漢方に親しみの薄い消費者にも受け入れられやすいPRビジュアルで訴求(上)
パッケージを一新し、親しみやすく。「何に効くか」を大きく表示しているのも大きな特徴の「漢方セラピー」(下)
国内における一般用漢方薬市場において、トップを走ってきたクラシエ薬品。2021年に漢方事業ブランド「クラシエの漢方」を大幅にリニューアルし、一人一人の体質や暮らしに寄り添う存在へブランド価値を高めている。
漢方薬市場をけん引するリーディングカンパニー
漢方薬市場が拡大を続けている。国内における一般用漢方薬の市場規模は、2019年の587億円から2023年には708億円へと拡大。医療用漢方薬についても2018年の1518億円から2022年には1812億円へ成長し、一般用、医療用ともに約20%という高い伸び率となっている(クラシエ薬品調べ)。 背景として挙げられるのは、健康志向の高まりや超高齢化、自然由来の食品や医薬品への関心の広がりなどである。さらに、漢方薬の改良やメディアへの露出など情報量の増加によって、ともすれば「難しい」「飲みにくい」「何となく怪しい」と敬遠されがちだったイメージが変わりつつあることが、市場の急速な拡大を後押ししている。 そうした流れに大きく貢献しているのが、半世紀にわたって漢方薬事業を展開しているクラシエ薬品だ。「葛根湯」や「コッコアポ」といったロングセラー商品を持ち、国内における一般用漢方薬市場では常にトップシェアを走ってきた。 また、医療用についても国内シェア2位と、名実ともに国内漢方薬市場をけん引する存在だ。 これまでも、飲みにくさを軽減する錠剤タイプや、1日3回が基本とされた服用回数を業界で初めて1日2回にする「KB2スティック」を開発するなど、同社は独自技術を生かして画期的な漢方薬を世に送り出してきた。こうした商品開発とともに、漢方人口の増加に向けて同社が注力してきたのがブランディングである。親しみやすいブランディングで漢方の新規需要を開拓
例えば、商品パッケージを参照いただきたい(26ページ)。漢方薬は従来、漢方薬名が大きく表記されていたデザインが主流だったが、効き目のある症状を全面に打ち出した商品ブランド「漢方セラピー」シリーズを2006年に発売。「のどのつかえ感、不安神経症に」「むくみ、飲みすぎによる二日酔いに」といったように、どんな症状に効くのかを分かりやすくパッケージに明記した。 漢方初心者にとって選びやすいデザインも相まって、漢方セラピーは発売以来、右肩上がりで市場規模を拡大。2017年に30億円だったシリーズ売上高は、2022年に66億円と5年間で2倍以上の急成長を遂げている。 数々の商品ブランドを確立してきたクラシエ薬品だが、さらなるブランド価値の向上を目指して2021年に着手したのが、漢方事業ブランド「クラシエの漢方」のリニューアルだ。その意図について、企画部主任の井内舞氏は次のように話す。 「漢方薬市場が伸びている中、クラシエの漢方薬をさらに伸ばしていきたいと思っています。一般用漢方薬の『葛根湯』は知名度が高く多くの方に知っていただいていますが、当社は医療用漢方薬でも国内シェア2位の実績があります。一般用と医療用の両方を取り扱いながら、お客さまの健康に広く貢献していることを、しっかりと伝えていきたいという思いがありました」 その実現に向けて、新たに打ち出したのが「日本を生きるあなたへ。」というブランドスローガンだ。日本の文化・生活習慣の中で暮らす患者や顧客を真摯に見つめながら伴走し、支えていきたいという思いを込めた。また、同時にブランドロゴを一新。医療用分野と一般用分野の両方で高いシェアを持っているからこそ、より多くの人に使ってもらい、その一人一人の体質や暮らしに寄り添うことができる。医療用と一般用の連携を強化することで、クラシエの漢方として全方位で健康価値を提供していく姿勢を打ち出しているのだ。 そうした姿勢がはっきりと表れているのが、コーポレートブランドであるクラシエの漢方のウェブサイトである。これまで同社では、各商品ブランドや分野ごとに漢方に関するコンテンツを発信していたが、リニューアルを機に、クラシエの漢方の傘下に各種コンテンツを納める構成としたことで、同サイトから漢方に関するあらゆる情報にアクセスできる環境を整備。併せて、一般消費者向けの情報だけでなく企業・医療関係者向けの情報もひも付けることで、医療用分野でも多様な製品を展開していることが伝わりやすくなった。 商品ブランドとコーポレートブランドをひも付けていく。そこに至った経緯を、マーケティング部課長の砂橋久瑠実氏は次のように話す。 「リニューアル以前は、コーポレートブランドの認知がかなり希薄でした。