
15事業会社、30ドメインを有して多角化経営を展開するジャパンクリエイトグループ。在るべき姿として打ち出したパーパスを軸とし、さらなる成長を目指して力強く前進する同社の取り組みに迫る。
創業20周年を機にパーパスを策定
2001年にメーカー向けの人材サービス会社として創業したジャパンクリエイトグループは、創業20周年を迎えた2021年にパーパスを策定した。そのパーパスは「Jobfullな明日を」というもの。「Jobfull」とは「Job」と「Joyful」を組み合わせた造語だ。
この言葉に込めた思いは2つある。1つ目は、自らの仕事にやりがいや喜びを感じられる「JoyfulなJob」を、仕事仲間や顧客にも感じてほしいという思い。2つ目は、社会に仕事と雇用があふれる未来をつくり、顧客の要望にいつも真剣に全力で応える「JobがFullである」姿勢だ。「挑戦と創造で未来を切り拓き、人生そのものを満たす」という同社の目指す姿がパーパスで表現されている。
パーパスの策定には、同社の事業や歴史が関係している。創業者でありジャパンクリエイトグループの会長を務める五十嵐庸公氏は、2001年に人材ビジネス会社を設立。人材こそが最大の財産という考えを実践してきた。
「前職は人材ビジネスの社員でした。その会社はトップの鶴の一声で全てが決まる組織体制で、当時の私にとっては『理不尽だ』と感じるような出来事もありました。そんな体験から、起業後は社員が心地良く働ける環境をつくり出すことに重きを置いて経営をしてきたのです。製造業を対象にした人材ビジネスからスタートしましたが、2008年のリーマン・ショックで大打撃を受けて多角化経営にシフト。今ではグループ内に15事業会社、30ドメインの事業、そして56のサービスを提供しています。
これまでも、経営理念である『社業を通じて日本経済の発展に貢献する』を掲げて経営をしてきましたが、多くの会社をグループインしたため、グループの存在意義の再確認をする目的でパーパスの策定に着手しました。また、2021年は20周年であるとともに、コロナ禍で先行きが不透明な状況でもあったので、足元を照らす目的もありました」(五十嵐氏)
同グループの事業領域は、製造・物流のアウトソーシング事業、食品メーカーなどへの人材サービス事業、精肉の生鮮テナント事業や食肉の卸売業、業務用加工食品の開発・生産・販売などの食品流通ビジネスである。加えて直営店やゴルフパートナー、ファミリーマートなどフランチャイズ店の運営を行う店舗運営ビジネス、ウェブ・プロモーション企画、地質調査、機械校正などの環境インフラ・機械校正事業、旅行代理店など、多岐にわたる事業を展開している。
まったく異なる複数の事業を展開するジャパンクリエイトグループにとって、自社の存在意義を再確認するパーパスの策定は自然の流れだった。
出所:ジャパンクリエイトグループ「BRAND BOOK」を基にタナベコンサルティング作成
社員への浸透を推進する各種ツール
ジャパンクリエイトグループのパーパスの策定方法は、社員の働く環境づくりを重要視する同社らしいものだった。まず、グループの未来を担う若手社員によるジュニアボードチームを発足し、各事業会社の広報部門と連携してパーパス策定の事務局として機能させた。その上でグループの事業会社の全社員、約750名に対してアンケートを実施するとともに、大手企業などのパーパスを研究し、その中から自社にふさわしい言葉の候補をいくつか絞り込んで、役員会議に諮って決定した。
「パーパスは企業の社会での存在意義であると同時に、社員一人一人が自分自身の実践すべき行動を考える際に立ち戻る場所でもあります。以前からあったクレドは、社員が自分のすべき行動は何なのかを示す行動指針として役割を果たしてきましたが、パーパスもクレドと同じように社員が『自分事』として捉え、日々の活動の中で意識してもらうことが何よりも大切だと考えました。そのような考えから、全社員でパーパス策定に取り組めるよう、ジュニアボードチームでのテーマにするとともに、社員アンケートを実施しました」(五十嵐氏)
社員参加型で生まれたパーパスを浸透させるために、朝礼や会議での唱和を行うなど、常に意識する機会を設けている。加えて、名刺や自社のホームページなどにもパーパスを記載し、社員や取引先が自然と目にするように工夫した。
