その他 2022.03.01

幼児用ヘルメットの認知拡大に成功:オージーケーカブト

幼児向け自転車ヘルメット「picot」

 

ヘルメットメーカーのオージーケーカブトは、幼児用の最小サイズヘルメット「ピコット」を新たに開発。ゼロからブランディングを行うとともに、ウェブメディアを活用して幼児の保護者へ商品の魅力を発信している。

 

 

認可基準を再検討
最小サイズの幼児用ヘルメットを開発

 

ものづくりの街・大阪府東大阪市にあるオージーケーカブトは、バイクや自転車用のヘルメットを開発・製造・販売するヘルメットメーカーだ。オートバイ用ヘルメットでは国内トップクラスのシェアを誇り、スポーツサイクルを含む自転車用ヘルメットはシェアナンバーワンで、東京五輪でも日本代表チームが使用するなど、リーディングカンパニーとして業界を引っ張ってきた。

 

同社では道路交通法が施行される前の2000年から子ども向けへルメットを発売しており、徐々にラインアップを増やし「チャイルドメットシリーズ」として展開していた。子どもの頭部データと衝撃吸収性の研究結果を基にしたシリーズ展開や、店頭で簡単に最適なヘルメットを選択できるサイズゲージを考案したことが、子どもの安全・けが予防に大きく貢献しているとして、キッズデザイン協議会が主催する「第4回キッズデザイン賞」(2010年度)のキッズセーフティ部門において最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞した。

 

そんな中、2018年に横浜市で痛ましい事故が起こった。抱っこひもで1歳4カ月の幼児を抱えた母親が自転車で転倒し、幼児が死亡したのである。その事故以外にも、母親の自転車転倒で幼児がけがをする事故は全国で頻発していた。同社は、トップメーカーとしてこの事態を重く受け止め、幼児用ヘルメット「picot(ピコット)」の開発を進めた。

 

「当社の調査によると、2008年の道路交通法改正により幼児のヘルメット着用が義務化されてからも、全国で約半数の保護者が子供にヘルメットをかぶせていませんでした。装着すれば、命に関わる事故をある程度防げるのに、なぜなのか。かぶせない理由を調査すると、『サイズが合わない』という声がありました。

 

確かに、当時の幼児用ヘルメットの安全規格における最小サイズは実情との乖離がありました。そこで、製品安全協会とともに進めていた規格の最小サイズよりも小さい基準を作るところから、商品開発をスタートさせました」

 

そう話すのは、開発部企画・広報課係長を務める柿山昌範氏である。

 

同社が世の中になかった最小サイズの商品開発を進めたのには、もう1つ理由がある。50%を占めていた同社の幼児用・小学生用ヘルメットのシェアが、徐々に落ち始めていたのだ。要因は、海外ブランドの相次ぐ参入や、人気アニメなどのキャラクターデザインを施したOEM製品の人気、量販店によるPB商品といった、ヘルメットを生産する同業他社との価格競争だった。この悪循環を断ち切るため、自社ブランドのヒット商品が必要だったのである。

 

幼児の安全と自社ブランドの確立。2つの課題を解決するために急務となった、新たな最小サイズ幼児用ヘルメット。開発チームが打ち出した戦略は、入念なマーケティングによる新商品ブランディングだった。

 

開発チームは、まず、親子の自転車の事故ゼロを目指す団体「おやこじてんしゃプロジェクト」に協力を仰ぎ、保護者のグループインタビューを行って、幼児のヘルメットに求められる要素を洗い出していった。また、研究チームと連携し、保育園の協力のもとで児童の頭部の形状やサイズの計測データを集計。そうして2020年に発売されたのが、生後12カ月から2歳ぐらいの幼児を対象にした、国内最小サイズのヘルメット、ピコットである。

 

 

 

軽量・コンパクト、安全性に加え、快適性とデザイン性を重視した幼児向け自転車ヘルメット「picot」

 

現代の親に伝えるためウェブメディアを活用

 

ピコットのブランドビジョンは「かぶる」ではなく「着る」。軽くてファッショナブルなデザインを施し、重さはわずか220gと、小さなりんご1個分ほどの軽さだ。アジャスター調整に頼るのではなく、帽体そのものを小さくし、サイズ45cmという世界最小サイズのヘルメットが生まれた。

 

「着用を促進するには、子どもが嫌がらずにヘルメットをかぶることが大切なので、軽さと通気性を確保しました。さらに、どんな服装にも合うように、マットな質感で抑え目なカラーを用い、肌の挟み込みを防ぐバックルカバーや簡単にサイズ調整ができるフィットバンドなど、安全で快適な機能を盛り込みました」(柿山氏)

 

開発の次に取り組んだのは、ピコットをどのようにブランディングし、必要としている人たちに届けるかであった。柿山氏がコミュニケーションチャネルとして目を向けたのは、ウェブメディアだった。

 

「小さなお子さんを持つ保護者の方々の多くは仕事や家事、育児で毎日忙しく過ごされています。そうした方々へ的確に情報を届けるためには、ウェブ活用が最善策だと考えました。隙間時間にスマートフォンで子ども用ヘルメットを検索すると当社のサイトがヒット。へルメットの必要性を知り、商品特性を把握した上で購入できる。そんな広報・販促戦略を立てました」(柿山氏)

 

ニュースサイトには「1歳ヘルメット」「赤ちゃんヘルメット」「はじめてのヘルメット」などをキーワードにした検索連動型広告(ユーザーが検索したキーワードに連動して表示される広告)を出し、幼児の母親がメイン読者のウェブメディアではプレゼントパブリシティーを打つなど、さまざまな種類のウェブ広告からピコット特設サイトへの流入を促す施策を講じたのである。

 

 

※読者プレゼント