「3ない」「3レス」を実現:りそなホールディングス
【図表2】事務量・伝票枚数の推移
オペレーション改革の結果、2004年度の事務量を指数100として、2019年度には39にまで削減することに成功した。伝票枚数は2004年度100に対して2019年は17と約8割減を達成した。(【図表2】)
また、こうした事務量の削減に基づいて人員を調整した結果、事務の人員は2005年3月の指数100と比べ、2020年3月は44となった。(【図表3】)
「グループ各社でバックオフィス業務の改革が着実に進む中、新たにグループに加わった関西みらい銀行、みなと銀行においても、同様の改革を推進していきます。これまでは事務のデジタル化を中心に業務の効率化・省力化を目指してきましたが、今後はお客さまの利便性を高めるとともに、従業員にとっても働きやすい、本当の意味でのDXを追求してまいります」(橘氏)
りそなグループが2003年から取り組んできたオペレーション改革は、銀行事務における「3レス」を実現するとともに、CS(顧客満足)の観点から「3ない」も実現してきた。それが2015年以降のオムニチャネル戦略へつながった。
店舗とネットの両方を活用することで、さまざまなチャネルから銀行サービスを提供する戦略は、10年以上かけて取り組んできたオペレーション改革の成功があってこそ実現できたものである。全国826の有人店舗(2021年3月時点)と、ダウンロード数が約431万(2021年9月時点)に上る「りそなグループアプリ」を中心に、りそなグループならではのデジタルバンキングの在り方をこれからも追求していくという。
【図表3】事務人員※の推移
りそなグループのデジタルバンキングの基盤となるのは、お客さまの属性情報や取引情報、交渉内容などを⼀元管理する共創型プラットフォームである。それを核として非対面・対面でのサービス提供に注力。
預金残高の確認や口座からの送金などお客さま自らの操作で完結できるところは、アプリを通じた非対面サービスをより便利にしていく一方、資産運用や相続、事業承継などの相談については店頭でのサービスを強化していく。橘氏によると、「一部の店舗では『りそなグループアプリ』に準じたタブレット端末を置いて、アプリの世界観を体験していただくとともに、離れた場所にいる担当者とお客さまが非対面で話せる『テレビ窓口』を設置するなど、お客さま目線でのサービスの拡充を進めている」とのことだ。
りそなホールディングスの中期経営計画には、オムニチャネル戦略の進化を通じた「デジタル化に対応した新たなお客さま体験の提供」がビジョンとして記されている。これによって、「次世代のリテールサービス」を目指すという。こうした取り組みが評価され、りそなホールディングスは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に2020年、2021年と2年連続で銀行業として唯一選ばれた。
一方、こうした取り組みによって、店舗のスタイルも大きく変わろうとしている。店頭での事務量と必要な人員が減り、余裕ができたスペースの有効利用のため、オープンスペースを設けてお客さま向けのセミナーなどに活用する店舗もあるという。
コロナ禍で社会活動が大きく制約されている近年、アプリを用いることで「いつでも、どこでも、簡単・便利」に銀行サービスを利用できるメリットは大きくなっている。今後はアプリ以外のデジタルチャネルも開拓し、オペレーション改革を起点とした「新たな顧客価値の創造」に向けて、りそなグループにおける真の意味でのDX戦略も新たなフェーズへ移行していく。
りそなホールディングス プロセス改革部 グループリーダー 橘 吉則氏
PROFILE
- (株)りそなホールディングス
- 所在地:東京都江東区木場1-5-65 深川ギャザリア W2棟
- 設立:2001年
- 代表者:取締役兼代表執行役社長 南 昌宏
- 従業員数:2万308名(連結、2021年3月現在)