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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.11.01

DE&Iの実現はイノベーションの第一歩 Surpass

 
2022年に女性活躍推進法が改正され、2023年には「2030年までに東証プライム上場企業の女性役員比率30%以上」を目指すという政府目標も掲げられた。少子高齢化で人材不足が社会課題となる中、女性活躍の推進を単なる「人数の埋め合わせ」と考える経営者がいるなら、それは自らの手で自社の未来に引導を渡すことに等しい。女性活躍を起点に、多様な視点・接点を持つDE&I※1を実現する推進力となってきたSurpass(サーパス)は、2024年8月、タナベコンサルティンググループにグループインし、働き方の多様化や格差解消へ、さらなる挑戦の一歩を踏み出した。代表取締役社長・石原亮子氏に話を聞いた。
     
日本は世界に後れを取る「社会課題先進国」
「日本社会から『女性活躍』という言葉がなくなる日を目指して」。Surpassが掲げる理念は、実は女性活躍が課題であり続けることを物語ってもいる。 「日本はものすごい速度で、世界から後れ始めています。先進国から“社会課題先進国”になり、中でもジェンダー格差が大きい。女性の新規就職者のうち大学卒業者は72%※2もいますが、女性の平均年収は30歳手前をピークに314万円※3です。 この現実を、男性の政治家や経営者の大多数は知らないのに、政策や事業の未来をミスリードせずにつくっていけるでしょうか。女性活躍が当たり前になり、良い意味で言葉がなくなる日を実現できれば、と」 そう語るのは、同社の代表取締役社長・石原亮子氏である。女性営業チームによるBtoB企業の営業代行やSPO※4サービスをビジネスとして展開し、女性活躍やダイバーシティーを支援する「女性活躍推進総研」も立ち上げた。 女性活躍は、フェミニズムでも女性優位を目指すものでもない。男性中心に形づくられた日本社会の構造を、多様な視点・接点を併せ持つDE&Iの姿に変える象徴である。性別や国籍、障害の有無など属性の違いを問わず、誰もがそれぞれ得意なことを共有し合い、互いの価値を生かし合う世界、と言えるだろう。 石原氏が繰り返し口にして大切にするのがファクトフルネス(思い込みを乗り越えるデータ)。数字を具体的に示して行動を起こすのが、Surpassの流儀だ。 「働く女性のPMS(月経前症候群)や更年期による経済損失は、年間3.4兆円※5に達します。更年期を迎えた67%※6が昇進を断ったり、諦めようと考えたりした経験があります。でもその多くは、子育てや介護など家庭の事情を理由にしています。ファクトフルネスではない対話の延長線上には、誰もハッピーになれない世界しかありません。 『男の子は泣くな』『女の子は優しく』と耳にして育った“らしさ”が無言の縛りとなって、家庭や会社でその役割を守ろうとしています。生物学的に男女で異なるのは、子どもを生めるか生めないか。変えられない役割を知り、そこから逆算すれば、男性主導だった従来とは全く異なる人事制度やカルチャーが生まれ、働き方も変わるでしょう」(石原氏) 女性活躍がDE&I実現の第一歩になることも、石原氏は分かりやすく説明する。男性のリーダーは、企業人として立派な「一面体」であることが多い。一方で女性は、企業人と妻、母親、家事、PTAなど学校関連の活動、地域活動など多様な顔を持ち、常に「多面体」で生きている。そのためコミュニケーション力が高く、社会との接点も多く、多様なつながりの架け橋になれる。 「多様な視点と接点を併せ持つ多面体だからこそ選択肢が増え、硬直した制度や考え方を柔らかくほぐすことができます。『女性活躍はブーム』と言う経営者もいますが、真剣に経営を考えれば気付くはずです。マジョリティーだった戦後世代の男性リーダーの価値観は間もなくマイノリティーになり、女性やZ世代に選ばれなくなることを。属性のギャップをなくすために互いが歩み寄り、時代に合わせて全てをアップデートしなければ、人材不足に悩んだまま、会社は潰れてしまいます。