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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2026.10.30

競合と共創し、物流で日本の未来を守る AZ-COM丸和ホールディングス

「2040年に国内外の売上高1兆円を達成」という将来ビジョンを掲げ挑戦を続ける
AZ-COM丸和ホールディングス。同社が描く3PL業界のNo. 1企業へのロードマップとは。


AZ-COM丸和ホールディングス 代表取締役社長 和佐見 勝氏

AZ-COM丸和ホールディングス 代表取締役社長 和佐見 勝氏



利他の心で相手に尽くす

2026年で創業57年目となるAZ-COM丸和ホールディングス(以下、丸和HD)は、ECサイトやスーパー、ドラッグストアなどの小売業に特化して、高品質なサードパーティ・ロジスティクス(3PL)を提供する物流企業である。商品の輸送・保管から個人宅へのラストワンマイルまで幅広い輸送サービス「桃太郎便」を全国で展開している。


強みの核心は、厳格な温湿度管理が必要となるデリケートな商品や多品種小口商品を専門的に取り扱い、人手やコストにかかる負担を大幅に軽減する「『お客様第一義※』の高度なオペレーション」にある。同社社長である和佐見勝氏は、トラック1台から事業を立ち上げた当初から今日にいたるまで変わることのない信念を次のように語る。


「私も小売業(青果店)の出身なので、お客さまがどのようなことにお困りなのか、身に染みて理解しています。だからこそ、小売業の皆さんとしっかり語り合い、常に利他の心でビジネスを展開してきました」


その哲学を証明するのが、大手ドラッグストアであるマツモトキヨシ(現マツキヨココカラ&カンパニー)との30年以上にわたる信頼関係である。和佐見氏は、取引の開始に当たり「在庫ゼロ、納品率100%、ノー検品」を提案した。つまり、店舗内での欠品を防ぐために抱えていた予備の在庫をゼロにして、必要なときに必要な分だけを100%正確に届ける検品不要のサービスを提供するという、サービスを約束したのである。


さらに、車の回転率を高めるために、通行量が少ない夜間・深夜配送を導入し、顧客が物流センターを建設する必要のない「無資産・無投資」の仕組みを創り出した。「そんな夢のようなことが本当にできるのか」と疑心暗鬼だった顧客は6カ月間の試験運用で取引をスタートしたが、圧倒的な品質に驚き、わずか3カ月で全面展開を決断。利他の心をもって感動と満足を届けるという徹底した顧客思考が、業界のスタンダードを塗り替えたのである。


※ 顧客の利益や満足につながる価値を提供することを商いの基本とする理念



逆風下で挑む高収益企業づくり

その情熱は、トラックドライバーの労働時間の上限規制に伴う深刻な人手不足や、それに伴うコスト構造の変化など、かつてないほどの荒波に直面している今もなお、まったく衰えていない。「中期経営計画2025」の期間中(2023年3月期から2025年3月期)には、戦略的なM&Aを実行しながら物流センターの運営数を着々と増やし、2022年3月期実績以降の3カ年で約753億円の売上高を積み上げた。特に「EC常温3PL事業」は年平均成長率36.4%と目覚ましい飛躍を遂げた。なお、2026年3月期の売上高は2305億円となっている。


また、人材獲得競争が激化する中、将来を見据えて経営層49名を含む975名のリーダーを育成。2021年度から2023年度にかけては、タナベコンサルティングの支援のもと、ホールディングスおよびグループ子会社の次世代経営者候補を選抜して「社長育成プログラム」を実施した。そして、2025年6月に受講者の一人である平野健治氏をグループの中核事業会社である丸和運輸機関の代表取締役社長に抜てき。タレントマネジメントシステムでグループ内の人材を一元管理しながら、将来ビジョンの実現に向けた布石を打ち続けている。


「人材戦略に関しては、国内からの採用強化と海外からの人材活用の両面で進めています。私が理事長を務める日本語学校で、あらゆる国から来た人たちの日本語習得をサポートしています。日本語を習得しないことには早期に戦力として活躍できませんから」(和佐見氏)


しかし、ここ数年の間に、ビジネス環境は想定をはるかに超える規模で激変した。ウクライナ侵攻や円安進行に伴う急激なインフレなどの影響は甚大で、前中期経営計画の最終的な経常利益は計画比マイナス33.7%の116億円で着地。同社はただちに課題を整理し、新たに3カ年の「中期経営計画2028」を発表した。


同計画の柱は「高収益企業」に進化するための構造改革である。ただし、それはあくまでも敵対的な競争によるものではない。和佐見社長が創業当時から貫いてきた信念どおり、「利他の心」で競合企業や行政と協力し、互いを支え合う物流ネットワークを構築するというものだ。


【図表】 AZ-COM丸和グループの長期ビジョン

【図表】 AZ-COM丸和グループの長期ビジョン 出所 : AZ-COM丸和ホールディングスホームページを基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成

出所 : AZ-COM丸和ホールディングスホームページを基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成



