顧客ロイヤルティー指標のNPS®(ネット・プロモーター・スコア:正味推奨者比率)を活用したサービスの提供を通じて、ユーザーの声を可視化し、クライアント企業のCX(顧客体験価値)・EX(従業員体験価値)向上を支援するエモーションテックの取り組みとは。
「すべての人々がイキイキと働ける世の中を創る」を経営理念に掲げ、CX・EX向上サービスを提供して、従業員・顧客・企業の「三方よし」の実現を目指すエモーションテック。
「当社は、代表取締役の今西良光が会社員時代を通して痛感したマネジメントに関する課題が起点となり、2013年に創業しました。早稲田大学ビジネススクールで海外のCX・EXに関する事例や論文を研究し、社内コミュニケーションの活性化を図るサービスを立ち上げたのがきっかけです」と、同社エグゼクティブXMディレクターの佐野真啓氏は語る。
同社は、仕事で感じた感謝の気持ちをカードに書いて相手に送り合う「サンクスカード」をデジタル化するサービスで事業を始めた。これが、2017年に提供を開始した同社のサービス「EmotionTech EX」の構想の原型となっている。従業員エンゲージメントを高め、より良い組織へ変革するための従業員体験価値向上サービスだ。
その後、2014年に顧客体験価値向上の支援へと事業転換を図り、顧客体験マネジメントサービス「EmotionTech CX」をリリースした。顧客からの商品・サービス・ブランドなどに対するフィードバックを集め、そのデータを独自の技術を用いて分析することにより、顧客体験価値を改善するサービスである。
クライアント企業の業種はインフラ、銀行、通信キャリア、家電メーカー、ECサービスなど多岐にわたるが、全国に店舗を構える飲食業や小売業、自動車・住宅などの高額単価の商品を販売するメーカー、フィットネスクラブなども多いという。
「ユーザーの評価を的確に測るためにはアンケート調査結果の分析が必要になります。その指標として最も有効だと考えたのがNPSでした」と佐野氏は語る。
NPSとは、顧客ロイヤルティー(顧客がブランドや商品、サービスに対して感じる信頼や愛着)を測る指標である。米国のビジネス誌『フォーチュン』が年1回発表する全米総収入上位1000社(フォーチュン1000)のうち、3分の2以上が活用していると言われており、この指標をさまざまなサービスの改善に生かすことができる。
NPSは「顧客満足度」と混同されることが多いが、大きく異なる点がある。それは、業績との相関性だ。
顧客満足度は、顧客満足の「度合い」を測る指標だが、「満足」という言葉の範囲は曖昧である。そのため、顧客がアンケートで満足と評価しても、商品・サービスのリピート購入につながるとは限らない。
一方、NPSは「顧客の本音を聞き出す」のが大きな特長で、企業やブランド、商品・サービスに対する「評価」を算出できる。アンケートの回答者を、明確に異なる行動パターン・態度を取る3つのグループ「推奨者」「中立者」「批判者」に分類し、推奨者の割合を出すのである。
具体的には、9~10点を付けた人を推奨者、7~8点を中立者、0~6点を批判者とし、回答者全体に占める「推奨者の割合」から「批判者の割合」を引いた数値をNPS(正味推奨者比率)とする。(【図表1】)
【図表1】 NPS(正味推奨者比率)の算出式
推奨者は、再購入率が非常に高く、友人などにその商品・サービスを勧める層である。このカテゴリの顧客が増えるほどブランド価値が向上し、顧客に愛されるブランドとして浸透していく。中立者は、より条件の合う競合商品・サービスに流れてしまうリスクのある層である。批判者は、リピート購入せず、口コミでも否定的なコメントで新規顧客を減らしてしまう可能性がある層だ。
「NPSを活用することで、企業やブランド、個別の商品やサービスに対する評価まで測ることができます。もちろん、正確な評価を得るためには、的確な設問設定や分析が欠かせません。同時に、アンケートを取りやすい仕組みの構築など包括的な支援が重要であり、そうした支援をワンストップで提供できるのが当社の強みと言えます」(佐野氏)
EmotionTech CXによる支援の流れを説明しよう。まず、クライアント企業が解決すべき課題を明確化し、CX改善活動のKPI(重要業績評価指標)を定める。次に、その課題を基にNPSの設問設計を行う。設問数は、ユーザーがアンケートに協力しやすいように10~15問が適切だ。
回答の集計は、メール、SNS、電話、紙アンケート、アプリなどさまざまな方法を用いる。最後に、自由記述で取得したユーザーの声も同社の独自技術で数値化し、その結果を報告する。報告リポートでは改善ポイントも提示し、クライアント企業の課題解決を支援する。だが、1つの課題を解決するたびに新たな課題が明らかになるため、「課題に対してNPSを最適化し解決する」というPDCAを回し続けることが重要だ。