誰もが納得し発展する循環型モデルを目指す:花王
出所:花王「花王統合レポート 2022」(2022年6月)よりタナベコンサルティング作成
2030年までのコミットメントとアクションを明文化し、19の重点取り組みテーマ(マテリアリティ)を選定。それぞれに指標や中長期目標を設定し、各事業部門が目標計画に落とし込み、バリューチェーンを通じた事業活動で社会貢献を進めている。
KLP実現に向けて、特に環境領域では「ゼロ浪費・カーボンゼロ」を掲げ、自然と調和する事業運営を体現する脱炭素・ごみゼロなどへの包括的アプローチや、サーキュラーエコノミー(循環型経済システム)を重視する変革、競合他社やマルチステークホルダーとの新しい協働などを推進している。
カーボンニュートラルに関する目標として、2040年にカーボンゼロ、2050年にカーボンネガティブの実現を目指し、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)を1.5℃レベルに引き上げた。また、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄う「RE100」にも参画した。
プラスチックバリューチェーン企業として、プラスチック廃棄物ゼロや、製品・ブランドのデザインにESGの視点を組み込み、循環型の社会・事業にポジティブインパクトを与える「ESGよきモノづくり」の創出にも挑んでいる。製品の包装容器に100%再生プラスチックやケミカルリサイクル PET 素材を採用。業界やバリューチェーン、自治体などパートナーとは、リサイクルイノベーションの新システム構築、環境トレーサビリティーの確保でも協働している。
2021年には、KLPを社内外により広く発信し社員の挑戦意識を改革すること、ESG 経営の透明性を高めることを目的に、OKR(達成目標管理)システムを導入。全社のESGに関する取り組みの認知度が飛躍的に向上し、KLP実現に挑む企業文化も醸成している。ESG経営を言葉で把握するだけでなく、確かなマインドに落とし込んでいるのだ。
KLPはコーポレート・製品ブランドの価値・信用度の向上にも貢献している。米国のシンクタンクであるエシスフィア・インスティテュートが発表する「World’s Most Ethical Companies® 2022」(世界で最も倫理的な企業)に16年連続で選定された。また、企業が開示した環境情報を基に8段階で格付けする国際NGOであるCDPからは、2022年に「気候変動」「森林」「水」の分野で最高評価「A」のトリプルA評価を3年連続で獲得した。
2020年には、米国でKLPの実現をパーパスとしたブランド「MyKirei by KAO」の販売を開始。同社の技術力と独自の環境・社会に配慮した商品群を提案し、日本や欧州、アジアにも展開予定だ。
「KLPは経営ビジョンを達成する軸」「ESGは投資であり未来の財務」と位置付ける花王は、既存事業領域の清潔・健康・美を深化・拡張することで、社会へのインパクトをさらに高めながら事業も成長させている。
IoXソリューションで新たな価値を創造:日鉄ソリューションズ
DXによるビジネス変革やイノベーションが企業の競争力や価値を左右する時代を迎え、ITインテグレーターとして多様な顧客課題を解決している日鉄ソリューションズ。同社はパーパスである「ともに未来を考え社会の新たな可能性をテクノロジーと情熱で切り拓く」のもと、ESGの観点によるサステナビリティ経営で持続的な社会の実現に貢献する事業活動を展開し、5つのマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)を定めている。
特に、社会への取り組み(Society:社会)領域では、顧客のビジネス環境の複雑・高度化に即応するため、「IoT(モノ)×IoH(ヒト)=IoXソリューション(高度な連携・協調)」によるIT進化を推進。ウェアラブルデバイスを用いた遠隔作業支援で安心・安全な作業現場を実現する「安全見守りくん」、「働き方改革」やリモートワークを支える仮想デスクトップ環境「M3DaaS(エムキューブダース)」など新たな価値を創造し、ITを通じて社会課題を解決している。
また、自社の成長と事業への貢献を実感できるワークスタイルの変革や女性活躍・健康経営の推進など、エンゲージメントの高い組織・環境づくりを推進。2021年には自社サービスのエムキューブダースを活用し、誰もが自律的に働く場所を選択できる「全社員原則在宅勤務制度」を導入した。女性活躍推進では、新卒採用の女性採用比率30%以上と採用数拡大、仕事と育児・介護などのライフイベントの両立支援制度を強化し、子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を受けている。