例えば、漢方セラピーという商品名は知られているのに、それがクラシエの商品であるとひも付いていなかったり、『Kampoful Life(カンポフルライフ)』という漢方に関する情報が豊富なオウンドメディアがあるものの、どこが運営しているのか知られていなかったり。一方で、クラシエという社名は、『いち髪』や『ねるねるねるね』といった商品を通して暮らしの中に浸透している状態でした。 そこで2021年に、あらためて漢方薬事業から生まれている価値をクラシエと関連付け、さらに、これまで蓄積されてきた漢方薬事業のブランド資産を個々の製品ブランドと結び付けて、ブランド価値を循環させていこうと取り組みました」デジタル&リアルを駆使し普及に向けて情報発信
「クラシエの漢方」のウェブサイトには、商品情報はもちろん、症状ごとにお勧め漢方を紹介するセルフチェッカー「あすみて」や体質診断ができる「からだかがみ」といった漢方選びの入り口となるツールに加え、漢方薬を処方している医師を探すことができる「漢方ナビ」までそろっている。さらに、「クラシエの漢方が伝えたい100のこと。」では、品質や原材料、製造体制について詳しく情報を提供。漢方薬メーカーの心臓部である情報まで公開することで、高品質や安全性、安定供給に対する同社の思いやこだわりを発信している。 一方、リアルの現場でもクラシエの漢方の浸透に向けた施策が進行中だ。例えば、ドラッグストアなどの店頭で、漢方について分かりやすくまとめた小冊子「漢方はじめてブック」を配布したり、二次元コードを使って処方の解説や注意点を動画で確認できる仕組みを提供したりするなど、消費者と漢方の接点を増やす取り組みを進めている。 また、消費者にアドバイスする立場にある販売員や薬剤師、医師に向けたサポートにも力を注いでおり、医療従事者へ情報提供するオウンドメディア「漢方優美」やeラーニングを活用した販売員向けの漢方勉強会を開講。すでに全国のドラッグストア110社が活用している。 さらに、2024年1月には「漢方セラピー販売店様専用 ホットライン」を開設。「店頭での漢方薬に関するお客さまのお問い合わせは販売員にとって負担が大きく、苦手意識を持つ方もいらっしゃるため、開設に至りました」と砂橋氏は話す。 ウェブサイトやSNS、薬局、病院、メディアなど、あらゆるシーンで漢方との接点を増やして情報を提供し、漢方に対するハードルを下げていく。こうした多様な活動を通して一般用、医療用ともに漢方薬事業の業績は右肩上がりに伸びており、クラシエの漢方は着実に暮らしの中に浸透しつつある。ただ、これはゴールではない。 「漢方を通して生活者の不調を改善していくこと。これが私たちの大きな使命です。そこに腰を据えて、これからもクラシエの漢方の認知を広げていく取り組みを継続していきます。漢方に対して、『分かりづらい』『怪しい』といった印象を持っている方もまだいらっしゃいます。そこを払拭するために、漢方と生活者の距離を縮め、身近に感じていただけるような取り組みを、クラシエの漢方という大きなくくりの中で今後も行っていきたいと考えています」(砂橋氏)
左からクラシエ薬品 マーケティング部 課長 砂橋 久瑠実氏、企画部 主任 井内 舞氏
COLUMN:入り口を増やし、漢方の裾野を広げる
もっと漢方を身近な存在へ。その思いからリアル、ネットを含めて多彩な取り組みを展開するクラシエ薬品。その一環として2013年からクラシエ薬品が運営するのがオウンドメディア「Kampoful Life」(カンポフルライフ)だ。「カラダ」「ココロ」「キレイ」「食べる」「楽しい」の5つの切り口から漢方の知恵や美と健康に役立つ情報を提供するほか、会員登録すると体質診断の結果から自分に合った記事や漢方を勧めてくれる。ECとも連携しており、商品購入も簡単な人気コンテンツだ。 また、CSR活動の1つとして、2017年から小中高校生を対象とする「漢方教室」を全国で展開。2024年8月に兵庫県神戸市で開催された同教室では、実際の生薬を使って葛根湯をつくるプログラムを通して、漢方を身近に感じてもらうと同時に、漢方の有効性や安全性などを子どもたちに直接伝えている。 クラシエ薬品は漢方のリーディングカンパニーとして、間口を広げながら一人一人の体と暮らしを見つめ続けていく。
漢方に関する情報を多面的に発信しているオウンドメディア「Kampoful Life」
クラシエ薬品 (株)
- 所在地 : 東京都港区海岸3-20-20
- 創業 : 1972年
- 代表者 : 代表取締役社長 草柳 徹哉
- 売上高 : 325億円(2023年12月期)