•  
モデル企業のメインビジュアル
モデル企業
モデル企業
【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.11.01

組織風土を醸成し、キャリアオーナーシップを推進 三井情報

課題だった「一体感のある企業風土」を醸成し、社員の「働きやすさ」「働きがい」を促進・創出してきた三井情報。社員と企業双方の持続的成長を見据え、独自のHR施策で「全社員が活躍する企業」へ躍進する同社の取り組みを探った。
  三井情報 取締役 副社長執行役員 蒲原 務氏(左)、人事総務統括本部 グループ人材開発部 キャリア推進室 室長 山田 美夏氏(右) 三井情報 取締役 副社長執行役員 蒲原 務氏(左)、人事総務統括本部 グループ人材開発部 キャリア推進室 室長 山田 美夏氏(右)

一体感のある風土醸成が課題に
三井情報は、1967年に三井物産の情報システム部門が独立し、三井情報開発が生まれたことに端を発する企業である。ICT技術の進化や時代のニーズに対応しながら7社が順次合併し、2007年に三井情報としてスタートを切った。 規模や事業領域の異なる会社が統合を繰り返した結果、今では2600名以上の従業員を有する規模へ拡大。事業もITマネジメントサービス・コンサルティング、システムインテグレーション、ITインフラ構築、クラウドソリューション、情報通信機器、エレクトロニクス関連製品・装置の提供など多岐にわたる。 「合併した各社は事業領域だけでなく社風も異なります。 ルーツの異なる企業を統合し、一体感のある風土を醸成するため、最初に取り組んだのは全社員が参加するワークショップの開催です。毎年テーマを設け、全社を挙げて取り組んできました」 企業風土改革の背景をそう説明するのは、取締役副社長執行役員の蒲原かもはら務氏である。部署や立場の異なるメンバーを混合したグループによるワークショップ形式は2018年から開始し、初年度は自社キャッチコピーを決定。年間50回に及ぶワークショップから「ナレッジでつなぐ、未来をつくる」が選定された。この言葉は現在、同社のパーパスとなり、ビジョン、バリューとともに経営理念として同社の方向性を示している。 翌2019年には、「三井情報の役職員の価値観を創出する」をテーマに開催。ワークショップを通じて「期待を超える価値創出に挑む」「どうすればできるのかを考えて行動する」「自ら率先して変化を起こす」という3つの価値観を制定し、これらを明示した価値観カードを全社員に配布するなど、経営理念への共感を促す活動を推進していった。  
オフィスリニューアルや支援制度で社員の「働きやすさ」を促進
同社の改革は、経営企画と人事が一体となることで成果を創出している特徴がある。全社員参加型ワークショップを通じた風土醸成や自社の目指すべき方向の策定は、経営企画が主体となり取り組んだものだ。これと同時に実施したのが、人事主体で取り組んだ「働きやすさ」「働きがい」の醸成だった。 「働きやすさ」の促進の目的は、多様な人材が活躍できる「場」づくりである。そこで、働く場所としてのオフィスの改善、社員の健康管理を戦略的に行う健康経営の実践、福利厚生の拡充、柔軟なワークスタイルの確立などに取り組んでいった。 「働きやすいオフィス創出や各種支援制度、福利厚生の充実への取り組みは、目に見えやすいのが特徴。経営サイドの働き方改革に対する意思を伝える意味もあり、これらの改善から取り掛かりました」(蒲原氏) その一環として2020年1月、東京の東中野オフィスに「MKI LOUNGE」を開設した。同スペースは対面のコミュニケーション、部門や会社の壁を越えたオープン・コラボレーションが生まれやすい設計で、業務の特性に応じて使い分けられる複数の空間で構成される。 もともと社員食堂だったスペースを、自宅やカフェのようにくつろぐことのできる空間へ一新。終業後にアルコールやソフトドリンクを自由に飲める社内カフェ&バー「TSUDOI-CAFE」も備えており、部門の枠を超えてタテ・ヨコ・ナナメの関係を築く場として活用されている。 オフィスの整備とともに、働きやすい制度の導入にも早い段階から取り組んできた。 「社員が人生を健康で楽しく過ごせるようライフ&ワークバランスを意識し、時間外勤務の削減に取り組んできました。また、社員がより高いパフォーマンスを発揮できるよう、テレワークやサテライトオフィスを導入しています。 早くから制度を整えていたため、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年もスムーズにテレワークを行うことができました。コロナ禍が収束した現在も社員の約4割がリモート勤務しています。 このほか、フレックスタイム勤務制度や短時間勤務、社外副業制度や、仕事と育児・介護との両立を図れる支援制度の導入・整備に取り組んできました」 「働きやすさ」促進のための具体的な施策についてそう説明するのは、人事総務統括本部グループ人材開発部キャリア推進室室長の山田美夏氏である。   オープン・コラボレーションな環境を目指した空間「MKI LOUNGE」として2020年1月、東中野オフィス9階をリニューアルオープン。人が自然と集うことで、対面コミュニケーションの活性化や組織の一体感の醸成につなげている  
キャリアオーナーシップを推進し、社員の「働きがい」を醸成
同社は「働きやすさ」の促進とともに、「働きがい」の醸成にも力を入れている。働きがいを具現化するため重視しているのが「キャリアオーナーシップ」だ。キャリアオーナーシップとは、社員が働きがいを感じながら仕事に取り組み、主体的に成長しキャリアをつくる姿勢であり、実現に向けた仕組みや支援策を導入している。 「キャリアオーナーシップ推進に当たって重要なのが、自分のキャリアと向き合い、仕事・キャリアへの価値観やマインドを知ることです。その上で社員一人一人が主体的に将来のキャリアを描き、実現することがキャリアオーナーシップの在り方です。 社員にオーナーシップや自律を促す前提として、土台となる考え方を研修などを通じて体系的に身に付けてもらうことを大事にしています。 会社としては、キャリア観・マインドを醸成する全社員必修の研修(ワークショップ)を年10回ほど提供しています。その上で、さまざまな選択型研修、階層別研修、各部主催で行う研修などを活用し、社員がキャリア形成できるように支援しています」(山田氏) キャリアオーナーシップの推進に向け、同社は2022年に「キャリアオーナーシップ宣言」を行い、2023年度からは中期経営計画に「キャリアオーナーシップ推進」を盛り込むなど、全社戦略として実行している。 実際、現行の中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)では、基本戦略の1つに「人的資本の強化」を据え、「自ら主体的にキャリアを描き、 自らのキャリアの実現に向けて成長する人材の育成を目指している。その実現に向けた施策として、 施策① 「働きやすさ」の促進(多様な人材が活躍できる“場”をつくる) 施策② 「働きがい」 の醸成(キャリアオーナーシップの推進) 施策③ 適材適所の人材配置(人材ポートフォリオの最適化) の3つを掲げている。 また、キャリアを考える機会として、2020年から「MKIキャリアフォーラム」を開催。外部有識者を迎えたセミナーを年複数回実施している。開催後、聴講した社員が自発的に勉強会を開くなど、社員が主体的にキャリアについて考え、行動するといった変化が見られるという。   【図表】三井情報の人材マネジメントポリシー 出所 : 三井情報コーポレートサイトよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
   