パートナーを迎えて輸配送事業を本格化

まず、2026年4月から、従来の3PL事業(EC・常温、低温食品、医薬・医療)に、BCP(事業継続計画)物流事業と輸配送(マッチング)事業を加えた「5大事業戦略」を動かす。


デジタル面では、約40億円のDX投資を決定。営業所単位のアナログ管理から完全に脱却すべく、輸配送管理システム(TMS)や倉庫運用管理システム(WES)を導入し、グループ全体でオペレーション業務の標準化を進めている。


2026年6月には、東大阪を拠点に全国21拠点と車両ネットワーク約7000台、パートナー網4000社を保有し、求荷求車のマッチングに強い「樋口物流サービス」をグループに迎えた。今後、空車で走らせずに積載率を最大化させるAIの配車システムを開発し、将来的には1日3万台が全国で稼働する共同配送プラットフォームを構築していく計画だという。


「M&Aはご縁と相性。マッチング事業は5年ほど前から構想を練ってきましたが、今回、良いタイミングで出会いがありました。トップ同士で何度も対話を重ねる中、信頼、信用がベースとなり、一緒に事業を展開していくことになりました」(和佐見氏)


輸送リソースの有効活用を推進する主要拠点が、2026年2月から順次稼働を開始した、総投資額250億円の「AZ-COM Matsubushi EAST」(埼玉県松伏町)だ。和佐見氏は、「都心までは約25km圏内。昼間は1時間以上かかりますが、夜間なら30分台です。今後、すぐ近くに東埼玉道路(高速道路)のインターチェンジも開設される予定です。ここは、車両の回転率が劇的に向上する抜群の立地なのです」と語る。



30年間培ってきたBCPの知見を全国に

また、同施設は免震構造で、非常用発電機や30万リットルの軽油も備えている。大規模な地震や停電が発生した場合にも人・荷物・建物の被害を最小限に食い止め、事業継続をサポートできるという。


「BCPの重要性を痛感したきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災です。道路が寸断され、車が入れないエリアがたくさんありました。そこで、都内でバイク便のサービスを提供している企業に依頼してバイクを250台集めてもらい、フランチャイズの全国ネットワークを持つお客さま(ダスキン)のもとへ駆けつけました。そして、お客さまと共に現地の自治体と連携してBCP拠点を立ち上げ、6カ月間、生活必需品の物資を届ける支援を続けました。その後も、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振いぶり東部地震まで、全て無償で、お客さまの事業の継続支援に取り組んできました」(和佐見氏)


大規模災害が発生するたびに顧客のもとへ駆けつけ、現地で支援に当たってきた同社は、物流の協力の輪をさらに広げていくため、2016年に「一般社団法人AZ-COM丸和・支援ネットワーク」(現:AZ-COMネットワーク)を設立。2023年に内閣府より災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定され、2024年元日に発生した能登半島地震の際にも即日輸送支援に向かった。同ネットワークの会員数は2026年10月現在、約3000社に迫り、全国140カ所の自治体と災害時支援協定も締結している。今後は会員と適宜連携し、「AZ-COM Matsubushi EAST」を拠点に、本業においても「災害備蓄品の導入・管理・入れ替えなどの運用代行サービス」など、平時における自治体や企業向けの有償サービスの新規開発を進めていくという。


「埼玉県の郊外ですから、都心と比較すると、2分の1から3分の1に近いコストで災害時用の物資を備蓄できます。自治体や企業が個別に抱えていた災害時用物資を共同で備蓄し、いざというときに配送できる体制も共同で整備しておけば、大幅にコストダウンできます」(和佐見氏)


同社は輸配送事業とBCP物流事業の新規顧客開拓に全力を注ぎ、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画の達成に向けて邁進していくという。


直近の2027年3月期第1四半期決算では、戦略投資や新規受託案件のオペレーション安定化に時間を要し、一時的に利益下振れが発生したが、同社はスピード感を持って課題を整理し、不採算案件からの早期撤退を決断。解消に向けて道筋をつけた。現在は、グループ機能を強化し、収益改善への構造改革に乗り出している。


「同業者と戦っているばかりでは、未来がありません。当社を含めて、どの会社にも競争意識は当然あるものだと思いますが、まずは日本という国家全体のことを考え、協力しながら競争する。経営戦略においては『協力』が最優先だと思うのです」(和佐見氏)


挑戦する文化、成長する文化、貢献する文化。同社はこの3つの文化からなる企業文化「桃太郎文化」を、推進しており、全国に広げていく。


「桃太郎便」で広く知られているAZ-COM丸和ホールディングス。「桃太郎文化」のもと、人材育成にも注力している

「桃太郎便」で広く知られているAZ-COM丸和ホールディングス。「桃太郎文化」のもと、人材育成にも注力している


AZ-COM丸和ホールディングス(株)

  • 所在地 : 埼玉県吉川市旭7-1
  • 創業 : 1970年
  • 代表者 : 代表取締役社長 和佐見 勝
  • 売上高 : 2305億円(2026年3月期)
  • 従業員数 : 2万6236名(グループ計、2026年3月現在)