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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2023.05.01

本気で考え動くトップ層を育成:東京システム運輸ホールディングス

   

グループ各社が支え合い、競い、刺激し合いながら成長を続ける東京システム運輸ホールディングス。「自分たちで決めたことは必ず達成する」というモチベーションが、8期連続増収(連結)という成果を生んでいる。

   
新設子会社はスタートアップ企業
  東京システム運輸がホールディングス化に踏み切ったのは2010年。創業45年の節目に、創業オーナーの引き継ぎ事業承継と、次世代経営陣の育成が目下の課題として浮上している時期だった。   連結売上高が100億円を超え、2002年に子会社化した東京ユニオン物流と事業内容が重複する部分もあり、両社の役割をあらためて整理する必要性にも迫られていた。   「当社は純粋持ち株会社ではなく、事業持ち株会社としてホールディングス化を進めることになっていたので、実務責任者としてホールディング会社とグループ会社との間で事業をどう割り振るか、そのグランドデザインから着手しました」と、代表取締役社長の細川武紀氏は語る。   東京ユニオン物流は首都圏特化の運送クオリティーを追求する「運輸事業」、2010年10月に新設する東京ロジファクトリーは、戦略的な物流ソリューションを提案する「倉庫事業」と定義。   ホールディング会社となる東京システム運輸ホールディングス(以降、東京システム運輸HD)の役割は、①グループ会社の経営指導、②フランチャイズマネジメント、③物流センターをはじめとする不動産の管理、④物流関連情報システムの開発および販売、⑤物流ノウハウを生かして応用展開する太陽光発電事業や介護事業、の5つである。   東京ユニオン物流への吸収分割と東京ロジファクトリーの新設分割に向けて与えられた準備期間は、臨時株主総会開催までの実質6カ月しかなかった。当時、経理部の課長として実務に当たっていた細川氏は、こう振り返る。   「新設する子会社は、1期目の会社です。いざ立ち上げてみると、金融機関から担保率の低さを指摘されることもあれば、取引先から『設立して間もない企業との取引は控えたい』と懸念されるケースもありました。もちろん、配属する社員への同一労働条件の説明と理解も重要です。   そのほか、登記・税務・金融システムの設定など全てゼロからのスタートだったので、いわばスタートアップの草創期と同様に、分社直後のバックオフィス業務は膨大でした。創立日から、初めての連結決算の算出に向けた経理・財務業務が否応なくスタートするのです。ホールディングス化する際には、その点を十分に心得た上で臨むべきだと強く感じました」(細川氏)   新体制を構築する中、あらためて浮き彫りになった縁の下で事業を支えるバックオフィス部門の重要性。東京システム運輸HDの社員が新設子会社の業務も兼任するという異例の事態が続く中で迎えた2011年3月期、連結決算は創立来初の赤字という痛恨の結果になった。   当時、成長市場であったドラッグストア業界を対象とした、新規物流業務の立ち上げが控えていた2期目を前に、社内には暗雲が立ち込めた。しかし、その渦中で行く先を照らしたのが、細川氏を含む次世代の選抜メンバー10名が2008年に策定していた中期経営計画だったという。   スピーディーな梱包と省人化を可能にした自動梱包機。2008年にリリースした小規模EC物流サービス「NetDepot(ネットデポ)」では、検品や流通加工をはじめとする倉庫作業はもちろんのこと、さまざまな機能で顧客の物流をサポートする
自分で学んだ経営のイロハを教え合う
  この中期経営計画は、東京システム運輸グループとして初めて外部アドバイザーを招き、2009年から2019年までの10カ年ビジョンを描いたものだ。「後継者育成を目的とした実践研修の場」という狙いもあった。   中期経営計画の完成に投じた時間はトータルで2000時間以上。一人一人が調べた経営手法や財務業務の基本を資料にまとめて、メンバー同士で教え合いながら自社のSWOT分析※1、PPM分析※2などを進めた。ビジネス環境やマーケティングについて互いの知識や理解を深めるため、新聞や業界紙を読み上げて30文字以内で要約する訓練も重ねた。   さらに、物流業界で自社がどの位置にいるのかを客観的に分析。「数値化できるものだけを強みとする」という方針を立て、バブルチャートで徹底的に分析した。そうしてたどり着いたのが、「物流商品製造業」という事業ドメインだった。   「何のためのホールディングス化なのか。どこを目指して成長していくための分社化なのか。グループ全体の事業ドメインが明確になっていなければ、ホールディングス経営は成り立たなかったと思います」と細川氏は語る。中期経営計画という航海図を握りしめて奮起し、実現に向けて走り続けた結果、2019年には売上高151億円を達成した。   「物流サービスは、モノが製造されて消費者に供給されるまでの時空間に必ず発生する究極のサブスクリプションサービスです。