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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2023.02.01

部門間連携とデータ活用を強みにデジタルマーケティングを推進:NEC

   

コロナ禍よりも以前から営業、マーケティングのDXを進めてきたNEC。「目的」「戦略」を重視したデジタルマーケティングを推進し、事業のさらなる成長を目指している。

   
営業&マーケティングの連携とデジタルシフトが加速
  デジタルマーケティング導入で大きな成果を上げている企業がある。「DX銘柄2021」に選ばれ、「NIKKEI BtoBマーケティングアワード2021」優秀賞も受賞した日本電気(以降、NEC)である。いずれも先進的なデジタルマーケティングの取り組みが評価された証しだが、そのスタートは2004年までさかのぼる。   NECは同年、オウンドメディアのビジネス情報サイト「wisdom」を開設。その会員データを活用してメールマーケティングに着手した。2015年にはメールマーケティングとテレマーケティングを組み合わせた活動を開始。さらに2016年にはインサイドセールス部門を立ち上げ、テレマーケティングからインサイドセールスにつなぐ体制を構築した。   「確実にデジタルシフトしていたのですが、当社にはさまざまなチャネルから入手した顧客データがあったため一元管理化できておらず、生かし切れていませんでした。   そうした背景があって2019年には、全社的にデジタルマーケティングに取り組むことになりました。その矢先の2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、一気にデジタルマーケティングが加速しました」   そう説明するのはIMC統括部主任の田中絵美氏。営業本部と二人三脚でデジタルマーケティングの戦略や施策を担当している一人だ。   IMC統括部はNECのデジタルマーケティングの司令塔として、戦略立案から施策実施までを担当。営業のデジタルシフト推進、デジタルマーケティングやデータ活用の基盤整備、VOC(Voice of Customer)分析、オウンドメディアやイベントの企画運営など、多様なチームが連携し合いながら活動している。   前述のような営業本部との連携によるデジタルマーケティングのほか、IMC統括部ではAI、ネットワーク、生体認証など製品ごとのデジタルマーケティングも推進している。そこで活動するのが、マネージャーの板本真一氏である。   「問い合わせを頂いた段階で、お客さまの検討はすでに進んでいるものです。そのため、いかに検討段階から継続的にアプローチし、顧客として育てていくかがミッションです」(板本氏)    
目的を明確化・共有し、戦略に落とし込む
  デジタルマーケティング推進に向けて、NECでまず取り組んだのが、社内でバラバラに運用していたデータの一元管理である。メールマーケティングやオウンドメディアなどで入手した顧客情報に、営業部門が保有していた顧客への訪問履歴や受注履歴などの営業情報を融合させることで、リードを可視化した。このリードにタイムリーな情報を提供して接点を持つことで、商談、成約へつなげるわけだ。   デジタルマーケティングを推進する際にありがちなのが、イベントやセミナー開催といった施策から手をつける方法だ。しかしこの場合、いつの間にか施策の実施自体が目的化しかねない。   これに対し、NECでは施策の実施以上に「目的の設定と明確化」、それを実現する「戦略の策定」を徹底している。   「例えば、いくらの売上増を目指すのか、どれぐらい生産性を向上させたいのかといった目的を明確にし、具体的な数字へ落とし込みます。次に、達成するためのペルソナやカスタマージャーニーを設定する戦略立案を行います。そしてその戦略に基づき、ペルソナに一番届きやすい方法でアプローチしていきます。   戦略策定から施策までをマーケティング部門だけでなく、営業部門、製品部門が三位一体となって、互いが腹落ちするまで議論を重ねます。これにより共通認識が生まれ、デジタルマーケティング推進のエンジンになったと感じます。このような取り組みを通じて、営業を介さず、デジタルマーケティングとインサイドセールスで完結する受注モデルが生まれました」と田中氏は言う。   また、施策を実行し、効果が出なければ次の施策を考えるといった試行錯誤を通じ、ペルソナごとの有効な施策が見えてきたという。同社は今後、実践から見えてきたデジタルマーケティング戦略策定の「型」をナレッジ化し、他の製品や業種にも水平展開していく考えである。            
ターゲットの明確化とKPI管理が奏功
