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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2022.06.01

売上データは「 可視化できる顧客の声」 グッデイ

数字を基に、誰が見ても納得できる方向性を示す

 

柳瀬氏はいま、データ分析から分かった売り上げが伸びる2つのテーマを推進する。「店舗の改装」と「季節品の需要予測」だ。

 

「店舗の改装は年間10店舗ずつ進めています。以前は新店の出店が最大の関心事でしたが、改装する方が費用対効果は高く、売り上げが10~20%伸びるとデータで分かりました。予算が組みやすくなりましたし、今後は改装で得たさまざまなデータを他店に展開し、改装効果の評価方法も定量化していくところです」(柳瀬氏)

 

もちろん、全てが見通せるわけではない。ワークショップやイベント開催スペースを併設したライフスタイル提案の新型店舗は試行錯誤の連続だという。

 

「顧客に最適化し過ぎるとマンネリ化して飽きられ、伸びしろがなくなります。一番難しいのは、今やっていないことをやること。データ分析だけで新しい試みや品ぞろえの変化を予測するのは厳しいからこそ、時間をかけて取り組んでいきたいです。また、データ活用で業績を安定させ余裕をつくっておけば、失敗できる余地が増えて挑戦できる。その先に、次なる伸びしろを創り出せるのです」(柳瀬氏)

 

全社売上高の2割を占める季節品の需要予測は業績への影響も大きい。活用するのは外部データだ。日本気象協会が公開する長期予報(寒・暖候期予報)などから、気温や降水量を参考に仕入れ計画を立案。猛暑予想であれば、猛暑だった過去の気温と売上実績の相関性を分析し、夏物の売上予測値を算出する。バイヤーの経験に基づく勘やコツに頼った予測とは、明確なエビデンスがあるのが大きな違いだ。

 

さらに、人事総務部の若手社員が自ら動画を撮影・編集し、DIYのノウハウを店舗スタッフに説明する「オンラインDIY研修」のほか、データ分析やBIツールの使い方など、若手社員を中心にITリテラシーの高い人材を育成する「GOODAY DATA ACADEMY」も開講。データ活用を進化する原動力になっている。

 

改装・需要予測・人材育成――。共通するキーワードは「アップデート」だが、その本質を柳瀬氏は「トップの仕事は、会社の目指すべき方向性を示し、きちんと成果が出ることを社員に納得してもらうこと」と語る。

 

「今まで通りで良いと思った瞬間に企業は停滞します。また、『一生懸命に頑張れ。私が言うのだから動け』とトップが単に檄を飛ばすだけでは社員は頑張れません。ですが、『この方向に進めば、何か成果が出てくる』と進むべき方向性と予測できる成果を示し、誰が見ても納得できるなら頑張ることができます。

 

トップは、『データ分析を用いた客観的な事実に基づき、正しい経営判断を行っている』ということを社員に証明することが重要。それができれば、後は本当に成果が上がるかどうかを日々検証すれば良いだけです」(柳瀬氏)

 

 

グッデイ 代表取締役社長 柳瀬 隆志氏

 

 

Column

数字に秘められた顧客のニーズを読み取る

「数字を見るな、頼るな」。柳瀬氏がグッデイに入社した2008年、当時のグッデイには「数字に頼ると勘が鈍る」という言い伝えがあり、予算制度もなく、日々の作業だけを繰り返していた。

 

「当時の当社にはデータがなく、社員も数字を読めないことがボトルネックでした。今はデータがそろっており簡単に分析できるので、予算を達成しても設定した数値が甘くなかったかを判断できます。また、目標未達であれば原因を分析するなど、分析の精度を高めています。分析の切り口のヒントは普段の会話にあります。『業界ではこうだから』『お客さまがこう言っているから』。でも実は、最新のデータを見ていないことが多い。統計情報など外部のオープンデータも活用して、そこから世の中やお客さまの動きを見始めると、感覚と数字がマッチして勘が働きやすくなります」(柳瀬氏)

 

グッデイは、数字に秘められた意味を明らかにし、顧客の本当のニーズから自社の未来を見通し続けていく。

 

 

 

PROFILE

  • (株)グッデイ
  • 所在地:福岡県福岡市博多区中洲中島町2-3 福岡フジランドビル10F
  • 設立:1950年
  • 代表者:代表取締役社長 柳瀬 隆志
  • 売上高:380億円(2021年3月期)
  • 従業員数:約1500名(2022年3月現在)