従業員エンゲージメントが向上。共創に向け、挑戦し続ける
組織風土改革と働き方改革を推進してきた三井情報。その成果は、エンゲージメントサーベイの結果にも表れている。2023年の結果では、「一個人の尊重」「自分が学び成長できる機会」「ワーク・ライフ・バランスへのサポート」「社員の多様性の尊重と促進」「オープンで誠実な情報開示」「社員の尊重と配慮」といった項目で、前年度よりも2~8%肯定率が向上している。 さらに、昨今は日本の人事部「HRアワード2023」(厚生労働省後援)入賞、「キャリアオーナーシップ経営AWARD 2023」(パーソルキャリア運営)優秀賞受賞を果たすなど、社外からの評価も高い。 「今後も持続的に成長するためには、社員一人一人の成長が不可欠です。キャリアオーナーシップを推進するほど、社員は自分に最適な環境を求めるようになり、それが社内にない場合は社外になるケースもあります。 経営サイドとして大切にしているのは、社員に経営理念に共感してもらい、働きがいを持って働いてもらうこと。そのために今後も自社の経営理念や方針、働き方改革に関する取り組みを発信していくとともに、社員には自発的に学び続けられる機会を提供していきます。社員のエンゲージメントが向上し、内面の変化や風土の変化が見られるので、今後はその先の共創につなげていけるよう、挑戦を続けていきます」(蒲原氏)  

三井情報(株)

  • 所在地 : 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー
  • 設立 : 1991年
  • 代表者 : 代表取締役社長 浅野 謙吾
  • 売上高 : 1094億5300万円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 2671名(連結、2024年3月現在)