KPIが変われば会社が変わる:トラスコ中山、丸井グループ、北の達人コーポレーション、CRISP
北の達人コーポレーションの5段階利益管理
北海道札幌市に本社を構える北の達人コーポレーションは、健康食品や化粧品などのEC事業を手掛ける高収益企業。受注業務やシステム開発などを内製化し、安定成長を遂げてきた。
DtoCのサブスクリプション型ビジネスモデルで、「比較検討された結果選ばれる」を基準とする自社ブランド商品開発などの特徴を持つ同社。高収益経営を支えるのは、CPOやLTVを用い採算性の高い広告だけを残すことのできる、独自の広告最適化の仕組みである。CPOとはCost Per Orderの略で、受注1件当たりに要する広告宣伝費。LTVはLife Time Valueの略で、顧客がもたらす生涯売上高を指す。これらの指標を正確に算出・管理し、そこから受注1件当たりに使用可能な広告金額の上限を設定している。
同社では独自に開発した「広告最適化のための分析・運用システム」を用い、常時約5000本の広告のCPOを毎日算出。上限CPOを超えた広告は速やかに出稿を停止するという。採算性の高い広告のみが残ることで、ひいては利益の最大化が可能になる。
利益を最大化するCPO設定とともに、「5段階利益管理」を徹底することで、売り上げはあっても利益の出ない商品や、販促費がかからず粗利益の高い商品などを洗い出すことができる。利益の上がらない商品を切ることで、経営資源を「高収益を上げる商品」へ集中投下でき、一層の効率経営が可能になる、という善循環だ。
こうした経営数値の見える化、最適な業績指標の設定、精度の高いマーケティングにより、同社は安定成長可能な収益構造を実現している。今後は商品のスケール拡大やグローバル展開も視野に、将来的に売上高1000億円、営業利益300億円を目指すという。
JOURNEY お客さまとCRISPがつながる6つのジャーニー
2014年に東京で開業したカスタムサラダ専門レストラン「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」。2022年4月現在、東京都内に20店舗、大阪市に1店舗を展開するほか、サラダのサブスクリプションサービスや、レジ会計不要のサラダストアなども手掛ける“飲食DX”のトップランナーだ。
このサラダ専門店を運営するCRISP(クリスプ)は、2021年7月、自社のKPIである売上高や顧客数、LTV(顧客生涯価値)、リピート率、アプリの離脱率などをすべてリアルタイムで見られる「CRISP METRICS(クリスプメトリクス)」を公開した。中でも、「お客さまとCRISPがつながる6つのジャーニー」と題してカスタマージャーニーを6段階に分け、上記のKPIを設定。特にリピート3回目と5回目を取り上げ、丁寧な接客でファンになってもらえること、LTVを上げること、その結果として顧客体験の価値を高めることを大切にしている。
模倣されるリスクを取って自社のKPIを公開した理由は、①データ分析やマーケティングのスキルを持つ優秀な人材を採用するため、②データを開示してステークホルダーへの説明コストを減らすため、③売り上げ・客単価・客数という数値だけを指標としがちな飲食店経営を変え、新しい外食の形を創り出すためだという。
2021年6月、同社はベンチャーキャピタルのOne Capitalから約5億円の資金調達を実施。2020年の三菱商事からの資金調達と合わせ、累計の調達額は約10億円となった。データドリブンな経営で外食産業を高収益化し、テクノロジーの力で非連続の成長を遂げようとする同社の挑戦は続く。