カルチャーは1日にしてならず、ですから」(石原氏) ※1 ダイバーシティー、エクイティー&インクルージョン。多様性(Diversity)・公平性(Equity)・包摂性(Inclusion)を併せ持つ考え方。組織で多様な人材が働き、一人一人が必要な支援を受けながら、特性や強みを生かし最大限のパフォーマンスを発揮し経営成果を生み出す姿が、企業・組織文化の変革やイノベーションの創出、優秀な人材の確保・定着にもつながる ※2 厚生労働省「令和4年版働く女性の実情」(2023年9月) ※3 国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」(2023年9月) ※4 セールス・プロセス・アウトソーシング。主に営業プロセスの業務代行、分析・改善提案・実行などを分業・協業で受託する専門的な外注ビジネス。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の1つ ※5 経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(2024年2月) ※6 経済産業省「働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本に与える効果と課題に関する調査報告書」(2021年3月)
「多面体」の女性人材を生かす戦略
同社がSPOサービスを提供する顧客は、大企業やそのグループ企業であることが多い。「働き方改革」や人材不足は追い風だが、需要と期待が高まる理由は、女性活躍の本質が評価され始めたことにある。 1つには、顧客開拓のニーズやシーズのヒアリングに優れた女性人材の価値を知るリーダーが増えたこと。もう1つは、営業プロセスの構造が変化する時代の転換点を迎えたことだ。 「分業制の外資系企業でのキャリアがあるリーダーほど、自社にない視点や能力をアウトソースで借りるパートナーシップ戦略が上手です。 また、デパートの売り場が『買い場』になったように、情報強者だった営業主導から、ウェブの普及で豊富な情報を手にした顧客視点重視へと変化しています。主役が変わったのです。 大企業ほど女性の営業担当者が少なく、カルチャーも変わりにくいので対応が難しい。そこに、当社の商機と活躍シーンが生まれています」と石原氏は話す。 近年、同社は営業支援・顧客管理システム「Salesforce(セールスフォース)」の導入・運用など、営業現場のDX支援を行うことが増えている。ノウハウの属人化など、日本企業特有の営業カルチャーを見える化し、無駄のない業務フロー構築に貢献するサービスである。また、Salesforceの運用支援だけでは限界があるため、経営者・幹部・管理職を対象に、グローバル共通のDE&Iの認識を高める研修事業も提供している。 「現場だけでなく、ルールを決める男性リーダーが変わると、大きなレバレッジが効きます。現場の営業支援と、DE&Iを受け入れて推進する経営の土台づくり。両輪で歩みを進めてこそ世界が変わり、新しい景色が目の前に開けます」(石原氏) 研修事業を担う女性活躍推進総研には、企業や自治体、地方銀行などから多くのオファーが届く。その1つに、女性の管理職候補者研修がある。「管理職になりたくない」と昇格を辞退する事例が少なくないからだ。 女性活躍を推進し、多様な視点でビジネスの新たな価値創造を目指す製薬会社A社は、女性管理職候補者を対象とし、2022年と2024年に研修を実施。事前アンケートで昇格を拒んでいた受講者が、研修後にはゼロになり、管理職へのチャレンジを決めるようになった。 「30歳代、40歳代の女性は、ランドセルの色選びで赤やピンクはOK、緑や青は駄目と言われた世代です。自分の意見を持つ前にwhatを与えられ、なぜ赤なのかと考えるwhyがない。 自分軸がなく、ずっと相手軸なので、優秀な人も自信がなく、『これ以上は頑張れない』と自分の可能性にふたをしてしまう。エレファント・シンドローム※7と呼ばれる事象です。このふたを取り除き、根っこにあるマイナスをプラスに変えないと、何を掛け算してもマイナスにしかなりません」(石原氏) ふたをする必要がなく、自信を持ってwhyを考える人材が育ち、活躍すること。これが、自社でも顧客企業でもDE&Iを実現し、持続的な成長を遂げる、同社の確かな原動力になっている。    
