魚を眠らせて運ぶ「魚活ボックス」。1箱で、約1.5kgのマダイを200匹ほど収容可能。産地から消費地までの長距離輸送、飲食店への短距離輸送、店舗での活魚備蓄槽など、幅広い用途がある
日本の仮設資材レンタル業界のリーディングカンパニー、日建リース工業。建設業界にとどまらず幅広い分野にレンタルサービスを展開し、新領域で次々と事業を創出しながら、さらなる成長を目指している。
「はーとふる農園」では、特別な農具や機材を必要としない「高床式砂栽培」を採用。腰をかがめずに作業できるので体への負担が軽く、車イス使用者も無理なく作業が可能
スモールスタートで領域を拡大していく
すでに進出した物流業界においても新しいサービス提供を始めている。物流倉庫の商品を保管するラックや商品を運ぶ鉄製パレットといった従来のレンタル資材に加え、平パレットのレンタルも取り扱うようになった。
「物流業界へレンタルパレットを提供する企業の中で、当社は最後発組です。そこで、まずは需要が安定せず先発企業がやりたがらない鉄製パレットのレンタルに参入。この分野でシェアナンバーワンを獲得してから、平パレットのレンタルサービスを始めました。大手の半値近くで提供することで顧客を増やし、徐々にシェアを伸ばしています」(関山氏)
物流業界へ積極的に進出する背景には、同業界が抱える課題を解決したいという思いがある。高齢化によるドライバー不足やEC需要による荷物数の増加などで、人の手による荷物の積み降ろしは限界にきている。フォークリフトで荷積み・荷降ろしができる平パレットの需要は高まっており、そのニーズに合致したサービス提供によって、同社は物流業界で独自のポジションを確立したのである。
同社の挑戦は「食」の分野にも広がっている。その1つが、魚を眠らせて運ぶ新しい水産物輸送システム「魚活ボックス」だ。
おいしい魚を消費者の元へ届けるには、新鮮な状態での輸送が不可欠。だが、従来の活魚輸送では、輸送中のストレスで魚が弱ってしまうことが多い。また、輸送に使われる活魚車は1台4000万~5000万円、輸送コストも1回当たり40万~50万円と高額で小口輸送には向かず、水揚げ量の少ない漁港では導入しにくい。品質・効率ともに良いとは言えない流通の現状を改善しようと、同社は2017年に水産業向け物流事業へ参入した。
魚活ボックスは、水槽内の海水に二酸化炭素を溶け込ませ、魚を低活性化(眠ったような状態に)することで、一度に多くの魚を生きたまま輸送できる。ボックス内には酸素ボンベとセンサー、バッテリーがコンパクトに収納されており、簡単な操作で使える。
魚活ボックスのレンタル料は1日当たり1箱2200円(税込)。魚の低活性化には、ボックスとは別に「移動式麻酔装置」も必要だが、一般的な活魚車と比較すると約5割のコスト削減につながるほか、鉄道で輸送することも可能である。少量輸送や短期間利用にも柔軟に対応できる。
さらに、同社はサーモンの陸上養殖にも取り組み始めている。世界人口の増加や過剰漁業などにより、水産資源の適切な管理が社会的課題となる中、魚の養殖は将来の食糧危機を救う有効な方法だ。中でもサーモンの養殖は、マグロに比べて餌が少量で済み、低コストで環境にも優しいため、盛んに行われている。しかし、海洋で養殖すると、食中毒を引き起こす寄生虫「アニサキス」がサーモンに寄生しやすい。そこで同社は陸上養殖を選んだ。
「井戸を掘って地下海水をくみ上げ、サーモンを養殖する計画が進んでいます。海洋養殖では、アニサキスの発生を抑えるために抗生物資を与えることもあり、安全面に疑問が残ります。その点、無酸素のためアニサキスが発生しない地下海水を使った養殖は、安全でおいしいサーモンを提供できます」(関山氏)
また、2018年にスタートした障がい者雇用サービス「はーとふる農園」(埼玉県飯能市、神奈川県愛甲郡愛川町)は、郊外で働きたい障がい者と、障がい者の雇用率を上げたい企業のマッチングを図り、障がい者の就労機会を創出する事業だ。同社が中古の仮設材料を再利用してビニールハウスや高床式の砂栽培装置を整備。障がい者はマニュアルに沿った農作業で野菜などを栽培し、スキルアップしながら継続して働ける。
「大都市圏にある企業の本社などには幅広い業務があるので、障がい者の能力や職業適性を生かす雇用が可能です。しかし、1人で何役もの仕事をこなすことが多い地方の営業所などでは、障がい者を雇うことが難しい現状がある。また、健常者と同じ環境で働くことが、障がい者にとってストレスになるケースもあります。そこで、障がい者が中心となって農作物を育て、それを出荷することで社会とのつながりも実感できる農園を始めました」(関山氏)
新しい事業領域へ次々と進出し、多角化を推進する日建リース工業。「レンタルを通して大いなる社会貢献と幸せの創造」を目指す経営理念の実現に向け、参入分野の業種・業態の発展に今後も貢献していく。
静岡県・三保半島の地下海水をくみ上げて行うサーモンの陸上養殖。アニサキスフリーの安全性と活魚流通による新鮮さを売りに、新たな地域ブランドの創出を目指す
日建リース工業 代表取締役社長 関山 正勝氏
PROFILE
- 日建リース工業(株)
- 所在地:東京都千代田区神田猿楽町2-7-8 住友水道橋ビル3F
- 創業:1966年
- 代表者:代表取締役社長 関山 正勝
- 売上高:898億円(2020年9月期)
- 従業員数:1759名(2021年5月現在)