人材育成も経営における最重要事項と位置付け、高度な専門性と幅広い経験、強いリーダシップを備える次世代人材の育成機関「NSSOLアカデミー」を開設した。
社会・地域との関わりでは、ITの将来を支える次世代教育支援として、大学向けに寄付講義や非常勤講師を派遣し、奨学金を提供。小・中・高校向けには、SE(システムエンジニア)を体験できるプログラミング講座や出張授業を実施している。
また、地域への貢献として、全国の事業所所在地で祭りや清掃活動などの地域活動に参加。日本赤十字社などを通じた募金活動も2021年度は約6000万円を寄付した。
社会・ビジネス・技術が高速に変化する時代に対応する鍵は、「自らを変化可能な姿に変える」ことにある。日鉄ソリューションズは、自社がサステナビリティ経営に向き合うスタンスも、「配慮」から「社会やビジネスの主軸」へと変えている。
持続可能な社会と自社の未来をガバナンス強化で実現:セブン銀行
日本全国に約2万6000台のATM(現金自動預け払い機)を設置し、年間総利用件数は9億1000万件を超えるセブン銀行。「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」をパーパスに定め、中核事業のATMプラットフォーム戦略から金融サービスの枠組みを超えて、「『近くて便利』『信頼と安心』を実現するユニークな銀行」を目指す姿に掲げる。
同社は、創業時から社会・環境の価値追求と事業活動の両立を社是や企業理念に掲げてきた。2021年には、サステナビリティを長期的な経営戦略の根幹と位置付け、社会課題解決への貢献や持続的成長と企業価値向上による成長戦略を策定。2030年までの5つの重点課題(マテリアリティ)を定め、経営判断・行動基準の羅針盤としている。
ガバナンスの強化は、公共インフラであるATMネットワークを保有・運営する銀行の使命と、規律ある経営で果たすべき社会的信頼・責任を踏まえて、重要経営課題に選定。意思決定の透明性・公正性・迅速性の確保、取締役会や監査会による業務執行の役割と責任の明確化、適正な業務・コンプライアンス体制の整備・充実など、実効性あるコーポレートガバナンスの実現を目指している。
意思決定・監督機能を発揮する取締役会は、専門性の高い業務執行取締役と、豊富な経験や高い見識を持つ社外取締役による意思決定、監査役による適正な監査などにより、取締役会の独立性を強化し、多様性・専門性もバランスよく拡充した。また、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定し、社外取締役は選任理由や業績連動型の公平・公正な報酬制度、監査役は社外監査役比率など、ガバナンス体制・状況を記載した「コーポレートガバナンスに関する報告書」を作成し、自社ホームページなどで公開している。
最重要経営課題として、コンプライアンスの徹底も推進している。BCP(事業継続計画)を作成し、事業継続を確実に行う「コンプライアンス・マニュアル」を制定。定期的な部署別の業務継続訓練、社員の意識・知識を高めるコンプライアンスチェック、個人情報管理の徹底などを実施している。
また、信用・市場・流動性・オペレーションなどの「リスク管理基本方針」、その下位規程である「統合的リスク管理規程」も制定し、経営会議では四半期ごとに全社的なリスク状況を確認している。
独立性・透明性のあるガバナンス方針、持続性のあるコンプライアンス体制、明確なリスク管理――。どれか1つが欠けても健全なESG経営が成り立たないことを、セブン銀行は体現している。
人と地球に貢献する「Kirei Lifestyle Plan」
創業以来、人々の暮らしに寄り添い、清潔で豊かな生活文化を実現する日用品・化学品メーカーとして社会繁栄に貢献する花王。顧客起点で消費者志向の事業活動を推進する企業理念「花王ウェイ」を自社の拠りどころに、2021年にパーパスを「豊かな共生世界の実現」にアップデートした。 同社は、気候変動や資源枯渇、プラスチックごみ問題、環境や人権に配慮するエシカル消費の高まりなどを背景に、「購買意識・行動が多様化する事業環境の変化に対して、自社変革なくして未来に大きな発展は望めない」と危機感を抱き、ESG 経営を根幹に据えて長期経営ビジョン「K30」を策定。①持続的社会に欠かせない企業、②高社会貢献&高収益グローバル企業、③ステークホルダーへの成長レベル還元、これら3つを目標に、2030年までに達成したい姿を「グローバルで存在価値ある企業『Kao』」と定め、売上高2兆5000億円を見据えている。 2021年度には、「未来のいのちを守る~Sustainability as the only path」をビジョンに、中期経営計画「K25」がスタート。