「グループのオフィシャルサイトでは、トップページに『Jobfullな明日を』という言葉がファーストビューとして見えるようにデザインしました。また、パーパスが伝わるようブランドムービーを載せ、特設サイトも設けました。さらに『BRAND BOOK』では、パーパスだけでなく、創業の思いやパーパスの策定に当たっての考え方、経営方針などを分かりやすく紹介しています。社外からの注目を集めることに加え、あらゆるところで社員がパーパスに触れることで、日頃からパーパスに向き合えるのではないかと考えたからです」
そう話すのは、専務取締役の安達信也氏である。安達氏はパーパス策定の責任者として指揮を執ってきた。こうしてパーパス「Jobfullな明日を」は今後のグループの在り方を示す道標として機能するようになった。
本社の最寄駅に掲示されている同グループの広告
パーパス浸透のため、全社員に支給しているクレドブックやBRAND BOOK、社内に掲示しているポスターなど
中長期経営計画に落とし込み浸透度を見える化
パーパスを策定した2021年、同グループでは中長期経営計画も策定した。その中にある中長期ビジョンロードマップには、2030年の数値目標とともに、取り組むべきミッションが年度ごとに記されている。
主な項目としては、「経営の付加価値向上」「CSRの整備」「BCP(事業継続計画)に対する取り組み」「リスクマネジメントについての考え方」「健康経営の推進」などとともに、パーパスに関する「コーポレートブランディング確立」を設けている。つまり、パーパス策定をゴールではなくスタートとし、それをいかに社員に周知・浸透させていくかを、中長期経営計画に落とし込んで実践しているのだ。
「中長期経営計画を策定した当初は、2030年のグループの総売上目標は700億円だったのですが、2023年3月期に650億円を達成したので、今年度(2024年3月期)には達成する見込みです。そこで、現在は900億円に上方修正するなど予想以上の成長を遂げています。
目標を達成するために全社を挙げて取り組むべきことを、項目ごとに明記したのが中長期ビジョンロードマップです。社員に対してはパーパスの周知・理解の推進や、学びの実践についても組み込みました」(五十嵐氏)
パーパスの周知・理解を推進する施策は、先述した朝礼での唱和やブランドムービー、BRAND BOOKなどの各種ツールである。ツール以外にも「JCアカデミー」という社内研修とeラーニングシステムで、パーパスを策定した背景や経営陣の思いなどを学ぶことができる。
「ただ各種ツールやeラーニングでパーパスの周知や理解を促すだけでは、パーパス経営とは言えません。パーパスが社員に腹落ちして意識改革や行動変容が現れてこそ真のパーパス経営になると考えています。ですから、各種施策の成果を測るために、毎年、社員アンケートを行い、パーパスの理解度や浸透度の見える化をしています。
まだ、パーパスを制定してから2年ですから大きな変化は表れていませんが、今後も引き続き定期的にアンケートなどを行うことで浸透度を見ていきたいと考えています」(安達氏)
パーパスを策定したことで生まれた変化がある。それは、若い世代の共感だ。Z世代は、企業の規模や知名度ではなく、社会貢献性の高さやパーパスなど経営の在り方などを重視する傾向にある。
「当グループのパーパスは、働くことや社会貢献の在り方を明確に示しているため、おかげさまで大学生に好評を博し、リクルーティングに好影響が出ています。また、新入社員研修では必ずパーパスについての講義を行いますが、90%近い社員が理解していることがアンケートで分かりました。
少しずつですが、パーパスは社員の行動基準として定着していると感じています。近い将来、社外の人々からも『Jobfullな明日を』のジャパンクリエイトグループ、と呼ばれるくらい広く知られるパーパスにしていきたいですね」(五十嵐氏)
これまで社員の「働きやすさ」を目指して環境を整備してきたジャパンクリエイトグループだが、今後は社員一人一人が「Jobfullな明日を」を実践することで、「働きがいのある」環境づくりに取り組んでいく。
ジャパンクリエイトグループ 代表取締役会長 五十嵐 庸公氏(右)
専務取締役 CSO兼CIO 経営戦略本部 本部長 安達 信也氏(左)
PROFILE
- (株)ジャパンクリエイトグループ
- 所在地 : 大阪府大阪市淀川区東三国4-3-1 グロリア240 3F
- 設立 : 2011年(ジャパンクリエイト創業:2001年)
- 代表者 : 代表取締役会長 五十嵐 庸公
- 売上高 : 650億円(2023年3月期)
- 従業員数 : 758名(2023年6月現在)