KPIが変われば会社が変わる:トラスコ中山、丸井グループ、北の達人コーポレーション、CRISP
組織の最終目標を達成するための中間目標として、その達成度を図る指標、KPI(重要業績評価指標)。KPIをいかに設定するか、頭を悩ませるリーダーも多いだろう。本コラムでは自社の課題に見合った独自指標を設定・活用し、未来へと躍進する4社の取り組みを紹介する。
50万アイテムの商品在庫を持ち、即納を可能にする物流網を敷く独創の経営で成長を続ける機械工具商社・トラスコ中山。同社は「在庫出荷率」という独自のKPIを競争優位の源泉としている。
通常、過剰に在庫を抱えることは、コスト増につながる。そのため企業は「在庫回転率」を指標とし、回転率の低い(あまり売れない)商品の在庫を持たないようにする。
しかし、トラスコ中山は「全受注の何%を在庫から出荷したか」を示す在庫出荷率を重視。顧客が必要とするあらゆる商品を即納することによって、「トラスコ中山なら何でもそろう」という顧客満足と信頼を高めている。商品の需要予測は基幹システムで実施。注文実績データを分析して在庫アイテム1品ずつの需要を計算・発注することにより、欠品が減って即納体制が強化され、在庫出荷率は84.0%(2014年3月期)から91.3%(2021年12月期)へ高まった。また、同社は「即納こそ最大のサービス」と考え、2021年度から「納品リードタイム」をKPIに設定。受注から納品完了までのプロセスを可視化することにより時間短縮を目指している。
2021年12月期の納品リードタイムは20時間6分53秒。今後は、在庫出荷率と併せて「顧客目線の重要指標」とすることで、高い利便性、迅速確実な納品、豊富な品ぞろえと在庫、納得できる価格といった提供価値をますます高めていくという。
丸井グループは女性社員の活躍を推進するため、「意識改革」と「制度づくり」にこれまで取り組んできた。というのも同社は社員4855名のうち、約44%に当たる2140名(2021年3月期)が女性。来店顧客の女性比率も高いため、女性社員の真の活躍が同社の持続成長に欠かせないのである。
そこで2014年3月期より、女性活躍の重点指標として「女性イキイキ指数」を設定。2021年3月期までの目標数値を掲げ、取り組みを可視化してきた。女性活躍浸透度、女性リーダー数など「意識改革・風土づくり」「女性の活躍推進」に関わる項目を7つ設け、それぞれの達成率を数値で計測。その結果、女性活躍浸透度は99%まで上昇、男性社員育休取得率は3年連続100%を達成した。
これまでの結果を踏まえ、未達項目の要因である「性別の役割分担意識」の見直しに向け、同グループでは男女ともの意識改革を図るためイニシアティブを実施。その活動をもとに、「固定化した性別役割分担意識の見直し度数」「男性の家事・育児参画度」などの項目を加えた2026年3月期までの新たな女性イキイキ指数を策定し、達成に向けて取り組んでいる。男女ともの意識改革が必要という課題感に基づき、女性の活躍の場を増やすプロセスを可視化するためのKPI設定と言えよう。