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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.04.01

社会課題を抱える現場を体感し、新たな視点でビジネスを考える:クロスフィールズ

    「社会課題体感フィールドスタディ」参加者。自らの志について深く問い直す管理職・役職者などが多く見られるという  
社会課題を体感することで、ビジネスと社会の両立を考える視点が得られるクロスフィールズの各プログラム。中でも部門長クラスを対象にした「社会課題体感フィールドスタディ」は、組織変革をもたらすプログラムとして注目されている。
 
社会課題に対し、当事者意識を育むプログラム
ESG経営やサステナビリティ経営が大きくクローズアップされ、企業経営やビジネスを取り巻く環境は日々大きく変化している。財務諸表に表れない企業価値を見いだし、サステナブルな世界を目指した新しい事業やイノベーションを起こすためには、従来のビジネスでは立ち行かない。社会課題と向き合い、それを解決する新たなビジネスを創出することが、結果的に企業を成長させることにつながる。 そんな背景から、多くの企業でプログラムが導入されているNPO法人がある。「社会課題が解決され続ける世界」をビジョンに掲げるクロスフィールズである。2011年に創業した同法人は、独自のネットワークを生かし、国内外で社会課題を解決するために奮闘する現地のNGOやスタートアップと日本の民間企業をつなげ、現地の課題解決と企業の意識変革に取り組んできた。 「企業のリーダー人材が国内外の社会課題に対して当事者意識を持ち、ビジネスを通じて課題解決に取り組むという事業構想から、クロスフィールズの活動はスタートしました。さまざまなプログラムに、これまで2600名を超えるビジネスパーソンが参加し、社会課題の現場を体感しています。 ここ10年を振り返ると、民間企業と社会課題の現場との距離は確実に縮まったと感じています」 同社の活動についてそう説明するのは、ディレクターである西川理菜氏だ。同法人は創業と同時に、ビジョンを実現するため「留職プログラム」(【図表1】)という事業を開始した。 このプログラムでは、社会課題の解決を目指す国内外のNGOやスタートアップに、次世代のリーダーとなる若手社員を送り込み、現地の人々とともに課題解決へ取り組む。最低でも3カ月以上は新興国などで現地の人々と協働するため、自らの価値観やリーダーシップの在り方などを問い直す絶好の機会になる。そんなユニークなプログラムが評価され、業種を問わず多くの企業で導入された。 【図表1】留職プログラム ※ 社会課題体感フィールドスタディは「現地訪問型」と「オンライン型」がある 出所 : クロスフィールズホームページよりタナベコンサルティング作成
現地リーダーとの対話が部門長クラスの志を刺激
しかし、留職プログラムは参加者の個人的な意識変化や成長には大きな効果を発揮したが、迅速に組織を変えるまでには至らなかった。要因は、約3カ月間は現地に滞在しなければならないため、企業が多くの人員を参加させにくいこと。また、各企業からの参加者は年間で1~3名程度であるため、同じ体験をした仲間が社内に少なく、学びが伝播しづらいという側面があったのだ。 「留職プログラムを実施する中で、個人と同様に組織自体の意識変化を促す必要があるという考えに至りました。そこで、2017年に新しく開始したプログラムが『社会課題体感フィールドスタディ』です(【図表2】)。このプログラムの参加者は、部門長クラスのエグゼクティブをメインの対象としています。 また、留職プログラムは最低でも3カ月以上、現場に滞在して実施しますが、フィールドスタディは部門長クラスの方々でも参加しやすいように数日間という短期プログラムとして設計しました。さらに、参加人数の上限を30名程度にするなど、一度に多くの人が同じ体験をすることで、組織全体の意識変化が起こりやすいようにしたのです」(西川氏) 社会課題体感フィールドスタディも、留職プログラムと同様に、国内外で社会課題の現場を訪問する。コロナ禍以降はオンライン型のプログラムも実施しており、累計55社(2024年2月現在)が導入した。 プログラムは、事前セッション、本セッション、事後セッションの流れで実施。事前セッションではプログラムの趣旨と目的を共有し、訪問先が取り組む社会課題など、事前情報をインプットする。 