  顕著な成果を上げているNECのデジタルマーケティングだが、当初から順調だったわけではない。   例えばある製品(部門)では、担当者が経験や個々の能力に基づいて長年活動を行ってきた。従来の方法で結果を出してきた成功体験があるため、デジタルマーケティングには抵抗もあった。そうした中、成功のポイントとなったのが「社員の意識変容を起こすこと」だったと板本氏は振り返る。   「各事業部はそもそもペルソナ設定の経験がなかったので、そこを理解してもらうことから始めました。例えば、誰に対して売りたいのかと聞くと、少しでも広い対象を持ちたいため、『ターゲットを絞らず、みんなに売りたい』という回答になりがち。また、人によって売りたいターゲットが異なる場合もありました。   そこで、これまでの受注リストなどを共有・分析して受注セグメントや商談履歴などのデータを提示し、事業部で共通のペルソナを設定し、有効な施策を一緒に考えていきました」(板本氏)   もう1つ、成功の鍵となったのが「スモールスタート」である。   「ある業種向けのプロダクトでデジタルマーケティングの効果が出れば、類似製品や同じようなペルソナの製品にも試していく。こうした地道な活動で、営業や製品部門の認識が変化しました。   大切なのはPDCAを回しながら改善していくことです。デジタルマーケティングの優れた点は数値で可視化できることですから、反応率の悪い施策があれば、異なる施策を試しながら成果を上げていく。そのプロセスを共有することで社員のデジタルマーケティングへの評価が高まりました」(田中氏)   加えて重要なのはKPI(重要業績評価指標)の設定であると言う。デジタルマーケティングの目的を明確にするとともに、具体的な数値目標を定めることで施策が打ち出しやすくなる。   例えばKPIを達成するためには、広告やイベントを何本打つ必要があるのかといった具体策に落とし込みやすくなる。また、達成できない場合、その要因を検証して改善策を考えることができる。   「実施したことのない取り組みに関するKPI設定は敬遠されがちですが、一緒になって事業部や営業のKPI達成に取り組み、進捗について都度共有し、適宜フォローすることで、確実に成果へつなげています(【図表】)」(板本氏)     【図表】営業・インサイドセールス・マーケティングの協業 出所:NEC提供資料よりタナベコンサルティング作成      
イベントのオンライン開催がリード獲得増や生産性向上へ直結
  NECのデジタルマーケティング活用の代表例は、毎年開催するイベント「NEC Visionary Week」だ。従来はリアル開催のイベントとしてさまざまな製品や技術を紹介してきたが、コロナ禍の2020年は急きょオンラインへ変更した。   「(同イベントでは)製品などの紹介とともに有識者の講演も開催・配信しているのですが、現在は参加者の講演視聴履歴やアンケートの回答内容をほぼリアルタイムで全社員が閲覧できるようになりました。つまり、どのお客さまが商談できそうなのかが、即時に把握できるようになったのです」   そう説明するのはIMC統括部デジタルマーケティング基盤・データ分析グループのマーケティングマネージャーの中島拓也氏だ。しかし、システムは一朝一夕に構築されたわけではない。まずオンライン開催を余儀なくされた2020年、わずか数カ月で対応できるシステムを構築した。   「システムを運用した結果、営業サイドから『すぐに参加者の情報が見られるようになれば、的確に次の施策を打てる』という要望があったため、システムのアップデートを図り、参加者の情報が即時に共有できるシステムを構築し、翌21年から運用しています」(中島氏)   「オンライン開催とデジタルマーケティングにより、思わぬニーズも顕在化しました。例えば、多忙なユーザーの多いある業種では、リアル開催だと参加率が低かったのですが、オンラインだと職場や都合の良いタイミングで参加できるため、参加率が上がり、リード獲得数の増加につながりました。ペルソナによってオンライン・リアルの好みが分かれるので、仮説検証を繰り返しながらニーズに対応していきたいと考えています」(田中氏)   他にもさまざまな効果が表れている。例えば、ある製品の場合、以前と同じ売り上げを達成するのに、従来の半分の営業工数で済むようになったという。データの一元化やAIによるデータ解析により、これまで人が行っていた業務がなくなったためだ。こうした生産性向上もデジタルマーケティングの大きな成果と言えるだろう。   「この3年でデジタルマーケティングはかなり定着しました。しかし、まだ活用していない事業部が多いのも事実です。さらに社内で広げていくため、正しい知識や成功事例を共有できる場を設けて情報発信しています」(板本氏)   板本氏はデジタル人材の育成も同時に行うことで、「デジタルマーケティングが当たり前」の企業文化にしていきたいと言う。   デジタルマーケティングを支えるデータ基盤も、さらなる進化を目指している。   「デジタルマーケティングにおいては『情報の鮮度』が命。常に情報を更新できる機能を付加しているところです。また、システムを活用してもらうためのフォローや情報提供も積極的に進めていきます」(中島氏)   早い段階から「データ経営」の重要性を唱え、デジタルシフトに取り組んできたNEC。デジタルマーケティング成功モデルの組織全体での水平展開に向け、その歩みを加速させている。     日本電気 IMC統括部 マネージャー 板本 真一氏(左)
マーケティングマネージャー 中島 拓也氏(中)
主任 田中 絵美氏(右)
   

PROFILE

  • 日本電気(株)
  • 所在地:東京都港区芝5-7-1
  • 創立:1899年
  • 代表者:代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田 隆之、代表取締役 執行役員常務 兼 CFO 藤川 修
  • 売上高:3兆141億円(連結、2022年3月期)
  • 従業員数:11万7418名(連結、2022年3月現在)