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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2022.06.01

KPIが変われば会社が変わる:トラスコ中山、丸井グループ、北の達人コーポレーション、CRISP

   

組織の最終目標を達成するための中間目標として、その達成度を図る指標、KPI(重要業績評価指標)。KPIをいかに設定するか、頭を悩ませるリーダーも多いだろう。本コラムでは自社の課題に見合った独自指標を設定・活用し、未来へと躍進する4社の取り組みを紹介する。

     
1 .トラスコ中山
「回転率」より「出荷率」を重視
  50万アイテムの商品在庫を持ち、即納を可能にする物流網を敷く独創の経営で成長を続ける機械工具商社・トラスコ中山。同社は「在庫出荷率」という独自のKPIを競争優位の源泉としている。   通常、過剰に在庫を抱えることは、コスト増につながる。そのため企業は「在庫回転率」を指標とし、回転率の低い(あまり売れない)商品の在庫を持たないようにする。   しかし、トラスコ中山は「全受注の何%を在庫から出荷したか」を示す在庫出荷率を重視。顧客が必要とするあらゆる商品を即納することによって、「トラスコ中山なら何でもそろう」という顧客満足と信頼を高めている。商品の需要予測は基幹システムで実施。注文実績データを分析して在庫アイテム1品ずつの需要を計算・発注することにより、欠品が減って即納体制が強化され、在庫出荷率は84.0%(2014年3月期)から91.3%(2021年12月期)へ高まった。また、同社は「即納こそ最大のサービス」と考え、2021年度から「納品リードタイム」をKPIに設定。受注から納品完了までのプロセスを可視化することにより時間短縮を目指している。   2021年12月期の納品リードタイムは20時間6分53秒。今後は、在庫出荷率と併せて「顧客目線の重要指標」とすることで、高い利便性、迅速確実な納品、豊富な品ぞろえと在庫、納得できる価格といった提供価値をますます高めていくという。        
2.丸井グループ
プロセスを見える化し女性活躍を推進
  丸井グループは女性社員の活躍を推進するため、「意識改革」と「制度づくり」にこれまで取り組んできた。というのも同社は社員4855名のうち、約44%に当たる2140名(2021年3月期)が女性。来店顧客の女性比率も高いため、女性社員の真の活躍が同社の持続成長に欠かせないのである。   そこで2014年3月期より、女性活躍の重点指標として「女性イキイキ指数」を設定。2021年3月期までの目標数値を掲げ、取り組みを可視化してきた。女性活躍浸透度、女性リーダー数など「意識改革・風土づくり」「女性の活躍推進」に関わる項目を7つ設け、それぞれの達成率を数値で計測。その結果、女性活躍浸透度は99%まで上昇、男性社員育休取得率は3年連続100%を達成した。   これまでの結果を踏まえ、未達項目の要因である「性別の役割分担意識」の見直しに向け、同グループでは男女ともの意識改革を図るためイニシアティブを実施。その活動をもとに、「固定化した性別役割分担意識の見直し度数」「男性の家事・育児参画度」などの項目を加えた2026年3月期までの新たな女性イキイキ指数を策定し、達成に向けて取り組んでいる。男女ともの意識改革が必要という課題感に基づき、女性の活躍の場を増やすプロセスを可視化するためのKPI設定と言えよう。      
3.北の達人コーポレーション
独自の広告最適化システムで利益を最大化
    北の達人コーポレーションの5段階利益管理 出所:北の達人コーポレーションホームページよりタナベ経営作成     北海道札幌市に本社を構える北の達人コーポレーションは、健康食品や化粧品などのEC事業を手掛ける高収益企業。受注業務やシステム開発などを内製化し、安定成長を遂げてきた。   DtoCのサブスクリプション型ビジネスモデルで、「比較検討された結果選ばれる」を基準とする自社ブランド商品開発などの特徴を持つ同社。高収益経営を支えるのは、CPOやLTVを用い採算性の高い広告だけを残すことのできる、独自の広告最適化の仕組みである。CPOとはCost Per Orderの略で、受注1件当たりに要する広告宣伝費。LTVはLife Time Valueの略で、顧客がもたらす生涯売上高を指す。これらの指標を正確に算出・管理し、そこから受注1件当たりに使用可能な広告金額の上限を設定している。   同社では独自に開発した「広告最適化のための分析・運用システム」を用い、常時約5000本の広告のCPOを毎日算出。上限CPOを超えた広告は速やかに出稿を停止するという。採算性の高い広告のみが残ることで、ひいては利益の最大化が可能になる。   利益を最大化するCPO設定とともに、「5段階利益管理」を徹底することで、売り上げはあっても利益の出ない商品や、販促費がかからず粗利益の高い商品などを洗い出すことができる。利益の上がらない商品を切ることで、経営資源を「高収益を上げる商品」へ集中投下でき、一層の効率経営が可能になる、という善循環だ。   こうした経営数値の見える化、最適な業績指標の設定、精度の高いマーケティングにより、同社は安定成長可能な収益構造を実現している。今後は商品のスケール拡大やグローバル展開も視野に、将来的に売上高1000億円、営業利益300億円を目指すという。     出所:北の達人コーポレーションホームページ      
4.CRISP
KPIをリアルタイムで社外に全公開
    JOURNEY お客さまとCRISPがつながる6つのジャーニー 出所:CRISP「CRISP METRICS」よりタナベ経営作成     2014年に東京で開業したカスタムサラダ専門レストラン「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」。2022年4月現在、東京都内に20店舗、大阪市に1店舗を展開するほか、サラダのサブスクリプションサービスや、レジ会計不要のサラダストアなども手掛ける“飲食DX”のトップランナーだ。   このサラダ専門店を運営するCRISP(クリスプ)は、2021年7月、自社のKPIである売上高や顧客数、LTV(顧客生涯価値)、リピート率、アプリの離脱率などをすべてリアルタイムで見られる「CRISP METRICS(クリスプメトリクス)」を公開した。中でも、「お客さまとCRISPがつながる6つのジャーニー」と題してカスタマージャーニーを6段階に分け、上記のKPIを設定。特にリピート3回目と5回目を取り上げ、丁寧な接客でファンになってもらえること、LTVを上げること、その結果として顧客体験の価値を高めることを大切にしている。   模倣されるリスクを取って自社のKPIを公開した理由は、①データ分析やマーケティングのスキルを持つ優秀な人材を採用するため、②データを開示してステークホルダーへの説明コストを減らすため、③売り上げ・客単価・客数という数値だけを指標としがちな飲食店経営を変え、新しい外食の形を創り出すためだという。   2021年6月、同社はベンチャーキャピタルのOne Capitalから約5億円の資金調達を実施。2020年の三菱商事からの資金調達と合わせ、累計の調達額は約10億円となった。データドリブンな経営で外食産業を高収益化し、テクノロジーの力で非連続の成長を遂げようとする同社の挑戦は続く。