既存事業を高収益で強くてしなやか姿に再生する「Reborn Kao」と、未来のいのちを守る新事業の創成「Another Kao」を両輪に変革を推進している。「Maximum with minimum(最小限の資源で最大価値を)」の実現に向けて、「消費を前提としたモノづくり」から「資源を循環させるモノづくり」、「数と量の線形型経済」から「質と絆の循環型経済」へと、誰もが納得し発展する循環型のビジネスモデルの構築を目指している。 花王がESG経営の基軸として2019年から推進するのが、「Kirei Lifestyle Plan」(KLP)だ。 「全ての人と地球にとってより清潔で美しく健やかな暮らし方」をKirei Lifestyleと定義し、「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「よりすこやかな地球のために」の3本柱と、その共通基盤となる「正道」で構成されている。(【図表】) 【図表】花王のESGコミットメントとアクション
出所:花王「花王統合レポート 2022」(2022年6月)よりタナベコンサルティング作成
2030年までのコミットメントとアクションを明文化し、19の重点取り組みテーマ(マテリアリティ)を選定。それぞれに指標や中長期目標を設定し、各事業部門が目標計画に落とし込み、バリューチェーンを通じた事業活動で社会貢献を進めている。
KLP実現に向けて、特に環境領域では「ゼロ浪費・カーボンゼロ」を掲げ、自然と調和する事業運営を体現する脱炭素・ごみゼロなどへの包括的アプローチや、サーキュラーエコノミー(循環型経済システム)を重視する変革、競合他社やマルチステークホルダーとの新しい協働などを推進している。
カーボンニュートラルに関する目標として、2040年にカーボンゼロ、2050年にカーボンネガティブの実現を目指し、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)を1.5℃レベルに引き上げた。また、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄う「RE100」にも参画した。
プラスチックバリューチェーン企業として、プラスチック廃棄物ゼロや、製品・ブランドのデザインにESGの視点を組み込み、循環型の社会・事業にポジティブインパクトを与える「ESGよきモノづくり」の創出にも挑んでいる。製品の包装容器に100%再生プラスチックやケミカルリサイクル PET 素材を採用。業界やバリューチェーン、自治体などパートナーとは、リサイクルイノベーションの新システム構築、環境トレーサビリティーの確保でも協働している。
2021年には、KLPを社内外により広く発信し社員の挑戦意識を改革すること、ESG 経営の透明性を高めることを目的に、OKR(達成目標管理)システムを導入。全社のESGに関する取り組みの認知度が飛躍的に向上し、KLP実現に挑む企業文化も醸成している。ESG経営を言葉で把握するだけでなく、確かなマインドに落とし込んでいるのだ。
KLPはコーポレート・製品ブランドの価値・信用度の向上にも貢献している。米国のシンクタンクであるエシスフィア・インスティテュートが発表する「World’s Most Ethical Companies® 2022」(世界で最も倫理的な企業)に16年連続で選定された。また、企業が開示した環境情報を基に8段階で格付けする国際NGOであるCDPからは、2022年に「気候変動」「森林」「水」の分野で最高評価「A」のトリプルA評価を3年連続で獲得した。
2020年には、米国でKLPの実現をパーパスとしたブランド「MyKirei by KAO」の販売を開始。同社の技術力と独自の環境・社会に配慮した商品群を提案し、日本や欧州、アジアにも展開予定だ。
「KLPは経営ビジョンを達成する軸」「ESGは投資であり未来の財務」と位置付ける花王は、既存事業領域の清潔・健康・美を深化・拡張することで、社会へのインパクトをさらに高めながら事業も成長させている。
PROFILE
- 花王(株)
- 所在地:東京都中央区日本橋茅場町1-14-10
- 創業:1887年
- 代表者:代表取締役 社長執行役員 長谷部 佳宏
PROFILE
- 日鉄ソリューションズ(株)
- 所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー
- 設立:1980年
- 代表者:代表取締役社長 森田 宏之
PROFILE
- (株)セブン銀行
- 所在地:東京都千代田区丸の内1-6-1
- 設立:2001年
- 代表者:代表取締役社長 松橋 正明