤルティーが向上する」など、投資を効率的に実行できるようになった。
顧客ロイヤルティーを計測し、顧客体験価値の向上を目指すNPSだが、気を付けなければならないポイントもあると佐野氏は指摘する。
「社内で『顧客』を定義することが重要です。例えば、商品・サービス購入前のお客さまなのか、購入後のお客さまなのか。また、部門によっても目標とする顧客の定義は変化します。マーケティング部門であれば自社ウェブサイトに訪問したユーザーになりますし、店舗部門では来店者になります。
同じ『顧客』という言葉を使っても、そこにズレが生じればNPSを導入してもうまくいきません。『どの顧客層のロイヤルティーを高めたいのか』を社内で決めた上で、NPSを活用することが重要です」(佐野氏)
エモーションテックの主力商品は、クライアント企業の従業員を対象にしたEmotionTech EXと、クライアント企業の顧客を対象にしたEmotionTech CXであるが、2022年6月には投資家を調査対象にしたEmotionTech IXをリリースした。今後もステークホルダーを対象にしたサービスを拡大していくという。
また、EmotionTech CXで分析した感情データを、他のデータと連携するサービスも始動予定だ。同社の親会社でSaaS(インターネットを経由してソフトウエア機能を提供するサービス)を展開するプレイドは、ウェブサイトやアプリに訪問したユーザーの行動を分析する「KARTE(カルテ)」を提供している。このサービスとEmotionTech CXをひも付けることで、「顧客がウェブサイトやアプリ内で何に悩み、迷っているのか」という行動理由も取得できるようになる。個人に対して最適なレコメンド(推薦)が可能になり、さらなる顧客ロイヤルティーの向上につなげることができる。
エモーションテックが、データやサービスの連携でクライアント企業の従業員・顧客・ステークホルダーの体験価値を底上げし、「四方よし」の社会を実現する日はそう遠くない。
「どの顧客層のロイヤルティーを高めたいのか」を
明確にした上で、NPSを活用することが重要です
PROFILE
- (株)エモーションテック
- 所在地:東京都港区西新橋1-1-1 WeWork日比谷FORT TOWER 11F
- 設立:2013年
- 代表者:代表取締役 今西 良光
- 従業員数:70名(2022年7月現在)