仕事がないという課題を「地産地育」で解決
2024年8月、Surpassはタナベコンサルティンググループ(TCG)と資本業務提携契約を締結した。今後は中堅・中小企業のDE&I推進の支援機会も増えていく予定だ。 「トップの意思決定次第で、小が大を抜くチャンスが訪れます。オーナー経営で決断が早く、なぜDE&Iをやるのか、メリットやプロセスをロジカルで定量的に、多様な視点から伝えるリーダーがいれば、必ずできます。 新たなパーパスやバリューをつくっても良いでしょう。事業継承も推進の旗を振ってから引き継ぐことで、未来が大きく変わります。企業規模が大きいほどかじを切りにくいし、切ってもうまく推進できないのは、リーダー自身がwhyを考えず、なぜやるのかが分かっていないからです」(石原氏) TCGの全国ネットワークを活用し、地域の自治体や銀行を巻き込んだDX支援の研修事業にも注力する。目指すのは、ジェンダーや地域の格差を乗り越える柔軟な働き方を実現し、適切な収入も可能にすることだ。 2020年にキックオフしたITリスキリング研修「TECH WOMAN®」は、徳島県徳島市や広島県三原市などとの自治体提携事業として現在進行形で実施。全国的に導入が進むSalesforceのオペレーションを定着させ、奥が深い機能を使いこなして生産性向上につなげる女性デジタル人材「頼れるコンシェルジュ」を育成している。実際、研修受講後2年半のキャリアで年収が60万円から540万円に増えた女性もおり、都心に比べて仕事が少ない地方に住む女性の活躍機会を創出している。 「介護で地元に帰る、地域おこしで移り住む。そんな人たちは、地方に仕事がないという現実に直面し、結局、都心に戻らざるを得なくなっていました。仕事があれば一極集中だけでなく人口の再分布もでき、ライフイベントに合わせて多様な働き方ができるようになります。 2030年には数百万人単位でDX人材が不足し、誰もがリスキリングする時代を迎えます。TECH WOMAN®では『地産地育』と言っていますが、地域でDX人材を育て、雇用してその力を活用するDX推進ができれば、ジェンダー・地域・年収格差のギャップが解消します。 また、地域や地元企業のリーダーの考え方をDE&Iへと変えながら、TCGのコンサルティングでDE&Iにふさわしい人事制度づくりも支援できます。そんな良い相関性を、グループの一翼を担いながら実証していきたいです」(石原氏) Surpassは、日本語で「超越」を意味する。石原氏が起業を志した時、階段状の成長よりも、何かを突き詰めて極めた瞬間に重力から解き放たれて飛び立ち、新しい世界へ行くというイメージや、常識という思い込みを軽やかに乗り越えていきたいという願いを、社名に託した。 「明日伸びんがために、今日は縮む」という先人のおしえがある。縮むことを余儀なくされた女性や多様な個性が、「らしさ」「常識」という重しから解放され、ふわりと浮かび上がる。走り高跳びのように空高くへと、Surpassは今日を超越し、明日へとアップデートし続けていく。 ※7 幼少期のゾウが鎖につながれ、逃げ出すことに何度も失敗すると、成長後、力が強くなってもその鎖を引きちぎれないように、過去の制約や失敗にとらわれて新たな挑戦や成長を避ける心理的状態を指す    

㈱ Surpass

  • (株)Surpass
  • 所在地 : 東京都品川区西五反田7-20-9 KDX西五反田ビル3F
  • 設立 : 2008年
  • 代表者 : 代表取締役社長 石原 亮子
  • 従業員数 : 127名(2024年7月現在)
PROFILE
著者画像
石原 亮子
RYOKO ISHIHARA
Surpass (タナベコンサルティンググループ) 代表取締役社長 短大卒業後、大手生命保険会社でトップセールスとして活躍。一部上場企業からベンチャー企業まで100業種以上の営業経験の後、2008年に女性営業アウトソーシングのパイオニア、株式会社Surpassを創業。2021年、徳島市とジェンダー格差改善を目指した連携協定を締結。Forbes JAPAN WOMEN AWARDなど、女性活躍企業として多数受賞。