その後の本セッションでは、社会課題を抱える現地の訪問や、現地で課題解決に挑むリーダーとの対話を行う。交流を通じて個人の中に生まれた気付きを内省したり、参加者同士で学びを共有したりする。数週間後に実施する事後セッションでは、本セッションでの気付きを「どのように本業へつなげるか」という行動宣言や本セッション後にとった具体的なアクションなどを発表する。 「企業のエグゼクティブの方々は、社会課題とビジネスの関係を考える際に、どうしても『会社組織の一員である自分』という立場を前提に考えがちです。そこで、このプログラムではその前提をいったん取り払い、一個人として社会課題に向き合うことにより、自分自身の在りたい姿を深めていきます。 社会課題をどう捉え、解決に向けてどのように取り組むかという掘り下げに加え、社会課題に取り組むリーダーらの課題解決に向けた真摯な姿勢や行動を見て、そのパッションを感じていただく。その体験が、参加者の志を揺り動かすケースが多いです」(西川氏) 同プログラムは、必ずクロスフィールズのスタッフが同行し、全体のファシリテートや場づくりを実施する。第三者が介入することで、参加者は「企業人の帽子」を脱ぎ、活発に意見交換できるというわけだ。 また、エグゼクティブとともに若手社員も参加させ、現地で立場を超えた意見交換を行う企業も少なくない。意見交換や日常の立場を超えた交流を通して、互いの理解を深めたり、対話することの重要性を再認識したりできるという。  
社会課題やニーズを新事業創出につなげる
社会課題体感フィールドスタディには、実際にさまざまな企業が参加し、成果を上げている。 例えば、ある大手IT企業は、「自社が保有するIT技術と社会課題解決を結び付けてソリューションを提供しなければならない」と頭では理解していても、具体的なビジネスにつなげるためのポイントが見えてこないという悩みを抱えていた。そこで、突破口を見つけようとプログラムに参加。アフリカのルワンダで、モバイルマネーの技術を活用した金融サービスを展開している現地スタートアップの取り組みなどに触れた。 これを契機に参加者は「これまでは市場や顧客のニーズや課題に対してソリューションを提示するというスタンスだったが、社会課題やニーズを発見し、主体的にビジネスを創出することの重要性を感じた」という。 また、ある大手総合商社は、2017年からこのプログラムに参加し、部課長クラスの社員が現地へ赴いている。2022年には、森林など自然の資源を生かしたローカルベンチャー育成事業を支援する岡山県の企業を訪問。地域の資源を生かすためのアイデアを出し合い、地域のステークホルダー全てが協力し合って地域創生をする姿に共鳴した。 「普段のビジネスでは触れることがない社会課題の現場を体験することで、『自らのパーパスと組織の在り方を見つめ直すきっかけになった』という参加者の声を多く聞きます。また、ある企業では、社会課題体感フィールドスタディ参加者が財団法人の立ち上げをリードするなど、具体的なアクションも起こっています。 これらの事例はほんの一部ですが、社会課題体感フィールドスタディへの参加を通して、次の世代を担うエグゼクティブや若手社員の意識に変化が起こっていることを実感しています」(西川氏) こうした実績を積み重ねながら、クロスフィールズはより長期的な視点で事業のインパクトを測っていきたいという。 「社会課題体感フィールドスタディの参加企業にご協力いただきながら、経年変化を見ていきたいと考えています。このプログラムをきっかけに、各企業でどのような変化が生まれているのか、短期的な成果だけではなく、長期的な変化についても把握していきたいと思います」(西川氏) 社会課題の現場と企業の架け橋として奔走するクロスフィールズ。留職プログラムや社会課題体感フィールドスタディ以外にも、テクノロジーを活用して社会課題の現場を疑似体験する「共感VR」など、さまざまなプログラムを提供し、事業を通して社会課題を解決できる「経営者人材」の育成を着実にサポートしている。 クロスフィールズ ディレクター 西川 理菜氏    

(特非)クロスフィールズ

  • 所在地 : 東京都品川区西五反田3-8-3 町原ビル4F
  • 創業 : 2011年
  • 代表者 : 代表理事 小沼 大地
  • 収入 : 2億5562万円(うち事業収入2億2998万円、2022年6月~23年5月)
  • 従業員数 : 26名(業務委託含む、2024年2月現在)