したがって、当社が開発すべきは『フルフィルメント※3の物流システムである』と、気付くことができたのが1番の成果でした」(細川氏)   事業ドメインを物流商品製造業と定義した成果の1つとして生まれたのが、2008年にリリースした小規模EC向け物流サービス「NetDepot(ネットデポ)」。ブランド化戦略であり、商標登録済みだ。今や年商30億円規模となっている。1棚月額6500円からの料金設定で、倉庫内フォトスタジオや自動梱包機を完備。メッセージカードの発行や同梱、顧客専用バーコードの発行、貼付、冷蔵・冷凍管理などのオプションも用意している。   2019年には大学発のベンチャー企業と共同でマルチピッキングカートシステム※4も開発。同業他社に情報システム、商標権、作業ノウハウを貸与して、全国でフランチャイズ展開している。  
ホールディング会社を“親会社”と呼ばない
分社して2年後の2012年からは、ホールディング会社に籍を置く執行役員が子会社に出向し、鳥瞰的に事業推進をサポートしている。   細川氏は、「親会社・子会社という上下関係ではなく、『同じゴールに向かっている“兄弟会社”なのだ』というフラットな意識を持ち、互いの役割を理解し合える文化を定着させるまでに10年かかりました」と、率直に明かす。   新入社員はすぐに配属を決めず、約1年間かけてグループ各社を巡回、6部署程度を経験させてから、各事業部の意見を参考に最終的な配属先を決める。早い段階で適性を見抜くことで、早期離職率が下がったという。   また、現時点ではコロナ禍の影響で具体的な活動ができずにいるが、釣り・ゴルフ・将棋・ラーメンなど、趣味でつながる社内コミュニティーの立ち上げも計画中だ。ホールディング会社のオフィス内には、雑談も含めて社員が気軽にコミュニケーションするためのラウンジやカフェスペースが設けられている。   その上で、「ホールディング会社だけは絶対に赤字になってはいけない」と、細川氏は強調する。先の見通しが立たない時代において、いざというときグループ会社を守ることができる大黒柱が必要だからだ。物流業に関連した不動産の開発・管理をホールディング会社が担っているのも、安定した利益が入るビジネスモデルの確立を目指したからだという。   持続可能な経営は、健全なキャッシュフローがあってこそ成立する。その認識に立ち、ホールディング会社とグループ会社それぞれが果たすべき役割を社内に浸透させている。    
エリア集中で地域に新しい価値を創造
2010年のホールディングス化から13年。東京システム運輸HDが持続的に成長してきた背景にあるのが「ドミナント戦略」だ。2020年に本社を東京都立川市に移転したのも、拠点の南北100km圏内に営業所を集中させるためである。これまでにも、1都2県に63拠点、17万9500坪の物流拠点を戦略的に開設してきた。   「ターミナルX」というブランドで商標登録している多機能型のクロスドッキングセンターは、東京都武蔵村山市を拠点に埼玉県、神奈川県へ累計9カ所設置。1都2県をつなぎ、取引先企業内の工場・倉庫・物流センター・営業所間のバリューチェーンで発生する物流費を一連の料金体系(変動制)にするノウハウと、「横持ち配送」の効率化をサポートしている。   「物流業界の競争原理の面白さは、売り上げ規模の大きい企業が受注するとは限らないことにあります。最適な場所にラストワンマイルがあれば、ジャイアントキリングを起こすことも可能です。大切なのは、「そのエリアで信頼を勝ち得ているかどうか」。国土交通省の『物流を取り巻く動向と物流施策の現状について』(2020年7月)によると、物流業界で働く人は全国約258万人で、全産業就業者数の約4%を占めます。   地域に雇用を生み出す社会インフラとして、『ここで働きたい』と思う人たちを引き寄せることも、『信頼』という無形の価値を高めていくことにつながるはずだと考えています」(細川氏)   「目に見えない企業の資産とは何か」「何のために売り上げを上げるのか」を徹底的に議論した末に見えてきた、「地域企業と連携してエリア全体にさまざまな相乗効果を生み出していく」という自社の在りたい姿。その実現に向け、今後も東京システム運輸HDは、2020年~2030年までの10カ年中期経営計画にのっとり、「物流商品製造業+Plus×THE東京ロジスティクス」としての存在感を高めていく。   東京システム運輸ホールディングス 代表取締役社長 細川 武紀氏 ※1 自社の社内リソースと自社を取り巻く外部要因を照らし合わせて分析し、今後挑戦できる市場領域や解決すべき事業課題を見つける手法 ※2 事業を複数展開する企業が、どのように資金を分配するかを検討・分析する手法 ※3 商品が注文されてからエンドユーザーに届くまでに必要な業務全般 ※4 複数注文に対応したピッキングカートシステム。最短・最適ルートの経路探索によりピッキング時間を大幅に短縮できる  

PROFILE

  • 東京システム運輸ホールディングス(株)
  • 所在地:東京都立川市曙町2-38-5 立川ビジネスセンタービル6F
  • 創業:1967年
  • 代表者:代表取締役社長 細川 武紀
  • 売上高:158億円(連結、2022年3月期)
  • 従業員数:1500名(連結、2022年4月現在)